2013 Fiscal Year Research-status Report
福山型先天性筋ジストロフィーの治療法の確立に関する研究
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24591510
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
池田 真理子 (谷口 真理子) 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00410738)
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Keywords | アンチセンス治療 / 筋ジストロフィー / スプライシング異常 / RNA創薬 |
Research Abstract |
福山型筋ジストロフィー(FCMD)は、福山によって報告・確立された筋ジストロフィーの一型であり、重度の筋ジストロフィーに脳奇形を伴う常染色体劣性遺伝性神経筋疾患である。我が国の小児期筋ジストロフィーの中ではデュシャンヌ型(DMD)に次いで多く我々の約90人に1人が保因者である。患児は生涯歩行不能であり、同時に精神発達遅延を伴い、多くは20歳以前に死亡する難病である。申請者らのグループは日本に特異的に多いFCMDの原因遺伝子の同定に成功、遺伝子産物をフクチンと名付けた(Nature 1998)。殆どのFCMD患者は、fukutinの3’非翻訳領域に約3kbのレトロトランスポゾン(SVA)の挿入型変異を認める.申請者のグループは、FCMDがSVA挿入変異により引き起こされるスプライシング異常症であることを見出し、この異常スプライシングを阻止するアンチセンス核酸(AON)を設計し、患者由来細胞及びモデル動物において、その治療に成功した(Nature, 2011) 。その後われわれはこのアンチセンス核酸において至適化合物の選定を行い、当初に見出した三種類の化合物のうち、一種類の化合物のみにおいて治療効果が得られることをみいだした。そこで、その1剤における人由来筋芽細胞やリンパ芽球、モデルマウスにおいての効果を検討したところ、十分な量の蛋白の回復とαジストログリカンの糖鎖回復が得られた。現在毒性検査などを行いながら、ヒト臨床治験実現を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画には現時点でも中心的に行っている第一課題であるアンチセンス治療の臨床応用に向けての研究は、非常に順調であり、またその成果は数年後の臨床治験実現へと、現実的なものになりつつある。 一方このプロジェクト以外にドラッグデリバリーシステムの構築や、低分子化合物からのスクリーニングをもともとの治療計画に入れていた。これは当初発表はこれらの構築がないと人への臨床応用は困難であるからとの見方があった。しかし、上述のように、1剤において十分な治療効果が得られているため、現時点では、計画のうちドラッグデリバリー、低分子化合物のスクリーニングのプロジェクトは未だ準備段階である。しかしこれらの研究は未だ困難な脳内や心筋内への治療という意味では今後非常に重要であるため、本年度中には実験系を立ち上げる予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画のうちもっとも中心となるアンチセンス核酸による治療の臨床応用に向けての研究は、今後も継続してゆく予定にしている。これに付随して、福山型筋ジストロフィーの自然歴の観察研究や運動機能評価や血清バイオマーカーなどの探索が1のアンチセンス治療法の臨床応用にむけた実験に引き続き重要となってくる。よって現時点までの計画に加え、臨床研究が必用になってくる可能性が高い。またバイオマーカー検索の一環として、プロテオミクス、メタボロミクスなどの分析機能系を用いて病態機能を解析してゆく予定にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低分子化合物によるドラッグスクリーニングやDDSを用いたアンチセンス核酸の脳や心筋での治療計画が1年遅延しているため、それに関する試薬の購入が未であるため。また研究打ち合わせや学会発表などを行わずメール会議などのみにしたため、旅費も残存した。 平成26年度には低分子化合物のパネルの購入や、DDSに用いるペプチドや他種類のアンチセンス核酸などの試薬購入費用に充てる予定である。
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