2013 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスの遺伝子再集合を応用した新規治療戦略
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24591590
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
柏木 孝仁 久留米大学, 医学部, 講師 (70320158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 好勇 久留米大学, 医学部, 准教授 (40309753)
渡邊 浩 久留米大学, 医学部, 教授 (90295080)
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Keywords | インフルエンザウイルス / ポリメラーゼ / PB2 / PA / 阻害薬 |
Research Abstract |
インフルエンザの治療には現在、NA阻害薬を中心とした抗インフルエンザウイルス薬が使用されている。しかしながら、インフルエンザウイルスを含め一般にRNAウイルスは変異速度が速く、薬剤耐性を獲得しやすい。特にインフルエンザウイルスは遺伝子を分節として持っており、この分節の入換えによる変異(不連続変異)が生じる。しかし、我々は、これまでに、この入れ換えは無秩序に起こっているわけではなく、株間に入れ替えの相性が存在することを報告してきた。特に、インフルエンザウイルスの核酸タンパク質複合体を構成するPB2およびPAサブユニットに、この相性を決定する重要な因子が存在することが示されている。我々は、この点に着目し、特定の遺伝子の組み合わせによりインフルエンザウイルスの発生が抑制できるか様々な株を用いて検討した。その結果、H1N1の標準株であるWSN株に対して、H5N1株由来のPB2サブユニットまたはH3N2株由来のPAサブユニットの遺伝子を導入することでウイルスの増殖が阻害され、その増殖阻害は遺伝子複製酵素の活性低下によるものであることを見出した。H5N1 PB2に関してはほとんどの解析を終えたため、ここでは、さらにH3N2由来のPAサブユニットに着目し、阻害効果をさらに高める手段の検討と阻害メカニズムの解明を目指した。H3N2 PAの断片を用いて阻害効果を確認したところ、H3N2 PAの一部断片に非常に強い阻害効果がある事が分かり、興味深いことにその阻害効果は、RNPの活性を阻害しているのではなく、RNPの合成そのものを阻害することに起因していた。今後は、この断片の高発現系を構築し純度の高い精製を行えるか検討を行うと共に、細胞または組織、さらには動物などへの投与方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PB2は本来、インフルエンザウイルス遺伝子複製酵素の一部サブユニットであるが、これまでの研究(平成21年度~平成23年度 若手研究(B))で、遺伝子再集合を抑制する作用があり、またその作用に株間で差がある事が分かっていた。このメカニズムは遺伝子複製酵 素の複合体形成がPB2によって阻害されることによる。そこで、当該研究の研究計画に基づき株間のPB2の違いをアミノ酸レベルで比較し、人工変異体を用いて、より遺伝子複製酵素の阻害作用の強いPB2の構築を目指した。これまでに20種類以上のPB2断片を作成し、様々な比較を行った。その結果、一部断片に非常に強い阻害効果を認め、さらには阻害に必要な部位を特定でき、この目的はほぼ達成できた。同時に、ウイルスに対しての直接的な作用を細胞培養系を用いて確認したところ、RNP活性への作用だけでなく、ウイルスの増殖も阻害出来る事が確認でき、PB2断片の研究に関しては、ほぼ当初の予定通りに進展した。さらには、この研究の過程で、新たにPAサブユニットにもRNPに対する阻害効果が確認され、そのメカニズムはRNP活性の阻害ではなく、RNP合成の阻害である事が分かり、インフルエンザウイルスに対する新たな作用機序を持つ薬剤開発へと繋がる期待が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
PB2に関しては当初予定してた研究内容をほぼ網羅できたため、今後は新たに発見されたPAによるRNP合成阻害についての詳細な解析を進めて行く。手段としてはPB2における研究と同様に、数ステップに分けて行う予定である。すわなち、1)阻害に必要な最低限の断片を見出す。2)阻害効果を高める手段を検討する。3)阻害のメカニズムを詳細に検討する。4)断片の大量発現系を確立する。5)細胞または組織、最終的にはモデル動物への効果を確認する。仮に大量発現と精製が予定通り進まなかった場合には、現在利用可能な細胞内での評価系を見直し阻害メカニズムを解明すると共に、同じく現在利用可能な小スケールの精製系を最大限に活用して阻害メカニズムを解明することに注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額端数の為に次年度繰越となった。 翌年度請求分と合わせて当該研究に必要な消耗品に使用する。
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Research Products
(13 results)