2012 Fiscal Year Research-status Report
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病態解明に向けた基礎的研究
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24591594
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
白石 公 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (80295659)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | mitral choral rupture |
Research Abstract |
乳児特発性僧帽弁腱索断裂は、生来健康な乳児が僧帽弁の腱索断裂により急性の呼吸循環不全に陥る重篤な疾患であり、死亡例も報告されている。罹患報告例のほとんどは日本人乳児であり、近年発症が増加傾向にある。今年度は断裂した腱策の病理組織所見を詳細に検討し、その病因と病態を検討した。【結果】全国調査では、過去16年間に88例の発症が確認され、発症時の月齢は4.49 +/-1.83ヶ月、7例に川崎病既往、2例に母親由来SSA抗体陽性が認められた。70 例(79.5%)に外科手術が実施され、24例(27.5%)に人工弁置換術がなされた。死亡例は6例(6.9%)であった。病理組織標本が得られた19例では、14例(74%)に腱索心内膜組織へのリンパ球(CD3陽性)およびマクロファージ(CD68陽性)を主体とした単核球の細胞浸潤が認められた。好中球の浸潤は稀であり、細菌性疣贅は見られなかった。14例(47%)で腱索および僧帽弁弁尖組織の粘液様変性が認められ、その組織所見は間質の増成と線維芽細胞の増殖による線維性肥厚が主体であった。断裂した部分の腱索の組織所見が得られた1例では、断裂部での腱索組織の線維性瘢痕が見られた。炎症早期に発現する細胞外基質であるtenascinCは腱索の全層において陽性であった。【考察】乳児特発性僧帽弁腱索断裂の原因として、ウイルス感染や免疫異常による腱索組織の炎症性組織障害および線維化が原因である可能性が示唆された。今後は更なる病因検索および適切な治療法の確立を目的として、川崎病症例やSSA抗体陽性例では免疫学的異常による組織障害の解析を 、ウイルス感染が疑われる症例ではウイルスゲノムの解析など研究を行う予定である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに20例あまりの断裂した腱索、僧帽弁、乳頭筋の病理組織標本を収集し、その所見を解析した。また標本に免疫組織化学を実施して標本に見られる浸潤した炎症細胞のマーカー、組織リモデリングのマーカーなどを検討した。特異的な所見は得られていないが、多くの症例において腱索断裂はおもにウイルスによると考えられる非特異的な心内膜炎、弁炎、腱索炎による可能性が示唆された。これまでに新たな凍結検体は得られていないので、ウイルス分離や生化学的な新たな知見は現在までに得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
全国で新たな症例が発症した際に、患者からの新鮮血清および弁や腱索組織を凍結収集し、免疫組織学的診断、ウイルス分離、分子生化学的診断を実施することにより、病因と腱索断裂のメカニズムの解明に向けた研究を実施するとともに、病因に基づいた新しい内科的治療法の導入および的確な外科的治療法の時期と方法に関する前向き研究を行う予定である。具体的には、ウイルスゲノムの解析、免疫組織学的検討、分子生物学的検索を加え、腱索断裂のメカニズムの解明研究を展開する。発症時の患者血液を用いて、IL-1β, IL-6, IL-10, TNFαなどの炎症性サイトカイン、ブドウ球菌や溶連菌由来のスーパー抗原、血液中のリンパ球分画、抗核抗体、抗DNA抗体、抗SSA抗体、抗SSB抗体、心筋心内膜炎を引き起こすウイルス分離とウイルス抗体価、薬剤投与がある場合はリンパ球幼弱化試験などを調べ、基礎疾患を明らかにするとともに、腱索組織の破壊に至る病理組織学的、免疫組織学的メカニズムを明らかにする。得られる新鮮な腱索組織を用いて、血管新生因子であるVGEF、弁や腱索組織に含まれ膠原線維や弾性線維のremodelingに関与するmatrix metalloproteinases、抗核抗体、抗DNA抗体、抗SSA抗体、抗SSB抗体、などの免疫組織化学を行う。3年後の平成27年度末までには病因と断裂のメカニズムを明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫組織化学に用いる抗体およびウイルス検索に使用する生化学試薬の購入費用 600千円 成果発表に用いる国内および海外旅費、検体運搬のための出張旅費 600万円 切片の作成依頼などの人件費 200千円 その他通信費および事務費用 200千円 以上合計1,600千円を平成25年度予算として計上している。
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Research Products
(3 results)