2013 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザ心筋炎における血管内皮機能障害の意義と治療に関する研究
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24591493
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
浮村 聡 大阪医科大学, 医学部, 教授 (50257862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 裕美子 大阪医科大学, 医学部, 講師(Lecture) (80445999)
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Keywords | 心筋炎 / インフルエンザ / ノイラミニダーゼ阻害薬 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスは心臓親和性が決して高くはないがパンデミックに際しては心筋炎合併例が増加すると考えられる。木戸らは血管内皮機能障害がインフルエンザ心筋炎の本質であるという仮説を提唱している。インフルエンザウイルスは細胞に感染する際に蛋白分解酵素であるトリプシンを必要とする。蛋白分解酵素阻害剤ガベキサートメシル酸塩がマウスのインフルエンザウイルス性肺炎においてその抗炎症効果により重症化を抑制することが小佐井らにより報告されているが、肺における効果は限定的である。一方インフルエンザウイルスの心筋細胞での感染成立にトリプシンが必須であると木戸らは報告している。そこでインフルエンザウイルスをマウスに経鼻接種し、肺炎および心筋炎を惹起させ、蛋白分解酵素阻害剤ガベキサートメシル酸塩の心筋炎における改善効果について検討を行った。無治療群、抗ノイラミニダーゼ阻害薬、ガベキサートメシル酸塩投与群に分け心臓超音波検査、肺および心臓における組織学的検討により肺炎と心筋炎を評価した。 組織学的にはリンパ球が心外膜下及び血管周囲に浸潤し心筋細胞壊死を伴う心筋炎を認め、心臓超音波検査にて急性期に収縮能低下を示した。薬剤投与による改善効果については、ノイラミニダーゼ阻害薬投与群では心臓超音波検査による心機能評価、組織学的所見において改善をみたが、ガベキサートメシル酸塩投与群では無治療群に対して明らかな改善効果を認めなかった。昨年度の検討と合わせて考案するに従来から提唱されているウイルスという原因療法、ならびに心機能に対し有用性のあるRAS系阻害薬のみがマウスのインフルエンザ心筋炎モデルにおいて改善効果を示すと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザウイルスは心臓親和性が決して高くはないがパンデミックに際しては心筋炎合併例が増加すると考えられる。木戸らは血管内皮機能障害がインフルエンザ心筋炎の本質であるという仮説を提唱している。 これまでの検討では心臓親和性の高いコクサッキーウイルス心筋炎モデルで広範かつ心筋炎の組織所見が遷延するA/JやC3H/Heマウスではあまり心筋炎は発症しなかった。一方でBalb/cマウスでは心外膜直下あるいは血管周囲にリンパ球浸潤と軽度の心筋壊死を伴う心筋炎病巣を認めた。しかしあくまでも心筋組織所見は軽度であり、心臓超音波検査にて急性期に明らかに心臓収縮能が低下することとは若干の乖離が見られた。この点は以前我々の教室で血行動態的検討を行った報告や木戸らが報告した内容と同じである。これはヒトの典型的な心筋炎症例と共通する点であると考える。 本年度は蛋白分解酵素阻害剤ガベキサートメシル酸塩の心筋炎における改善効果について検討を行った。本剤はインフルエンザウイルスが感染に際して必要とする蛋白分解酵素であるトリプシンも阻害すると考えられ、限定的ながら肺での効果が報告されているが、ガベキサートメシル酸塩投与群では無治療群に対して明らかな改善効果を認めなかった。 昨年度の検討と合わせて考案するに従来から提唱されているウイルスという原因療法は一定の効果が期待できる。心機能に対し有用性のあるRAS系阻害薬はマウスのインフルエンザ心筋炎モデルにおいて限定的ながら改善効果を示すと考えられた。その機序には血管内皮機能障害に対する多面的効果が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方針 代表者は厚生労働省の科学研究費補助金「新型インフルエンザH1N1の病態把握と重症化の要因の解明に関する研究」研究分担者として平成22年度、23年度、24年度にインフルエンザ心筋炎の臨床研究を担当し疫学調査を行った。その結果パンデミックにおいて心筋炎は増加すると考えられた。その調査ではほぼ全例において抗ノイラミニダーゼ阻害薬が投与されていた。抗ノイラミニダーゼ阻害薬が投与されたインフルエンザ劇症型心筋炎の予後は、以前行われた原因療法なしの後ろ向き臨床研究よりも有意に生存率が改善したわけではなかった。一方、臨床研究でヒトの心筋炎に対してヒトのインフルエンザ心筋炎に対する抗ノイラミニダーゼ阻害薬の効果を調査することは倫理的に認容されるものではない。従って動物モデルにおける検討が必要となる。これまでに感染直後からのノイラミニダーゼ阻害薬の効果については検討することができた。実際の臨床に準じて感染後何日目からの投与でも効果がみられるかどうかについて検討を行う必要があると考えられる。 次年度の研究計画 平成26年度は本研究の最終年度にあたる。インフルエンザ心筋炎マウスモデルにおいて、実際の臨床に準じて感染後何日目からの投与でも効果がみられるかどうかについて検討を行う。またこれまで得られたマウス心筋炎モデルの心筋組織所見、心臓超音波検査所見、ならびに肺および心筋組織内の炎症性サイトカインmRNAや心筋内BNPのmRNA発現量についての結果について国際学会発表ならびに論文化を行う。これらの解析に要する試薬と追加実験のためのマウスの購入を消耗品費として使用する予定である。
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[Journal Article] Repetitive fulminant influenza myocarditis requiring the use of circulatory assist devices.2014
Author(s)
Yoshimizu N, Tominaga T, Ito T, Nishida Y, Wada Y, Sohmiya K, Tanaka S, Shibata K, Kanzaki Y, Ukimura A, Morita H, Hoshiga M, Ishizaka N.
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Journal Title
Intern med
Volume: 21
Pages: 109-104
Peer Reviewed
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