2013 Fiscal Year Research-status Report
唾液検体と体動記録による睡眠リズム獲得過程の徹底解明:科学的発達支援への挑戦
Project/Area Number |
24591533
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
岩田 幸子 久留米大学, 医学部, 助教 (40465711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 欧介 久留米大学, 医学部, 助教 (30465710)
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Keywords | 新生児 / 睡眠 / Actigraphy / 認知障害 / 睡眠障害 |
Research Abstract |
本研究は,新生児期から簡易睡眠定量機器Actigraphyと内分泌的マーカーの日内変動トレースを併せて応用することで,誕生からサーカディアンリズムを獲得するまでの過程を明らかにすることを最大の目的としている. 昨年度の睡眠ポリソノグラム(PSG)との同時検査によりActigraphyの有用性が確認できたので,続いて,尿および唾液中コルチゾール値の信頼性を評価するため,動脈血(動脈留置ラインから採取)中との値を比較したところ,それぞれ有意な正相関を認めた. そこで,本研究のphase1である,当院入院中の新生児に,Actigraphy長期間連続記録,同期間内の定期的尿中および唾液中コルチゾール測定を行った(48症例).Actigraphyの活動量の生後変化として,日齢を追う毎に明らかな増幅および群集化を認めた.一方,コルチゾール値は,母体および出生時の影響から,生直後には高値を示し,その後低下を示す傾向にあった.同時に,唾液中コルチゾール値の新生児における臨床的意義を明らかにするため,低出生体重児を中心に,朝・夕の2ポイントの同一固体内繰り返し検査で投与方法の異なる授乳(経口22例・経腸12例)前後に唾液を採取し,授乳そのものや,その方法の違いが昼夜リズムの確立に与える影響を検討した.経口群のみ,朝・夕共に,授乳により有意にコルチゾール値の増加を認め,また,授乳前同士の比較で,朝の方が夕より高い傾向を示した.以上から,経口授乳は,日内リズム獲得に影響を与えている一因子と考えられた. さらに,phase1の症例から,協力を得られた家族の退院後1か月および3か月の時点で,Actigraphy・睡眠日誌・質問紙の調査を行った(phase2,10症例).さらに,症例を増やし解析を進めることで,睡眠リズム獲得の過程,および影響因子の同定が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Actigraphyと唾液コルチゾールを新生児に応用するため,欠くことができない各々の臨床的意義を理解できた.そして,その基礎的理解の上,実際,phase1およびphase2を開始できている.ただ,phase2においては,家族の負担から,中断を余儀なくされるケースが発生しており,予定していた程の症例が集まらなかった.今後,長期フォロー可能な症例獲得のため,睡眠日誌期間の短縮および簡略化などの対応の必要性がある. 一方,本年度は,市中産婦人科医の協力の元,生後1ヶ月の正常新生児を対象に,本研究で用いている質問紙のみの施行を追加開始できた.1000症例を目標に,現在,6割ほど回収が進んでいる.詳細な睡眠日誌ではなく,ワンポイントでの評価ではあるが,検査時は授乳間隔の固定化とともに早い児では昼夜リズムの確立が認められ始める時期に相当するので,早期確立に良影響を与える因子,逆に明らかに昼夜リズム逆転している悪影響因子,それぞれの同定への補助材料になると考えている. 成果報告に関しては,本研究開始初期に,新生児の睡眠メカニズムの解明のため行った,脳波(EEG)・近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)・心電図(ECG)の同時記録から,各睡眠ステージ,神経活動に特徴的なNIRSおよび心電図上の変化を見出し,現在,論文執筆中である.さらに,本年度の尿・唾液サンプルによるコルチゾール値のreliabilityに関する論文は,revise中である.
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Strategy for Future Research Activity |
ドロップアウトする例を想定しphase2にエントリーする症例を当初より増やす.かつ,家族の負担軽減への妥協案を探りながら,可能な限り,修正18ヶ月まで,定期的なActigraphy・睡眠日誌・質問紙の調査を行う.最終的に,phase3の修正18か月における短期予後評価(対面式発達検査)を行う予定であるが,この発達検査に関しては,すでにハイリスク新生児を対象に200例を超える施行実績があり,また,家族に結果をフィードバックできる点で好評を得ており,外来での実施に関して問題はない. 予定症例数に到達したところで,新生児期因子,睡眠リズム獲得過程,短期予後との関係を中心に解析をする. 早産児対象群の一部は,当院退院前の神経学的評価として,退院前MRIおよび拡散テンソル画像や,近赤外線スペクトロスコピーを行っているので,上記関係に,神経学的考察を追加可能と考える. さらに,1ヶ月健診の質問紙から,昼夜リズム獲得への影響因子解析することで,新生児の育児疲れから産後うつに陥りやすい母親へ,また,一般社会へ向け,啓蒙活動に役立つ有益な指針を得ることが期待できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究における主要経費は,当初の予定では,Actigraphy購入費であったが,研究協力者として参加している新学術領域「構成論的発達科学」から購入したため,これまで予算を大幅に繰り越す結果となった. 今後,Actigraphy解析に,さらに専用ソフトを,退院前に撮影するMRIで,詳細な解析(3D構築から部位別volume評価するなど)を追加するため,専用のソフトをそれぞれ購入する.また,引き続き乳幼児の睡眠解明のため,各種生体情報(EEG・ECG・NIRS・Actigraphy・SpO2など)を同時記録するモニタリングシステムを導入予定である. 外来対面式発達検査は,当院ですでに確立されているとはいえ,人数枠が大幅に増加するため,専門心理士を増員,確保しなければならない. 最終的な統計解析に際し,データの膨大・煩雑化が予想されるため,統計解析ソフトを購入予定である.
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[Journal Article] Infection surveillance after a natural disaster: lessons learnt from the Great East Japan Earthquake of 2011.2013
Author(s)
Iwata O, Oki T, Ishiki A, Shimanuki M, Fuchimukai T, Chosa T, Chida S, Nakamura Y, Shima H, Kanno M, Matsuishi T, Ishiki M, Urabe D.
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Journal Title
Bull World Health Organ.
Volume: 91(10)
Pages: 784-9
DOI
Peer Reviewed
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