2013 Fiscal Year Research-status Report
グリコーゲン分解系異常を惹起する新規メカニズムの解明
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24591534
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Research Institution | Okinaka Memorial Institute for Medical Research |
Principal Investigator |
大久保 実 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (60241238)
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Keywords | グリコーゲン |
Research Abstract |
糖原病III型(glycogen storage disease type III: GSDIII)の発症機構を明らかにするために、グリコーゲン脱分枝酵素(glycogen debranching enzyme: GDE)活性が欠損するメカニズムを検討している。GDEをコードする遺伝子がAGLである。 平成25年度に得られた結果は以下の通りである。 1. 従来の方法で変異が検出できなかったGSDIII患者を対象に、エクソンのDNA量の相対値(exon copy number:正常は2)をreal time PCRで測定して、エクソン毎に欠失があるか否かを検索した。その結果、複数のエクソンにまたがる大きな遺伝子欠失を持つ患者を2例発見できた。1例目はエクソン4と5を含む遺伝子欠失で、2例目はエクソン27と28を含む遺伝子欠失であった。 2. この2例の欠失断端の塩基配列を検討すると、ヒトゲノムに蓄積されてきた繰り返し配列 (Alu配列など)の中にあった。繰り返し配列間での相同組み換えが原因となり、大きな遺伝子欠失が生じたことが示唆された。こうした組み換えによる遺伝子欠失が、AGL遺伝子変異の原因として一定の割合を占めることが推測され、さらに検討中である。 3. AGLのイントロン配列の変異を認めたGSDIII患者を見いだした。末梢白血球からmRNAを調製して、RT-PCRによりcDNAの解析を行い、スプライシングの異常が起こっていることを確認した。 4. 従来の遺伝子解析方法ではAGL遺伝子に異常が検出できなかったGSDIII患者4例(明らかな血族関係はなし)を対象に、ゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索を行い、AGL遺伝子の中で蛋白をコードしているエクソン部分に一塩基欠失を同定した。現在、この変異がそれぞれの家系内で受け継がれているかをさらに検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. AGL遺伝子の新奇な変異を見いだした。 2. AGLについてのExon copy number assayを確立できた。 3. RT-PCRによりスプライシング異常を起こした患者を見いだした。 4. ゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索の有効性を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
グリコーゲン分解系異常を惹起してGSDIIIを発症するメカニズムの解明には、AGLのre-sequencing、exon copy number assay、RT-PCRを用いたmRNAの解析、そしてゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索が有効であると考えられ、さらに 検討を続けていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度途中で実験補助員が退職したため、当初予算で予定していた謝金額の支払いが減ったためです。このため次年度使用額が生じました。 平成26年度には実験補助員を新しく募集する予定です。これに次年度使用額を用いて対応します。 また、グリコーゲン分解系異常を惹起してGSDIIIを発症するメカニズムの解明には、AGLのre-sequencing、exon copy number assay、RT-PCRを用いたmRNAの解析、そしてゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索が有効であると考えられ、次年度使用額を用いて対応します。
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