2012 Fiscal Year Research-status Report
小児急性脳症において新規に発見したバイオマーカーの機能・神経病理学的探索
Project/Area Number |
24591528
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
浅野 健 日本医科大学, 医学部, 准教授 (70277490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 一史 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60169290)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | VGF precursor / peptide |
Research Abstract |
本研究の研究目的は高率に後遺症を残す小児期の重篤な急性神経疾患の一つである急性脳症に対する有力な髄液マーカ―として新規に発見したneurosecretory protein VGF precursor 断片ペプチド(VGF ペプチド373)の脳内の生理活性ペプチドとしての脳・神経細胞などに与える影響に関して基礎的な探索生理学・病態学的意義を機能・形態学的解析を通じて明らかにすることである。 本年度は免疫組織化学染色用の抗体の作成とそれを用いたVGFペプチドの脳内の局在の研究を主に行った。ラット脳の視索上核、室傍核、正中隆起において我々が作成した抗体が反応・染色されることが判明した。これらの部位は脳の内分泌代謝に関連する部位であり我々の作業仮説に一致する結果となった。上記の研究目標に対して組織切片上で反応する抗体の作成に成功したことは今後の研究にとって大きな一歩であると考えられた。 一方、in situ hybridization用のdigoxigen標識のプローブは数種類作成したがうまく標識されなかった。プローブのcDNAの配列を再検討し、mRNAの発現を検討する予定である。 また、髄液中のVGFペプチドの測定はウェスタン・ブロット法と凍結乾燥による髄液の濃縮(約50倍)を組み合わせることによっても検出することができなかった。VGFペプチドが4800Daと低分子であり、PVDFメンブレンを用いてもうまく膜上に固定することが難しいこと、髄液中には絶対量として微量しか存在しておらず、ウェスタン・ブロットの感度では十分でないことが考えられた。今後は他の方法での測定を検討する。 合成ペプチドの脳内投与によるその生理学作用の検討は現在、全長ペプチド合成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は免疫組織化学染色用の抗体の作成とそれを用いたVGFペプチドの脳内の局在の研究を行った。cDNAを用い、発現ベクターに組み込んだVGFペプチド全長を用いた抗体作成は不可能であった。従って通常の最もVGFペプチドを感度よく、かつ正確に認識でいる抗体を作成するためにいくつかの候補ペプチドをウサギに免疫をし、それから作成した抗体でラットの脳組織を染色する実験を繰り返し、抗体が適切に反応するかを判定した。結果、一つの抗体がラット脳の視索上核、室傍核、正中隆起を染色することがわかり、現在、この抗体のvalidationを行っている。これらの部位は脳の内分泌代謝に関連する部位であり我々の仮説に一致する結果となった。 一方、髄液中のVGFペプチドの測定はウェスタン・ブロット法と凍結乾燥による髄液の濃縮(約50倍)を組み合わせることによっても検出することができなかった。VGFペプチドが4800Daと低分子であること、おそらく、髄液中にはごく微量しか存在していないためにPVDFメンブレンを用いてもうまく膜上に固定することが難しいこと、ウェスタン・ブロットの感度では十分でないことが考えられた。今後、さらに高感度の方法を探索する予定である。 一方、in situ hybridization用のdigoxigen標識のプローブは数種類作成したがうまく標識されなかった。プローブのcDNAの配列を再検討し、mRNAの発現を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はVGF ペプチド373 のマウス脳内での遺伝子発現、発現局在、蛋白発現変動を検索する。今後の研究の推進方針としては具体的には 1)In vivo での形態学的同定:ラットの脳でVGF ペプチド373 の遺伝子・蛋白がどのように発現しているかを免疫組織化学、in situ hybridization, RT-PCR,ウエスタンブロットで検討する。さらにVGF ペプチドを放射線標識してVGF ペプチドに対する受容体の局在を検討する。 2)病態モデルを用いた解析;VGF ペプチド373 を健常マウスの脳室内に投与して変化を観察する。また脳症、脳変性性疾患マウスに投与してその治療効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)In vivo での形態学的同定のために①ラットの脳②抗体③in situhybridization用プローブ作成(現在進行中)③RT-PCR用プローブを作成する。④放射線標識したVGF ペプチドも作成予定である。 2)病態モデルを用いた解析;①全長VGF ペプチド373②脳症、脳変性性疾患マウスを用いる。 なお、繰り越しの研究費についてはこれまでに作成した抗体の反応性が脳切片の免疫組織化学の結果ら判断すると非特異的な反応が否定できず、あまりよくなかったこと、またin situ様のプローブの設計が目的とするペプチドのcDNA長が短いためかなり難しいことが判明したために、より特異度の高い抗体を作成するのに重点的に充当することとした。
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