2013 Fiscal Year Research-status Report
後障害なき生存を目指して~新生児期肺障害モデルにおける肺胞微小循環系の再生の試み
Project/Area Number |
24591613
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中西 秀彦 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70528207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40510235)
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Keywords | 慢性肺疾患 / 肺胞微小循環 / 早産児 / 血管再生 |
Research Abstract |
本研究目標は、早産児の慢性肺疾患における肺胞微小循環系の変化に焦点を当て、高濃度酸素による肺胞および肺胞微小循環系の障害およびその再生過程の変化を多重免疫染色法やレクチン静脈注入法などを駆使して解析を行い、その異常部位や変化の過程を解明し、将来的にその障害に関わるシグナル伝達を特異的に阻害する治療戦略の糸口をつかむことである。 昨年度の研究では高濃度酸素投与により肺胞および肺胞微小循環系の障害とその回復期における構造変化について組織学的、免疫組織学的に検討したが、本年度は、これら障害および回復過程に関わる遺伝子発現の変化を検討するため、高濃度酸素投与発達期マウス肺障害モデルを用いて、正常発達群(Air-14d、Air-21d)、高濃度酸素投与14日群(O2-14d)、回復期群(O2-Air-21d)それぞれにおける肺組織からRNAを抽出し、血管新生・形成に重要な役割を持つ遺伝子を中心に、マイクロアレイにより網羅的に解析した。 その結果、高濃度酸素投与群と正常発達群と比較して発現比の絶対値が2.0以上であった遺伝子群(|O2-14d/Air-14d|> 2.0)は、成長により変化すると思われる遺伝子(|Air-21d/Air-14d|> 2.0)を除外しても1529個同定され、本障害モデルでは多くのPathwayが関与していることが示唆された。さらにその後の回復過程で発現比に変化があった遺伝子群(|O2-Air-21d/O2-14d|>2.0)は773個が同定された。その中から、血管新生、発達に関わる遺伝子として、Ang-1、Endothelin-1、Placental Growth factorなどが抽出された。Ang-1の遺伝子発現は、我々の発達期肺障害モデルでは低下していたとからも、Ang1は肺胞微小循環系障害に対する新しい治療戦略となることを裏づける結果となった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定通り進んでいるが、今後、得られた各グループ間における組織学的所見および免疫染色結果の確証を得るためにも、個体数を一定数に増やして定量化する必要があると考える。またマイクロアレイ解析により、発達における肺障害モデルおよびその回復過程における関連遺伝子の抽出を実行できたことは大きな成果であるが、多くの遺伝子が関与しているため、その解釈、関連性については、これまでの文献報告などから、慎重に進める必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高濃度酸肺障害モデルマウスを用いた肺胞構造および肺胞微小循環系障害の3次元的解析評価: 正常発達群および高濃度酸素投与群の個体数を増やし、電子顕微鏡による超微形態評価を含めた組織学的手法、各種マーカー(CD31、aSMA、Pro-SPCなど)を用いた免疫組織学的手法を駆使して、肺胞および肺胞微小循環系のデータを蓄積し、形態計測による解析および定量化を行う。血管再生のための予備実験としてAngiopoietin-1投与による肺胞微小循環系障害に対する効果の検討では、肺胞壁肥厚の改善と微小血管構造の改善を認めたが、個体数が少ないため引き続きデータを蓄積し、各パラメーターの定量化により確証を得たい。 2.回復過程における血液空気関門構成細胞、筋上皮細胞の動向および、肺胞再生必須条件の解明: 慢性肺疾患では回復期であってもその後肺高血圧へと進行する場合があり、本モデルを用いて回復期における肺胞微小循環系の変化として、肺動脈周囲の血管平滑筋の肥厚などの構造変化にも注目し、上記マーカー用いて免疫組織染色により定量化したい。また高濃度酸素暴露による肺胞壁内の細胞数の減少および回復期におけるそれら上昇が骨髄由来の細胞によるものか肺胞由来の細胞によるものか、今後、本研究が再生医療につながるためにも免疫組織学的および分子生物学的に細胞活動評価を行いたい。 3.マイクロアレイ解析で障害および修復過程に関わると考えられる遺伝子群の解析: 網羅的解析により抽出された血管の再生、構築に関わると考えられる遺伝子として、Ang-1とPGFについては、特異抗体を用いたウェスタンブロット法、またはこれら特異的プライマーを用いたPCRなどの分子生物学的手法により、タンパクレベル、遺伝子レベルでその発現を集約的に解析し、そのシグナル経路を促進または阻害する薬物投与の介入により正常肺胞発達が可能であるかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回、次年度繰越金が発生したが、必要でなかったからではなく、次年度における上記消耗品およびその他での使用を見越して必要になると考えたからである。 実験に必要な設備備品は全て、本学総合研究所または当教室に既存のものを用いる。実験用動物(ICRマウス)の購入費、飼育費、組織再生のための3要素である細胞(ヒト血管内皮細胞など)、成長因子(Ang1など)、は非常に高価なため、研究費の半分以上を占め る。消耗品費としては、試薬類には、培養用血清、免疫染色用の抗体、分子組織化学用の制限酵素、プローブ標識キット、電子顕微鏡用には、樹脂包埋キット、超薄用ダイヤモンドナイフ、画像解析用のコンピューター関連品、また、プラスティック器具類、論文別刷代などの諸費用が含まれる。さらに学外研究者との情報交換のための旅費、ならびに成果発表のための学会参加費などの旅費(国内外を含む)なども含まれる。そのほかでは印刷費(カラー印刷)、論文校正・投稿費用などが主なものである。
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Research Products
(3 results)