2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591614
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
高屋 淳二 関西医科大学, 医学部, 講師 (80247923)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / カルシウム / ラット / グルココルチコイド |
Research Abstract |
カルシウム(Ca)欠乏がグルココルチコイド作用にどのような影響を及ぼすかを明らかにする目的で以下の検討を行った。 【方法】カルシウム欠乏(低Ca群)ラットとして、Wistar系雌性ラット10個体(12週齢)にCa濃度を0.008%に調整したCa欠乏食14日間飼育したものを用いた。対照10個体には、AIN93G に準拠した飼料を与えた。飼料、飲水量はともに自由摂取とした。肝臓からmRNAを抽出し、グルココルチコイド受容体(GR)、11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1 (11β-HSD1), 11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2 (11β-HSD2), peroxisome proliferators activated receptor α (PPARα), phosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK) のmRNA特異的プライマー対を用いてリアルタイムPCRを行った。内部標準として GAPDH-RNA も測定し、各mRNA量を補正した。 【結果】2群の血圧に有意差はなかった。低Ca群でアディポネクチンが有意に低下した。低Ca群で11β-HSD1が上昇し、PEPCKのmRNAは対照に比べて有意に低下した。しかし、GR、PPARαと11β-HSD2のmRNAの発現には両群に差は認めなかった。 【結論】低Ca食では11β-HSD1が上昇してグルココルチコイドを活性化し、メタボリックシンドロームの誘因となると考えられた。またインスリンが上昇することにより、糖新生の律速酵素であるPEPCKが低下して、代償性に糖新生を抑制していると思われた。以上より、Ca欠乏によるグルココルチコイド代謝の変化は、メタボリックシンドローム発症の重要な一因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウム欠乏食によって、母ラットが実際にインスリン抵抗性を獲得し、肝臓におけるグルココルチコイドに関連する遺伝子の発現に影響するかをプレリミナリーな実験を実施した。母獣において、2週間という短期間であっても強度の低Ca食では11β-HSD1が上昇してグルココルチコイドを活性化し、メタボリックシンドロームの誘因となることが確認できた。ついで母獣から出生した仔(F1)について、グルココルチコイド関連遺伝子のエピジェネティック変化を検討する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
低カルシウム食を与えた母獣から生まれた仔ラットと、正常対照から生まれた仔ラットを生後1日から、お互いの親を入れ替えて里親に育てられる群と、そのままのオリジナルの母親に育てられる群の、計4群をつくり、さらに雄雌を区別して、生後100日まで育てる。体重、血圧を測定した後に屠殺して血清と肝臓を採取して凍結保存する。仔から採血した血液は、血清分離後保存し、後日コルチゾールやアディポサイトカインをELISA法で測定する。肝臓からDNAを抽出して、オリジナルの母親に育てられた仔と里親に育てられた仔のメチル化を比較する。さらに次世代(F1, F2)にわたってメチル化の変化が継代し、この表現型が引き継がれることを明らかにする。平成24年度のラットの研究をさらに遂行して、次世代(F1, F2)にわたってメチル化の変化と、表現型(血圧やインスリン抵抗性、脂肪の分布状況など)との関係を明らかにする。統計処理に必要な例数、胎児期低マグネシウム群、授乳期マグネシウム補充群、各対照群(少なくとも各群 n=12)を集める。 動物実験では妊娠中にたとえ低栄養であっても、母獣に葉酸やビタミンB群を投与すると、エピジェネティクス変化から仔の形質発現を変える報告がみられる。「胎児期に不足したカチオンを補充ないしは正常母獣に育てられることにより、将来のインスリン抵抗性がリセットされる」ことを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物飼育に必要な飼料、ケージ維持費用を計上した。実験に使用するプラスチック器具代、および血清イオン測定装置のリンス溶液を消耗品として計上する。ラット血清のアディポサイトカインをラット特異ELISAキットにて測定するため、キット購入費用を計上する。メチル化に変化があると予想される候補遺伝子について、委託業者に依頼してDNAメチル化を測定する。そのために委託費を計上した。日本小児科学会と関連学会で成果を発表するため、その旅費を計上した。また、代謝・栄養学領域の国際学術雑誌にて発表予定であるため、誌上発表するための経費として外国語論文校閲費を予算に計上した。 これらを本研究費補助金から支出することは、関連法規などに照らして、十分妥当であると考えます。各項目の金額については、これまでに行った類似の研究で必要になった経費を基準として算定しました。
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Research Products
(7 results)