2012 Fiscal Year Research-status Report
早期の栄養障害が及ぼす脂肪組織代謝変動への活性酸素/窒素ストレスの関与とその制御
Project/Area Number |
24591525
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
土橋 一重 昭和大学, 医学部, 講師 (60260569)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小児 / 栄養 / 肥満 / 脂肪細胞 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
小児の栄養の問題、栄養状態と脂肪組織代謝に関する本研究では、基礎研究、臨床研究の両面からアプローチしている。計画にも示したように複数の小プロジェクトを施行し、積み上げていく形式をとっている。このうちいくつかは既に成果として発表できた。 基礎研究として本年度は、培養脂肪細胞を用いた研究を先行して主に行うこととした。3T3-L1脂肪細胞の培養液にTumor necrosis factor (TNF)-αを添加すると酸化ストレス、NOストレスが高まり、Monocyte chemoattractant protein 1(MCP-1)分泌が亢進し、アディポネクチン分泌は低下する。これは、肥満などの栄養障害でみられる脂肪組織代謝異常として極めて重要な変化である。これらを制御するためにAMPキナーゼ系の関与について検討した。AMPキナーゼ(AMPK)活性化剤を複数試したが、同じAMPK活性化作用のある薬剤でも効果には違いがあり、重要な新知見が得られたので、発表の準備をしている。 臨床研究として、生後早期の栄養法の違い(母乳栄養と人工栄養)で乳児期の成長にどの程度の差異が生じるか、無いのか、調査研究した。基本的なことではあるが、我が国ではこれまでこの様な調査はなく、結果は日本小児科学会英文誌に受理され、現在印刷中である。また、小児の原発性、続発性の脂質異常症の症例について独自に検討し、肥満や栄養・食事の問題、薬物療法などについて報告できた。血清アディポネクチンレベルとその分画については、早産児における経時的変動やネフローゼ症候群で新知見が得られ、DOHaD仮説との関連で学会発表などを行った。肥満小児では酸化ストレスが高まるが、マクロファージから出されるAIM (apoptosis inhibitor of macrophage)レベルについての検討も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織は、MCP-1分泌などを介して、マクロファージを浸潤させる。TNFαなどのサイトカインはそのマクロファージから、また同時に、脂肪細胞自身から産生される。肥満や糖尿病などでは、これらによる局所での高サイトカイン血症、すなわち「炎症」により脂肪組織機能が障害され、そして合併症発症や進展に関与することが言われている。 脂肪細胞は、サイトカインなどの刺激によりNO合成酵素が誘導され、多量のNOが産生される。また、抗酸化酵素レベルが低下し酸化ストレスが惹起されることなどの基礎データに基づき、脂肪細胞代謝変動について研究しており、AMPキナーゼ系活性化剤の効果について、有意義な結果を得られつつある。これは非常に重要な研究成果と捉えている。 また、栄養に関しては生後4ヵ月までの授乳の種類により、乳児期の体格に差が生じることを明らかにし、栄養法と特に脂肪組織量との関連性も判明してきたことは意義がある。さらに、実際の肥満小児でマクロファージが分泌するAIMについて測定しており、以前行った酸化ストレスマーカーなどと比較を開始した。その他にも脂質異常時や肥満以外の疾患でのアディポサイトカイン分泌変動などにも取り組んでいる。 おおむね計画は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、前述のように基礎研究と臨床研究の両面からアプローチするのが1つの特徴であり、臨床小児科医としてそれを可能としている。現在進行中のプロジェクトを継続し、結果を出していくことが重要であり、さらにそれらを発展させていく予定である。 具体的には、計画にも示した動物実験も来年度は推進していく。培養脂肪細胞の研究では、さらに種々のシグナル経路制御薬などを用いて、酸化/NOストレス、脂肪細胞代謝マーカーなどの変動との関連性を検討していく。 新生児を含めた小児の栄養法、栄養状態、発育発達と脂肪組織を中心とした酸化/NOストレスを含めた代謝変動とその制御に関して、一層の努力をする。環境整備を行い、グループの研究者、実験助手も昨年以上に動ける体制をとったので、更に推進されるものと思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、共同利用の機器、既存の機器や試薬などで、研究を賄い、少ない消耗品の購入のみで対応できた。しかし、25年度は、機器の老朽化や故障もあり、新たに実験室の機器の整備、新規測定機器の導入が必要と考えている。そのために24年度は研究費も温存してきた。また、測定キットや試薬などの消耗品も高価であり、それらでほとんど消化されるものと思われる。なお、学会の旅費に当てる予定はないし、以前から旅費に使用したことはない。また、全ての科学研究費はルールに則って使用しており、不正に用いることはない。
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Research Products
(15 results)