2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性移植片対宿主病の発症に関与する多様な細胞群の同定とその制御法の確立
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24591543
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 良成 金沢大学, 大学病院, 講師 (50324116)
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Keywords | GVHD / 肥満細胞 / 造血幹細胞移植 |
Research Abstract |
我々は、造血幹細胞移植の抗腫瘍効果(GVT)を増強する方法としてCytokine-induced killer (CIK)細胞の臨床応用を目指しているが、動物実験では軽度の慢性移植片対宿主病(GVHD)が出現する。完全な造血幹細胞移植を目指すには、この軽度のGVHDも完全にコントロール必要がある。我々は、慢性GVHDとIL-17との関連の研究を続けてきた過程で、慢性GVHD病変部には肥満細胞が増多していることに気づき、従来焦点を当てられなかった肥満細胞も移植において重要な役割を演じていることが推定された。肥満細胞は、アレルギー疾患における増悪作用を有する細胞として認識されているが、近年の研究からはそれ以外にも各種免疫反応を調整する細胞として認識されつつある。 まず我々は、この肥満細胞をマウス骨髄細胞からIL-3などを利用して大量倍量に成功した。この細胞を用いてリンパ球混合試験(MLR)を行った。肥満細胞をMLRの系に加えるとMLR反応が抑えられ、肥満細胞には免疫抑制作用を有することが証明された。マウスの種を変えても同様な結果が得られ普遍的な事実を考えられた。 次に、肥満細胞欠損マウスを2種類用意した。移植モデルにおいてホストマウスに肥満細胞欠損、移植ドナーマウスのみに肥満細胞欠損、ホストもドナーも肥満細胞欠損マウスを用いて、in vivoにおける肥満細胞の役割を検討した。in vitroのMLRの実験結果と同様に肥満細胞を欠損させたマウスでは、GVHDが増強され肥満細胞は免疫抑制効果を有していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満細胞の大量培養に成功の後、本年度はin vivoモデルへと計画通りに進行した。再現実験も含めてデータの確かさも確認されいる。以上から概ね順調と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満細胞は、in vitroではリンパ球混合試験(MLR)を抑制することから免疫抑制作用を有するとの仮定のもと、本研究費を利用して研究を推進してきた。現時点で肥満細胞欠損マウスをホスト側に用いるとGVHDが増強することが判明した。今後の課題として、肥満細胞の免疫抑制作用抑制機序を同定する必要がある。 まずin vitroの系においてこの免疫抑制効果が細胞間接着によるものか、またはサイトカインなどを介するものかの検討を行う。具体的には、IL-10、TNF-aがターゲットとなるであろう。 また肥満細胞が胸腺にも作用するかもしれないというデータがpreliminaryながら得られた。GVHD、特に慢性GVHDの発症に関しては、胸腺機能が重要視されており、今後本研究を発展させる上で興味深い。病理学的に胸腺と肥満細胞に焦点をあて、データ集積を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要物品を効率的に購入したため若干の繰越金が生じた。 若干の繰越金であるため、来年度の実験計画に関しての多大な変更はない。予定通り、抗体の購入などの消耗品に繰越金を使用する予定である。
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