2012 Fiscal Year Research-status Report
小児白血病に対する移植片対白血病効果における細胞傷害因子の臨床応用に向けた研究
Project/Area Number |
24591544
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
犬飼 岳史 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (30293450)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 白血病 / 造血幹細胞移植 / 移植片対白血病効果 |
Research Abstract |
難治性白血病に対する同種造血幹細胞移植では、残存する白血病細胞が移植片対白血病(GVL)効果で免疫学的に排除されることで治療効果が発揮されるが、しばしば移植片対宿主病を併発して時に致死的である。そこで本研究では、GVL効果において中心的な役割を担う細胞傷害因子であるTRAILに焦点を当てて、安全にかつ有効にGVL効果を誘導するための手掛かりを探ることを目的とする。さらにPerforinのGVT効果への関与が動物実験系で明らかにされているにもかかわらず、白血病細胞のPerforin感受性とGVL効果との関連性についての知見は皆無に等しい。そこで本研究では、白血病細胞のPerforin感受性において抑制的に機能するPI-9にも焦点を当てて研究を進める。 この目的のために、本年度は1.白血病細胞のTRAIL感受性の同種造血幹細胞移植の治療成績に関する前向き臨床研究、2.白血病細胞のTRAIL受容体発現の制御機構に関する基礎的研究、3.白血病幹細胞のTRAIL感受性に関する基礎的研究、4.白血病細胞におけるPI-9の発現レベルの4点に関して重点的に解析を進めた。その結果、白血病幹細胞においてもTRAIL受容体の発現が維持されてTRAIL感受性を示すことが明らかになるとともに、PI-9の遺伝子発現が急性リンパ性白血病(ALL)の臨床検体において高いレベルで検出されることを確認した。 こうした解析結果を受けて、特に白血病幹細胞のTRAIL感受性に関しては、白血病幹細胞が骨髄内で局在するニッチにおける低酸素状態に注目して、白血病細胞のTRAIL受容体の発現とTRAIL感受性に対する低酸素環境の影響に関しても平行して解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. 白血病細胞のTRAIL感受性の同種造血幹細胞移植の治療成績に関する前向き臨床研究:JPLSGの全国治療プロトコールにおいて、再発ALLのみならずPhiladelphia染色体陽性(Ph+)ALLを含む新規のALL症例の全で、TRAIL受容体発現の解析が開始された。さらに、既に予後の判明している東京小児がん研究グループの保存検体を用いた解析に関して大学の倫理委員会で既に承認を受けており、解析の準備中である。 2. 白血病細胞のTRAIL受容体発現の制御機構に関する基礎的研究:Ph+白血病におけるTRAIL受容体発現の機序を解析するなかで、Philadelphia染色体に由来するBCR-ABLが、がん遺伝子であるc-mycを介してTRAIL受容体発現を誘導している可能性を見出して研究を発展させている。 3. 白血病幹細胞のTRAIL感受性に関する基礎的研究:CD9陽性ALL細胞におけるCD9強陽性分画が白血病幹細胞としての性質を示す点に注目して、ALL細胞のCD9発現強度とTRAIL感受性の関係に関して解析を進めて、D9強陽性分画もTRAIL感受性を維持していることを確認した。さらに、白血病幹細胞が骨髄内で局在するニッチにおける低酸素状態に注目して、白血病細胞のTRAIL受容体の発現とTRAIL感受性に対する低酸素環境の影響に関しても平行して解析を進めている。 4. 白血病細胞におけるPI-9の発現レベルの基礎的研究:ALLの臨床検体においては、ほぼ全例でPI-9遺伝子が高レベルで発現されているのに対して、ALL細胞株では過半数においてPI-9遺伝子の発現レベルが低値であった。また、細胞株が樹立されたALL症例の臨床検体でも高い発現レベルを認めており、PI-9遺伝子の高発現がALLの発症に重要である一方で、株化の過程では高レベルで維持される必要がないことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 白血病細胞のTRAIL感受性の同種造血幹細胞移植の治療成績に関する前向き臨床研究:JPLSGの全国治療プロトコールにおいて、再発および新規のALL症例においてTRAIL受容体発現の解析を継続するとともに、東京小児がん研究グループの保存検体を用いた解析を進める。 2. 白血病細胞のTRAIL受容体発現の制御機構に関する基礎的研究:Ph+白血病におけるTRAIL受容体発現の機序において、BCR-ABLによるc-mycを介する発現調整の詳細に関して解析を発展させる。またc-mycの関与については動物実験で解析を進める。 3. 白血病幹細胞のTRAIL感受性に関する基礎的研究:低酸素環境の白血病細胞のTRAIL受容体発現への影響に加えて、抗がん剤の感受性への影響に関しても解析を進めて、GVL効果におけるTRAILの関与について明確にする。 4. 白血病細胞におけるPI-9の発現レベルの基礎的研究:ALLの臨床検体におけるPI-9遺伝子の高発現の機序と意義に関して解析を継続させる。また、東京小児がん研究グループの保存検体を用いた解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)