Research Abstract |
小児のウイルス感染喘息の原因・誘因としては、我々や過去の報告からライノウイルスとRespiratory syncytial (RS) ウイルスが重要であると考えられる。本研究では、ウイルス感染気道上皮を用いて、特に好酸球性炎症の役割について検討することを目的とした。 初年度である平成24年度は、RSウイルスを、ヒト気道上皮細胞に感染させ、さらにヒト好酸球由来の組織傷害性顆粒蛋白を曝露し、ウイルス感染喘息における好酸球性炎症機構についての解析を行った。方法は、HEp-2細胞を用いて増殖させたRSウイルスを、5,000rpm, 30分遠心後、上清をショ糖密度勾配超遠心分離法によって精製した。ヒト気道上皮細胞 (A549細胞) に、RSウイルスを感染させ (0.1-10 MOI)、さらに4つの精製した好酸球性顆粒蛋白 (MBP, EPO, ECP, EDN, 各0.39-100μg/ml) を曝露し、実際の正常気道のウイルス感染および好酸球性炎症モデルを再現した。その後、RSウイルス感染、好酸球顆粒蛋白の浸潤による気道傷害の形態学的変化およびA549細胞のアポトーシス/ネクローシスについて検討した。 RSウイルス単独では、高濃度 (10 MOI) 以外では、明らかな上皮細胞の形態学的変化は認めなかった。4つの顆粒蛋白のうち、MBPとEPOが、各々RSウイルス感染A549細胞に対して、形態変化と有意な細胞傷害性を示した。また、4つの蛋白の混合では、その効果はさらに増強した。 好酸球性顆粒蛋白、特にMBPは、RSウイルス感染気道上皮の傷害を増強すると考えられ、ウイルス感染喘息の病態において、好酸球性炎症が重要な枠割を果たしていることが示唆された。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、RSウイルス感染喘息と好酸球性顆粒蛋白との相互作用について、ヒト正常気道上皮細胞におけるRSウイルスの感染と、好酸球性顆粒蛋白のうち最も傷害性が強いことが証明されたMBPを用いて、気道上皮の上清中サイトカイン/ケモカイン解析を行う。すなわち、27種類のサイトカインおよびケモカイン (IL-1β, IL-1ra, 2, 4, 5, 6, 7, 8, 10, 12, 13, 15, 17, IFN-γ, TNF-α, GM-CSF, G-CSF, MCP-1, MIP-1α, MIP-1β, IP-10, Eotaxin, FGF Basic, PDGF-bb, RANTES, VEGF) をBio-Plexによるmicrobeads assay (Bio-Rad) により網羅的に測定する。本検討により、平成24年度に明らかとなった、RSウイルス感染喘息における好酸球性気道傷害の機序解明を行うことを目的とする。
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