2012 Fiscal Year Research-status Report
先天性貧血に関与する選択的翻訳機構の解明:ゼブラフィッシュを用いた研究
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24591556
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
上地 珠代 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 研究員 (10381104)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リボソームタンパク質 / 翻訳異常 / ゼブラフィッシュ / 骨髄不全 / ダイヤモンド・ブラックファン貧血 |
Research Abstract |
リボソームの生合成異常が、骨髄機能不全を伴う疾患の発症に関与することが示唆されている。これらは「リボソーム病」という新しい概念のもと研究が進められている。しかし、あらゆる細胞でタンパク質の合成を行うリボソームが、どのようなメカニズムで造血細胞の異常を引き起こすのか全くわかっていない。本研究では、赤芽球形成不全を示すダイヤモンド・ブラックファン貧血(DBA)のゼブラフィッシュモデル(リボソームタンパク質S19遺伝子の発現を抑制した胚)を用いて、赤血球分化に特異的に影響を及ぼす翻訳調節異常を明らかにすることを目的とする。 1. 蛍光プローブを発現するゼブラフィッシュの導入 先行研究において、DBAモデルでは赤血球成熟の最終段階で異常が起きていることが示唆された。異常が起こるステージを明らかにするために、細胞周期の変化を観察できるゼブラフィッシュ(cecyil)を用いた解析を試みた。まず、G1期に赤色蛍光プローブ、S/G2/M期に緑色蛍光プローブをそれぞれ発現するcecyilをリソースセンターから入手した。両者を掛け合わせ、両方の蛍光プローブをもつ固体を作製し、経時的に細胞周期の変化を撮影する条件を検討した。 2. ポリソームを形成するmRNAの頻度解析 DBAモデルの24時間胚からの抽出物からショ糖密度勾配遠心法によりポリソーム画分を得た。そこからmRNAを精製し、次世代シーケンサーを用いてRNA-sequencing解析を行った。コントロール胚と比較して翻訳効率が変動する遺伝子を315個まで絞り込んだ。この遺伝子群を用いた解析によって、細胞接着、細胞周期、スプライシングに関わる遺伝子が含まれていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなトランスジェニック系統であるcecyilを導入し、順調に継代できており、今後安定して実験が行える状態を確立することができた。また、蛍光顕微鏡による長時間の撮影条件も整いつつある。特に、初期造血器官であるICM領域の撮影に関しては、個々の血球細胞を明確に捉えることに成功した。 RNA-sequencing解析では、正常胚、コントロール胚、DBAモデル胚のポリソーム画分から精製したmRNAを用いて実験を進めた。解析に必要なRNAの量や配列を決定するためのタグの検討を行い、有効データを得るための条件を整えた。さらに、バイオインフォマティックスの手法を用いて、DBAモデル胚でのみ翻訳効率が変動する遺伝子を抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
DBAモデル胚で特定のmRNAの翻訳効率に変動が見られたため、どのような制御機構が関連しているのかを明らかにしていく。まず、リボソームフットプリント解析を行う。この解析では、RNA-sequencingの際と同様にポリソーム画分を利用し、リボソームがmRNA上のどこに存在していたのかを解析することができる。これにより、リボソームタンパク質S19遺伝子の欠損によって、特定のmRNAに対するリボソームとの親和性が変化することを明らかにする。また、そのようなmRNAに対するMOを設計してゼブラフィッシュの受精卵(通常の胚またはcecyilの胚)にインジェクションし、赤血球の造血においてどのような役割を果たしているのかを解析する。 赤血球造血への関与が強く示唆される遺伝子については、患者DNAを用いたスクリーニング、または患者骨髄から精製したmRNAを鋳型にした定量PCRを行い、新たなDBA遺伝子としての同定を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人件費・謝金による支出が予定を下回ったこと、また、次世代シーケンサーによる委託解析費用を計上していたが、東京大学の鈴木穣博士らとの共同研究として行うこととなったため費用が発生しなかったことが理由である。 今後、ゼブラフィッシュの飼育係や実験補助の増員、また、次世代シーケンスにより得られた結果を解析するための費用(解析ソフトの購入など)として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)