2012 Fiscal Year Research-status Report
凝固第VIII因子抗体に対する自己血管内皮前駆細胞移植による新規免疫寛容導入療法の確立
Project/Area Number |
24591559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
松井 英人 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00571027)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血友病A / 遺伝子治療 / 細胞療法 / インヒビター |
Research Abstract |
我々はすでに、ex vivoで第VIII因子遺伝子を導入した血管内皮前駆細胞(Blood Outgrowth Endothelial Progenitor Cells:BOECs) による細胞療法を血友病Aマウス実験モデルで確立し、移植に伴う免疫応答の回避に成功した。本研究プロジェクトでは、これまでの研究成果を発展させ、血友病Aインヒビターに対する自己血管内皮前駆細胞移植による新規免疫寛容導入療法を確立し、臨床展開に直結させることを目標とする。 従来のFVIII補充療法による免疫寛容導入療法に代えて細胞移植による新規免疫寛容導入療法を確立するには、循環血液中でFVIII活性を長期間維持するための運搬役:ベヒクル細胞が必要となる。FVIIIは血漿中ではvon Willebrand因子(VWF)と複合体を形成することで、プロテアーゼなどによる分解から保護されている。このため我々は、VWFを内在発現している血管内皮前駆細胞であるBOECsにおいてFVIIIを強制発現させる手法を選択した。またBOECsは末梢血から簡便かつ再現性よく単離することができる利点がある。本研究では血友病Aマウスの末梢血よりBOECsを単離培養した後、ウイルスベクター等でFVIII遺伝子をex vivoで導入し、インヒビター陽性血友病Aマウスへ皮下移植し効果を検討する。マウスモデルでの有効性が確認された後、我々の施設のアドバンテージ(我が国で唯一の血友病A犬コロニーを保有)を生かし、実際によりヒトに近いと考えられる犬モデルを使った動物実験でその有効性の確認を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、in vitro実験系でFVIII遺伝子をBOECsに安全かつ有効的に導入できる方法をさらに詳細に検討すした。これまで我々は、臨床でも使用されている第3世代レンチウイルスベクターを用いてBOECsにex vivoでFVIII遺伝子を強制導入し、長期間安定したFVIIIを発現させることに成功しているが、しかし臨床応用にあたり、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターは、発癌などを含めて完全に安全性をクリアしているわけではない。そこで連携研究者である堀田秋津博士との共同研究で新規に開発した非ウイルスベクターであるpiggyBac トランスポゾン由来のベクター(piggyBac ベクター)を用いたFVIII遺伝子導入について検討した。piggyBac ベクターの利点として、プラスミドDNAの調整だけの簡便な操作で遺伝子挿入が可能であり、レンチウイルス作製時の煩雑な操作やパッケージング細胞は必要なく、大幅なコスト削減が可能になる。また最大の利点として、レンチウイルスベクターでは不可能であったFVIIIcDNA全長が搭載可能であり、より臨床応用に直結できる可能性がある。これまで使用していた既存のBドメイン欠損型のFVIII発現レンチウイルスベクターと、新規のpiggyBac ベクターとを比較検討することで、新しいベクターの有効性を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降BOECsへのFVIII遺伝子導入を確認したので、まず血友病Aマウスモデルで移植実験を行う。移植方法としては①マトリゲル移植、②細胞シート移植の2種類を試し、結果の優れた方法を採用する。 ①マトリゲル移植:基底膜マトリックス(BD社マトリゲル)は細胞外基質スタンパク質を多く含む可溶性基底膜調整品である。これまでのマウス移植実験で、BOECsの接着および分化に有効であることを確認している。FVIII遺伝子導入済みBOECs(2x106cells)浮遊液とマトリゲルを混合したものを皮下へ注入するだけでゲル形成が完了し、一定期間マウスの皮下へBOECsが生着し留まらせることが可能である。 ②細胞シート移植:温度応答性細胞回収培養皿(セルシード社UpCell)を使いFVIIIを発現するBOECsシートを作製する。その後細胞シートを作製しマウスの皮下へ移植する。細胞シートは生体内移植後の機能的接着に有効であるとともに、外来性マトリックスを使用しないため移植に伴う炎症を少なく押さえることが可能である。 細胞移植実験後の治療効果は、①抗第VIII因子抗体(インヒビター)産生量のELISA測定、生体内での免疫応答を確認するための②サイトカインアッセイ(IL-6 TNF-αなど)、③T細胞増殖試験、制御性T細胞誘導試験(FVIII特異的制御性T細胞発現誘導の検討)などを行い、免疫寛容成立のメカニズムを詳細に検討する。また同時に、実験によって起こり得る副反応等も慎重に観察する。治療効果が確認できれば、直ちに血友病A犬モデルでの移植実験へ移行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Presentation] Anti-hemophilic properties of BAY 86-6150, a recombinant FVIIa variant, under blood flow
Author(s)
Masaaki Doi, Mitsuhiko Sugimoto, Hideto Matsui, Yasunori Matsunari, Midori Shima, Jian-Ming Gu, Ji-Yun Kim, Volker Laux, John E Murphy, Timothy Myles
Organizer
第74回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
京都市
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