2013 Fiscal Year Research-status Report
先天性好中球減少症のG-CSF受容体関連遺伝子異常の臨床的・生物学的意義
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24591539
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三井 哲夫 山形大学, 医学部, 講師 (30270846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早坂 清 山形大学, 医学部, 教授 (20142961)
川上 貴子 山形大学, 医学部, 助教 (90312743)
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Keywords | 先天性好中球減少症 / G-CSF 受容体 / CSF3R / HAX1 / ゲノム不安定性 |
Research Abstract |
自施設及び、研究協力施設において先天性好中球減少症(SCN)と診断された例で、骨髄、末梢血検体を送付いただき、G-CSF受容体(CSF3R)切断型遺伝子異常の出現の有無と、その経時的変化の前方視的解析を引き続きおこなっている。白血病/MDS発症に付随して報告されている切断型遺伝子異常が同定された例は、未だ無い。切断型の遺伝子異常の合併頻度がそう多くないことにも由来すると考えられる。一方で、G-CSF投与中の1例に経過中、CSF3受容体膜貫通部直上のヘテロの遺伝子変異を特定した(c.1947C>T:Ala569Val)。この変異は骨髄細胞由来のmRNAからヘテロに同定され、口腔粘膜細胞由来ゲノムDNAからは検出されず、切断型異常と同様に後天的変異と考えられた。この患者さんは臨床経過上、症状は変化ないままで、その6か月後の骨髄からこの変異は消失した。このようなゲノム不安定性ともいうべき兆候は白血病化への多段階の変化を考えて行く上で非常に興味深く、この患者さんの継続的な解析を行っている。同様の事例がないかどうか、引き続き他の症例を含めて解析中であるが同様の事例はこれまでは出ていない。 また、検索の経過で、SCNの病因解析を行い、通常乳児期から、精神・運動発達遅滞を認めるとされているHAX1変異を有する女児例を経験し、これを報告した。この女児は既報告と異なり、乳幼児期には発達障害を認めず、5歳時の急性脳症発症を契機に神経発達障害(退行)が顕在化した。HAX1遺伝子異常の神経障害の発症機序を考える上で興味深い症例である。 引き続き、G-CSF受容体刺激伝達系関連蛋白の遺伝子配列解析とSCNの原因とされる遺伝子異常(ELANE、GFI1、HAX1)を有する患者の臨床像の解析を通じて、MDS/白血病化へ通じる生物学的意義を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SCNの患者さんの臨床病態とその遺伝子病態についてある程度明らかにすることができてはいるものの、白血病化に絡んでG-CSF受容体刺激伝達系関連蛋白のSHP2、Gab1、Gab2、Grb2、SOCS3、STAT3、STAT5、NRAS、KRAS2それぞれの遺伝子の変化については、その変化を来す症例がこれまでに無い事、mRNAを十分に得られる材料が少ない事により、十分に解析できていない。臨床症例のCSF3R遺伝子異常の前方視的定期的検索については、現在まで、MDS/白血病化を来した例が無く、結果的に異常を検知できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
G-CSF受容体刺激伝達系関連蛋白のSHP2、Gab1、Gab2、Grb2、SOCS3、STAT3、STAT5、NRAS、KRAS2について、それぞれについて、引き続きより少ない検体量行える解析条件を検討すると共に、得られた検体についてはできるだけ解析を行なう。mRNAによる配列決定が、サンプル量により困難であることを加味して、できればgenomeによる解析を併用することとしたい。 SCN症例におけるCSF3R切断型遺伝子異常の前方視的検出解析は引き続き協力施設から検体を得ると共に、定期的な採取と送付を再度お願いする。また、引き続き新たな症例のリクルートを進め、解析の実数を増加させたい。 SCN症例の原因遺伝子と報告されている他の遺伝子異常についても既存の報告にある遺伝子異常ELANE、GFI1、 HAX1といった遺伝子異常の有無について解析する。また、症例によってはその臨床経過から、他の症候性の好中球減少症が考えられるので、そうした例では症候に合わせ、WAS、CXCR4、SBDS、G6PC3、AP3B1、SLC37A4、IRAK4といった遺伝子の異常の有無を検索する。 何らかの刺激伝達系関連蛋白遺伝子の異常が同定されれば、当該患者におけるその経時的推移を追うと共に、発現細胞系等を使って、その生物学的意義を検討する。また、最終的には何とかCSF3R切断型異常導入マウスに対して、同異常を導入してin vivo解析に持って行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
得られた検体について解析をしているものの検体数の実数不足、また、これまで、CSF3Rの伝達系蛋白の遺伝子で、異常を検出できたものが無い為に、未だ、細胞株でのin vitro解析、実験動物へのin vivo導入等ができていない為、こられに見込んでいる費用を次年度に繰り越さざるを得ない状況となった。 G-CSF受容体刺激伝達系関連蛋白のSHP2、Gab1、Gab2、Grb2、SOCS3、STAT3、STAT5、NRAS、KRAS2についてのプライマー合成。SCN病因遺伝子であるELANE、GFI1、 HAX1といった遺伝子のプライマー合成、各遺伝子配列決定、それぞれの試薬購入、機器の維持。変異が同定されれば、細胞株の購入、同株への導入、培養維持の為の消耗品購入。研究が進めば、実験動物の作成、維持、解析のための費用に充当。前年繰り越し分の計画に合わせて使用する。
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Research Products
(4 results)