2014 Fiscal Year Research-status Report
後障害なき生存を目指して~新生児期肺障害モデルにおける肺胞微小循環系の再生の試み
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24591613
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中西 秀彦 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70528207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40510235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性肺疾患 / 早産児 / 肺高血圧 / Angiopoietin-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、早産児慢性肺疾患において重要な合併症である肺高血圧(CLD-PH)に注目し、高濃度酸素投与新生仔肺障害モデルを用いて、高濃度酸素暴露およびその回復過程における細気管支レベルでの肺動脈の中膜および外膜肥厚を形態学的に評価し、肺動脈Remodelingへの影響について検討した。また血管新生・形成において重要な役割を果たすAng-1投与が肺動脈Remodelingに対してどのような効果をもたらすかを検討した。ICRマウスを生直後より85%酸素(O2)またはルームエア(Air)下に14日間暴露させた後、回復期としてAir下にさらに7日間飼育した。Air2群(Air-14d、21d)、高濃度酸素14日群(O2-14d)、高濃度酸素回復群(O2-Air-21d)の計4群のHE染色肺組織を用いて、細気管支レベルの肺動脈の中膜(MT)、外膜(AT)、中膜+外膜(WT)を計測し、動脈径(ED)に対する比率(MT%、AT%、WT%)より肺動脈肥厚の程度を定量化した。また酸素離脱直後(日齢14)と日齢17にAng-1を腹腔内投与したAng-1投与群(O2-Air-21d-Ang-1)についても同様の検討を行い、Ang-1投与による肺動脈リモデリング効果を検討した。その結果、O2-14dではAir-14dと比較して、MT%、AT%、WT%は有意に高く、肺動脈は肥厚していた。またO2-Air-21dは、O2-14dと比較して上記パラメータに有意差を認めなかったことから、高濃度酸素投与により出現した発達期の肺動脈肥厚は、長期にわたり遷延することが示唆された。一方、O2-Air-21d-Ang-1では、 O2-Air-21dと比較して上記パラメータは有意に低下しており、部分的に肺動脈肥厚が改善していた。今回のモデルは、ヒトCLD-PHにおける肺動脈病変の自然経過を示唆するものであり、発達期肺障害に関わる多くのシグナル経路の中で、Ang1は、CLD-PHに対しても新しい治療戦略となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間3年の最終年度であったが、補助事業期間の延長願いを提出し、1年の研究期間延長の承認を得ている。本研究の主要テーマである肺胞微小循環動態の解明には、血管内皮細胞をマーカーとする免疫組織染色だけでは、染色パターンの違いを観察しているにすぎないため、実際の血管内皮細胞の異常を捉えるには電子顕微鏡を用いた超微形態の評価が重要であると考えている。そのためのモデルを再度作成し、超微形態の再評価を施行する予定である。また肺胞微小循環系障害によって引き起こされる重篤な合併症である肺高血圧の評価のためには、右心系の指標である右室心筋重量/心室中隔+左室心筋重量の計測や、特異抗体を用いて血管平滑筋およびエラスチン蛋白の免疫組織学的評価を行うことが必要と考えており、追加実験を行う予定である。回復過程における微小血管構造の変化についてさらなる検討を行い、これまでに施行したマイクロアレイ解析から抽出した関連遺伝子の発現結果と合わせて、次年度に論文投稿をする予定とし、未使用額は追加実験用の動物や試薬の購入および論文投稿経費に充てることとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.電子顕微鏡による肺胞および肺胞微小循環系の超微形態評価: これまで高濃度酸素投与により肺胞血液空気関門が肥厚し、回復期においても肥厚が遷延することを報告したが、血管内皮細胞自体の形態評価を詳細には行っていなかった。そこで免疫染色だけではわからない血管内皮細胞の変化を正常コントロールと比較して、超微形態で捉えたいと考えている。また肺胞Ⅱ型上皮細胞が回復期に増加していることが免疫組織染色で確認されたことから、この増加の意義を解明するために超微形態観察を行い、細胞内におけるラメラ封入帯の有無などから成熟細胞と未熟細胞の鑑別を行ったり、血管内皮細胞と肺胞上皮細胞の相互作用について形態学的に評価する予定である。 2.高濃度酸素投与およびその回復期における肺動脈リモデリング効果の検討: 慢性肺疾患では重篤な合併症として肺高血圧へと進行する場合がある。そのための評価として肺動脈周囲の血管平滑筋の肥厚について定量化を行ったが、その結果だけでは評価は不十分であり、追加実験により右心系の指標である右室心筋重量/心室中隔+左室心筋重量の計測や、特異抗体を用いて血管平滑筋およびエラスチン蛋白の免疫組織学的評価、定量化を行うことを予定している。 3.Ang-1投与効果の検討:これまで肺胞発達のパラメータ(mean linear intercept、%Alveolar volume density、肺胞中隔数など)を用いて組織学的形態評価を行い、Ang-1投与は肺胞構造を改善する可能性があることを報告したが、肺動脈リモデリング、肺胞微小循環の超微形態、肺胞Ⅱ型上皮細胞に対する効果については詳細に検証していなかったため、本年度は追加実験を行い、評価検討する予定である。この介入は回復期における血管再生医療につながる可能性がある。 以上の計画を、今年度までに実施、解析し、平成28年3月までに全ての結果を総括する。
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Causes of Carryover |
新生仔マウスを用いて高濃度酸素投与およびその回復期における肺胞微小血管の形態解析の一つとして細気管支レベルでの肺動脈の中膜、外膜肥厚を組織学的に定量化し、肺動脈リモデリング効果を検討したが、肺高血圧の評価として右心系の計測がなされていなかったこと、またそこに関わる血管成長に関与するシグナルの解析が十分に行われていなかったため、論文に投稿することができず未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験により右心系の指標である右室心筋重量/心室中隔+左室心筋重量の計測や、特異抗体を用いて血管平滑筋およびエラスチン蛋白の免疫組織学的評価を行うことで、回復過程における微小血管構造の変化についてさらなる検討を行い、前年度に施行したマイクロアレイ解析から抽出した関連遺伝子の発現結果と合わせて、次年度に論文投稿をする予定とし、未使用額は追加実験用の動物や試薬の購入および論文投稿経費に充てることとしたい。
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Research Products
(4 results)