2012 Fiscal Year Research-status Report
後障害なき生存を目指して~新生児期肺障害モデルにおける肺胞微小循環系の再生の試み
Project/Area Number |
24591613
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中西 秀彦 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70528207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40510235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肺胞微小循環 / 慢性肺疾患 / 早産児 / 血管再生 |
Research Abstract |
早産児では高濃度酸素投与を中心とした呼吸管理が必要である一方、その合併症として未熟な肺胞および肺胞微小循環系が障害を受け、慢性肺疾患へと進行する。本症では、長期にわたる呼吸障害、栄養障害、神経発達障害を引き起こすため、その治療の確立は早産児の後障害なき救命のための最重要課題である。 本研究目標は、肺胞微小循環系の変化に焦点を当て、高濃度酸素による肺胞および肺胞微小循環系の障害および治療による再生過程の変化を多重免疫染色法やレクチン静脈注入法などを駆使して解析を行い、その異常部位や変化の過程を解明し、その障害に関わるシグナル伝達を特異的に阻害する治療戦略の糸口をつかむことである。 本年度は、基礎的知識として新生仔マウス高濃度酸素肺障害モデル用いて、肺胞および肺胞微小循環系がどのように障害を受け、回復期にはどのような構造変化をたどるのかをレクチン灌流法と多重免疫染色法を用いて3次元的に解析を行った。 高濃度酸素投与群では、正常発達群と比較して、換気スペースの増大、肺胞中隔数の減少、血液空気関門の著明な肥厚を認めた。高濃度酸素投与後ルームエアに戻した回復期群では、肺胞構造の大きな改善は認められず長期にわたる構造異常を認めた。肺胞微小循環に関しては、高濃度酸素投与群で肺胞壁における毛細血管数は減少していたが、回復期群ではその数は増加していた。しかし電子顕微鏡による超微形態観察では、血液空気関門は肥厚したままであり回復期に認めた血管は未熟な血管増生と考えられた。血管再生のための予備実験として、血管新生・形成に重要な役割を持つ因子であるAngiopoietin-1(Ang-1)投与が、これらの異常を改善させると考え、高濃度酸素離脱後にAng-1を腹腔内投与し、回復期14日目にその肺胞構造と微小血管を評価したところ、Ang-1投与群では、肺胞壁の肥厚の改善と微小血管構造の改善を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定通り進んでいるが、今後、得られた各グループ間における組織学的所見および免疫染色結果の確証を得るためにも、個体数を一定数に増やして定量化する必要があると考える。我々は新生仔マウス肺に気管カニューラを用いて固定液を注入して拡張させ、その状態で組織固定を行っているが、高度な技術を必要とすること、また実験対象として新生仔マウスを用いているが、モデル肺を得るのに3週間の期間が必要であること、また母マウスのNursing Careも個体数獲得のために重要な要素であるため、技術面、実験動物飼育の環境面での改善も今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高濃度酸素肺障害モデルマウスを用いた肺胞構造および肺胞微小循環系障害の3次元的解析評価: 前年度で得られたデータを確証するため正常発達群および高濃度酸素投与群の個体数を増やし、電子顕微鏡による超微形態評価を含めた組織学的手法、レクチン灌流法と合わせて各種マーカー(CD31、aSMAなど)を用いた免疫組織学的手法を駆使して、肺胞および肺胞微小循環系のデータを蓄積し、形態計測による解析および定量化を行う。 2.回復過程における血液空気関門構成細胞、筋上皮細胞の動向および、肺胞再生必須条件の解明: 回復群の個体数を増やし、上記同様の方法を用いて形態計測による解析および定量化を行い、データを確証する。また正常発達群、高濃度酸素投与群、回復群の肺組織からRNAを抽出しマイクロアレイ解析を行い、各群間で発現に差を認めたシグナル経路を検索し、血管再生、増殖因子などをキーワードに肺胞微小循環系の再生、血管構築に関わるシグナル経路をこれまでの文献報告を参考に絞り込む。 3.各シグナルの修飾による治療モデルの制作 マイクロアレイ解析により血管構築に関わる血管内皮増殖因子などを絞り込むことができれば、特異抗体を用いたウェスタンブロット法、またはこれら特異的プライマーを用いたPCRなどの分子生物学的手法により、タンパクレベル、遺伝子レベルでその発現を集約的に解析し、そのシグナル経路を促進または阻害する薬物投与の介入により正常肺胞発達が可能であるかを検討する。血管再生のための予備実験としてAngiopoietin-1投与による肺胞微小循環系障害に対する効果の検討では、個体数は少ないものの肺胞壁肥厚の改善と微小血管構造の改善を認めており、引き続きデータを蓄積しその効果を確証する。 以上の計画を遂行し、結果を総括し、今後は動物モデルからヒトへのトランスレーショナルリサーチへと発展させて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、電子顕微鏡を用いた微細構造レベルの解析が重要な位置を占める。また検索の過程においては、肺胞壁を構成する細胞群を明らかにするために、それらの可視化のための抗体をはじめとした試薬類が必須である。具体的な消耗品費としては、実験用動物( ICRマウス)の購入費および飼育費、試薬類には、培養用血清、免疫染色用の抗体、分子組織化学用の制限酵素、プローブ標識キット、標的遺伝子プライマー、PCR用試薬、電子顕微鏡用には、樹脂包埋キット、超薄用ダイヤモンドナイフ、画像解析用のコンピューター関連品、また、プラスティック器具類、論文別刷代などの諸費用が含まれる。 その他、学外研究者との情報交換のための旅費、ならびに成果発表のための学会参加費などの旅費( 国内外を含む)、印刷費( カラー印刷)、論文投稿費用などが経費に含まれる。 今回、次年度繰越金が発生したが、必要でなかったからではなく、次年度における上記消耗品およびその他での使用を見越したものであり、次年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)