2013 Fiscal Year Research-status Report
先天性好中球減少症の疾患特異的iPS細胞を用いた新規病態解析・治療開発基盤の確立
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24591548
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 健一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20324634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 雄嗣 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80397538)
平家 俊男 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90190173)
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Keywords | 疾患モデル / iPS細胞 / 骨髄不全 / 好中球減少 |
Research Abstract |
HAX1遺伝子異常症の患者より同意を得て皮膚細胞を採取し、そこから得られた皮膚線維芽細胞にOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの初期化4因子もしくはc-Mycを除いた3因子をレトロウイルスを用いて遺伝子導入し、iPS細胞株を樹立した。次に、この患者由来iPS細胞と正常人由来iPS細胞を好中球に分化させ、両者の比較を行った。May-Giemsa染色での比較では正常iPS細胞では得られた細胞の40%以上が成熟好中球であったのに対し、患者iPS細胞から得られた細胞では成熟好中球の割合は10%以下であり、未熟な骨髄球系の細胞が多くを占めていた。これらの細胞の表面マーカー解析では正常iPS細胞由来血球に比べて患者iPS細胞由来血球では未熟血球マーカーであるCD34の陽性率が高く、骨髄球系の分化マーカーであるCD11bの発現が低いという結果であった。また、好中球特殊顆粒の免疫染色では患者iPS細胞由来血球では正常iPS細胞由来血球に比較して二次顆粒・三次顆粒の構成成分タンパクであるlactoferrin, gelatinaseの陽性率が低かった。さらに、Annexin Vを用いて両者のiPS細胞由来血球のapoptosisの割合を解析したところ、患者iPS細胞由来血球では正常と比較してapoptosisを起こしている細胞の割合が高いことがわかった。さらに、HAX1-iPSにレンチウイルスベクターを用いてHAX1遺伝子を導入すると、HAX-iPSでみられた好中球分化障害、アポトーシスの亢進が回復することが認められた。HAX1-iPSからの好中球分化系は患者の病態を再現しており疾患モデルとして有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAX-1遺伝子異常症の患者よりiPS細胞株を樹立し、好中球分化させると、正常人iPS細胞からの好中球分化と比較し、形態、表面マーカー、好中球特殊顆粒の免疫染色で、成熟好中球の割合が低いことがわかり、また、Annexin Vを用いて両者のiPS細胞由来血球のapoptosisの割合を解析したところ、患者iPS細胞由来血球では正常と比較してapoptosisを起こしている細胞の割合が高いことがわかった。さらにレンチウイルスベクターによるHAX1遺伝子導入により、HAX1-iPSでみられた好中球分化異常、アポトーシスの亢進が回復することが認められ、これらの事象が確かにHAX1遺伝子異常によって引き起こされることを示した。HAX1遺伝子異常症患者由来iPS細胞からの好中球分化系は疾患モデルとして有用であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
HAX1-iPS、HAX1を導入したHAX1-iPS、正常ヒトiPSの好中球分化の過程で、ミトコンドリア膜電位については解析したが、、カスパーゼの活性化とBcl-2 family等アポトーシス関連分子の変化をより詳細に検討する。細胞死についての解析結果に基づき、抗酸化剤、カスパーゼ阻害剤など細胞死を抑制する作用がある薬剤のHAX1-iPSにおける好中球減少に対する効果について検討する。 HAX1-iPS、HAX1を導入したHAX1-iPS、正常ヒトiPSの好中球分化の過程で、経時的にmRNAを回収し、網羅的遺伝子発発現解析を行い、HAX1異常に伴う好中球減少に関与する遺伝子をスクリーニングする。候補遺伝子に関して real-time PCRで発現の差があることを確認する。候補遺伝子に関して、分子生物学的手法を駆使して、好中球減少との関連を解析する。候補遺伝子がコードする蛋白の作用を調節する薬剤について、その作用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、物品として試薬や抗体、培養液、サイトカインといった研究に必要な試薬類を購入し、情報収集、発表のための学会出張旅費、その他として論文掲載料に使用したが、その合計が交付額に及ばず、次年度使用額が生じた。 次年度は、iPS細胞の培養、好中球分化に必要な培地、サイトカイン、フローサイトメトリー、免疫染色に必要な抗体、アポトーシスの解析に必要な各種試薬、mRNAや蛋白発現など分子生物学的解析に必要な試薬類などに、主に研究費を使用する計画である。また、情報収集、成果の発表のため、学会参加も予定しており、その旅費にも研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)