2013 Fiscal Year Research-status Report
小児のてんかん性認知障害の発生に関する脳波分析研究
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24591513
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小林 勝弘 岡山大学, 大学病院, 講師 (60273984)
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Keywords | てんかん性脳症 / 脳波異常 / 高周波振動 |
Research Abstract |
認知機能や行動の悪化が激しいてんかん性活動のために惹起される病態がてんかん性脳症であり、小児の発達において重大な問題である。てんかん性脳症の1型である徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかんに発展する可能性のある小児てんかん症例を前方視的に追跡する研究を行っており、患者家族から同意書を集めている。すなわち睡眠脳波で特徴的てんかん発射が増強を示すタイプの小児てんかんの症例であり、平成24~25年度中に計58例において同意書を得ることができた。 これらの症例の初回睡眠時脳波データを分析し、23例では高周波 (ripple)帯域の棘波に伴う異常活動を時間・周波数分析により検出した (平均ピーク周波数 119 Hz)。残り25例は初回脳波では高周波を認めなかった。今後の年余に亘る観察の間に病像とくに睡眠時脳波異常の変化があれば、脳波の高周波振動の出現状態や周波数と、認知や言語などの高次脳機能の変化がどのように関連するのかを解明できる。 また、このてんかん性脳症の病態に近い2例の患者において高密度アクティブ電極を用いて高精度脳波を記録し、通常の脳波よりも一層詳細に異常活動の出現状態を分析することができた。すなわち異常は頭部全体で一斉出現するのではなく、一定の焦点から次第に拡大して行くというプロセスが解明されつつある。来年度以降はこの高密度アクティブ電極をさらに多くの症例に応用したい。 徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかんは今なお病態が未解明の疾患であり、強い脳波異常がどのようにして認知障害をきたすのかという機序の鍵は異常高周波脳活動にあることを、後半の研究期間で明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
激烈な睡眠時脳波異常である徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかんに発展する可能性のある小児てんかん症例を前方視的に追跡するため、患者家族から同意書を集めているところであるが、昨年度および今年度中に58例から同意が得られた。すなわち睡眠中に鋭徐波を主体とするてんかん発射が多発する小児であり、23例では高周波 (ripple)帯域の棘波に伴う異常活動を時間・周波数分析により検出した (平均ピーク周波数 119 Hz)。残り25例は初回脳波では高周波を認めなかった。以上のように後半の研究期間で観察を行うための足がかりができた。 そして、このてんかん性脳症に近い脳波像を示す患者において高密度アクティブ電極を用いて高精度脳波を記録し、通常の脳波よりも一層詳細に異常活動の出現状態を分析することができた。すなわち異常は頭部全体で一斉出現するのではなく、一定の焦点から次第に拡大して行くというプロセスが解明されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
後半の研究期間で、患者家族から追跡の同意書を頂くことができた上記の症例を追跡して行き、臨床および脳波像において病像の悪化とくに徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかんに発展する小児てんかん症例を見極める。このような病状変化に関する予後予測因子を、脳波のてんかん発射に伴うガンマおよび ripple 帯域高周波振動の出現状態や周波数に求めることができるかどうか分析する。これにより認知や言語などの高次脳機能の変化が、脳波の高周波とどのように関連するのかを解明できる。それと共に追跡の同意をさらに多くの患者家族に求めることで、一層症例数を増やしたい。 また、この徐波睡眠時持続性棘徐波を示すおよびそれに近い脳波像を示す患者における高密度アクティブ電極記録の高精度脳波に関しては、今後2年間で症例数を増やし、てんかん性異常の拡大プロセスの分析と高周波振動の出現状態の評価を行いたい。
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