2014 Fiscal Year Research-status Report
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24591494
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
山田 作夫 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (00122458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大毛 宏喜 広島大学, 大学病院, 教授 (70379874)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 芽胞 / 二酸化塩素 / 次亜塩素酸ナトリウム / Bacillus subtilis / Bacillus cereus / 走査型電子顕微鏡 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
芽胞形成菌は一般的な消毒薬に抵抗性を示すことから、臨床現場での感染症予防においてしばし問題となる場合がある。そのため平成24年度以降、抗菌スペクトラムが広く芽胞への有用性も期待されている二酸化塩素の抗芽胞作用について、従来より芽胞に有効とされてきた次亜塩素酸ナトリウム(Na)の抗芽胞効果と比較して追求してきた。その結果、既に報告してきた如く、処理後の残存生菌数を経時的に測定して検索したところ、二酸化塩素はBacillus subtilis芽胞のみならずB. cereus芽胞に対しても、常用量(0.01%)以上で強い抗芽胞効果を示し、その抗芽胞効果は、次亜塩素酸Naよりも強いことを明らかにすることができ、臨床現場での二酸化塩素の有用性が期待できることとなった。次に、二酸化塩素の抗B. cereus芽胞の作用メカニズムについて走査型電子顕微鏡ならびに透過型電子顕微鏡観察を駆使した我々独自の超微形態解析を遂行して追究した。その結果、二酸化塩素処理芽胞では、エキソスポリウムのわずかな超微形態変化以外に大きな異常は観察できなかった。これに比べ、次亜塩素酸Naで処理すると、芽胞表面が波状化をきたし、さらに、芽胞殻の一部が断裂化して皮層から解離するという顕著な超微形態変化が惹起されることが示され、両消毒薬の間で芽胞構造に対する作用に大きな相違のあることが明らかとなった。さらに、二酸化塩素の抗芽胞作用について形態学的解析を加えたところ、二酸化塩素は新たな発芽形成を阻害することを立証することができた。このように二酸化塩素の抗芽胞作用メカニズムは、芽胞殻へ直接的な障害作用を示す次亜塩素酸Naの作用メカニズムとは全く異なることが明らかにされつつある。現在、二酸化塩素の作用メカニズムについて、従来の細菌学的解析並びに超微形態的解析により得られた成果を基に、さらに生化学的解析による解明を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
従来までの本研究における細菌学的、超微形態的解析において、残存性菌数を経時的に測定して二酸化塩素の有用性を立証するためには、データがばらつくために精度の高い再現性のあるデータを得るために、何度も繰り返して実験を遂行する必要があることから、作用メカニズム解析の基盤となる殺菌効果に関するデータを蓄積しるのに予想外の時間を要した。さらには超微形態的解析には熟練した技術さらには手間と時間を要するため進捗が遅れ、これら理由から予定通りには進捗されていなかったこととなったが、上記のような成果を得るに至った。 一方、二酸化塩素の抗芽胞作用メカニズムについて、従来の細菌学的ならびに超微形態学的解析成果を基にして、生化学的解析に着手しはじめてはいるものの、本研究で対象としているBacillus cereusをはじめとした芽胞形成菌は、加熱や乾燥にも強く、物理的、化学的処理に対して抵抗性を示すという特性を有することから、芽胞形成菌を溶菌化して、抽出した成分を対象に生化学的手法に供する段階において芽胞形成菌の溶菌化が充分に達成できていない状況で、その方法論の確立のために試行錯誤を繰り返しているのが現状であり、そのため本研究の進捗が遅れている。このような実状から研究実施期間の延長を申請した次第である。現在、研究対象である芽胞形成菌を生化学的検索に供するために有効で効率の良い溶菌手段に関する情報を速やかに得て、その実施を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初に予定した目的の第一義である二酸化塩素の抗芽胞作用に関する細菌学的解析ならびに超微形態的解析については基本的には順調に推移し、芽胞形成菌に対する二酸化塩素の有用性について、処理することで生菌数の顕著な減少をもたらし、超微形態学的にも、顕著な構造上への障害はもたらされないものの新たな発芽形成を阻害することを立証することができた。今後は、従来得られた成果を基に、二酸化塩素の抗芽胞作用メカニズムについて現在試みている生化学的解析を推進する予定である。 一方、本研究は芽胞に対する二酸化塩素の作用メカニズムの解明を目的としているところではあるが、合わせて対照消毒薬として用いている次亜塩素酸ナトリウムの抗芽胞作用メカニズムについても、芽胞を形成する芽胞殻への作用のあることが可視的に立証されるといった興味ある所見が得られ、さらには栄養型の細菌(例えば黄色ブドウ球菌)に対する二酸化塩素の作用メカニズムを明らかにすることにより、芽胞への二酸化塩素の作用メカニズムを追求するといった戦略も、命題とすることを視野に入れている。
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Causes of Carryover |
現在における本研究の進捗状況として、細菌学的解析ならびに超微形態的解析結果に基づき、生化学的解析に着手して解析を試みてはいるが、芽胞特有の処理物質に対する高い抵抗性のために、芽胞の溶菌条件の設定が定まらず、生化学的検索に供する試料が充分には得られていない。そのため、生化学的な解析に使用する予定の消耗品等を使用していないために先送りとなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まずは、芽胞を溶解するために適した実験条件に関する情報を学会や研究会等で直接研究者から収集するための旅費に使用すると共に、条件設定が整い次第、溶菌に要する試薬や、先送りしている消耗品の購入に充当する。
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Research Products
(11 results)