2012 Fiscal Year Research-status Report
インスリン様成長因子-Iの転写因子と結合蛋白の異常による成長ホルモン不応症の解明
Project/Area Number |
24591512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
神崎 晋 鳥取大学, 医学部, 教授 (90224873)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | IGF-I受容体異常症 / 成長ホルモン不応症 / IL-6 / Castleman病 |
Research Abstract |
1.変異IGF-I受容体(IGF-IR)(p.Q1220X)の機能解析: SGAで出生し、IGF-I高値298.4 ng/ml (+3.8SD)があり、SGA性低身長症と診断された児のIGF-IR遺伝子にp.Q1220X をヘテロ接合体でみとめた。 変異IGF-IR遺伝子導入細胞では、WTと比較して、変異IGF-IRの著明な発現低下を認め、これが成長障害の原因と考えた。本変異はナンセンス変異のため、1337のアミノ酸からなるIGF-IRのうち1220番目以降が欠失する。細胞はmRNAレベルではナンセンス変異依存性mRNA分解(NMD) pathwayによって、蛋白レベルでは小胞体関連分解(ERAD) pathwayによって、このような不完全(変異)蛋白の発現を抑制している。NMDを阻害するemetine添加前後で、WTと変異IGF-IRのmRNAレベルに変化はなく、ERADを阻害するMG132添加で、変異IGF-IR発現が増加した。従って、変異IGF-IR蛋白の発現低下はERADの機序による。 2.Interleukin (IL)-6はIGF-I産生を抑制する:Castleman病の解析 14歳の男児が低身長(-4.5 SD)、間歇熱で受診し,下腹部に6x5x4cmを触知した。血液検査でIL-6 (97.3 pg/mL, 基準値:<4.0)とCRP (14.3 mg/dL)の高値と,IGF-I (28 ng/mL, 基準値:<180)の低値をみとめた。尿中GHは12.4 pg/mg Cre(基準値:6.8-28.9)と正常であった。摘出腫瘤の組織像からCastleman病と診断した。腫瘤摘出に伴い血中IL-6は正常化し,血中IGF-Iの上昇と身長増加の改善がみとめられた。本症例からIL-6はIGF-I産生を抑制し,GH不応症の原因となることが明かとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「インスリン様成長因子-Iの転写因子と結合蛋白の異常による成長ホルモン不応症」を課題として研究を開始した。 この1年間の研究で、Castleman病の解析から、interleukin-6が成長ホルモン(GH)産生が正常でもIGF-I産生を抑制することを明らかにし, 成長ホルモン不応症の原因となることを明かにした。また、成長ホルモン不応症の一つの原因であるIGF-I受容体異常症の新規遺伝子変異(p.Q1220X)を見出した。本変異では変異IGF-IR蛋白の著明な発現低下がみられ、それは不完全(変異)蛋白の発現を蛋白レベルで抑制している小胞体関連分解(ERAD) pathwayを介して行われていることを明らかにした。 以上のように,成長ホルモン不応症という面からはかなりの成果が得られたと判断している。 一方、当初研究の目的とした成長ホルモン(GH)作用を仲介し、IGF-Iの転写を調節する転写因子STAT5b異常症に関しては、世界的に見ても報告が少なく, STAT5b異常症は見いだせていない。本遺伝子は免疫機能(低下)にも関与するため、症例数が少ないものと思われる。また、血中IGF-I濃度の維持の役割を持つ結合蛋白ALSに注目して、GH不応症の新しい病因を明らかにする課題も,低身長で血中IGF-I値が著しい低値を示す症例を対象に検索を進めている途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究の目的としたIGF-Iの転写を調節する転写因子STAT5b異常症、血中IGF-I濃度の維持の役割を持つ結合蛋白ALSの異常症について本邦初例を見いだすことを目的に以下の研究を引き続き行う。 1.臨床対象での検討 1)当講座はIGF/IGF-I受容体研究のトップクラスの業績をあげている。そのため、他施設からの検査依頼が多い。原因不明の低身長児で,特にIGF-Iの低値を認める症例を、学会活動を介して他施設からも収集し,STAT5bおよびALS遺伝子の変異を引き続き探索する.2)IGF/IGF-I受容体系は骨発育に重要な役割を果たしており,その異常は骨塩量の獲得にに反省されると思われる。従って最大骨量を獲得したと思われる20~22歳女性を対象に,骨塩量を測定し,見出されたSTAT5bおよびALS遺伝子多型と最大骨量の相関を明らかにする.3)GH治療患者を対象に, STAT5bおよびALS遺伝子多型と、血中IGF-I、ALS濃度および身長増加率の改善を検討し,これらの遺伝子多型の骨発育への関与を明らかにする. 2.In vitroでの検討 1)見出した変異ALS遺伝子を有する対象者の血清のWestern blotを行い、変異ALS蛋白とIGF-IおよびIGFBP-3との結合能を検討する.2)変異STAT5b遺伝子と、IGF-I遺伝子とその転写領域を含む領域をCHO細胞に発現させ,変異STAT5b遺伝子の機能を解析する.3)IGF-I受容体異常症の遺伝子解析と変異遺伝子導入細胞を用いた機能解析を引き続き行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(11 results)