2012 Fiscal Year Research-status Report
高感度質量分析法による皮膚疾患バイオマーカーの網羅的探索
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24591628
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橋本 公二 愛媛大学, 先端研究・学術推進機構学術企画室, 特命教授 (00110784)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオマーカー / 尋常性乾癬 / アトピー性皮膚炎 / プロテオミクス解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、尋常性乾癬の新たなバイオマーカーを、高感度質量分析法を用いて網羅的に検索し、乾癬の診断、重症度、薬剤の効果判定に用いることである。同様のストラテジーで湿疹の代表的疾患であるアトピー性皮膚炎においてもバイオマーカー探索を行い、診断、重症度、薬剤の効果判定に有用であることを示す。 本年度は書面にて同意の得られた患者さんから血液を3ml採取し、血清分離後凍結保存を行った。同時に尿も回収し(3ml)凍結保存した。対照として健常人のサンプルの収集を開始した。目標症例各疾患50例、正常人50例のうち約10例ずつサンプルを回収できた。 安定同位体で標識した各疾患特異的ヒトタンパク質ライブラリーの構築 コムギ胚芽インビトロタンパク質合成技術を用いて、同位体標識タンパク質ライブラリーの作成を行った。膜貫通型タンパク質の合成には、リポソームを利用する無細胞タンパク質合成技術を用い、同位体標識タンパク質の作成には、安定同位体で標識したL-アミノ酸リジン(L-Lys-13C615N2)とアルギニン(L-Arg-13C615N4)を使用した。全ての合成タンパク質はTIPsタグにより濃度を500 fmol/μlに補正した後、低吸着マイクロチューブへ分注し、内部標準用試料として-80度で保存・管理を行った。SIRPL基本ライブラリー用合成候補としてインターロイキンおよびその受容体、インターフェロンおよびその受容体、ケモカインおよびその受容体、その他のサイトカインおよびその受容体、造血因子およびその受容体、細胞傷害因子およびその受容体、細胞増殖因子およびその受容体、ADAMメタロプロテアーゼ、MT-MMPおよびMMPメタロプロテアーゼとその阻害因子TIMP、オーファン受容体も含む各種GPCR、 細胞外マトリックス、がん遺伝子、がん抑制遺伝子など約800種類を合成を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ゲノムベース同位体標識タンパク質ライブラリーと高感度質量分析法を組み合わせた、独自の絶対定量プロテオーム解析システムを用いて、尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎が作り出す特異的な病態環境のプロテオーム動態を計測し、疾患の進行をタンパク質レベルで正確にモニタリングできるバイオマーカーを探索、確立することを目指している。研究の進行は、血清、尿を用いた解析(マイクログラムレベル)から得られた網羅的発現プロファイル情報に基づいて、各疾患関連タンパク質に特化した高感度モニタリングシステムを確立し、さらに末梢血、尿や微量生検試料からの各疾患マーカー検出を目的とするin vivo絶対定量解析技術の開発(フェムトグラムレベル)へと段階的に進める。本研究では疾患群でのサンプル収集とプロテオミクスを用いた高感度絶対定量のためのライブラリーの確立が必須であり、当初の目標であるサンプル収集は軌道に乗っており、またライブラリーの作製も順調に行えている。以上のことから研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
PTPデータベースの構築:質量分析用試料の前処理として、現在プロテオーム解析に使用している標準プロトコルに従って、ライブラリー化した膜貫通型タンパク質のトリプシン処理を行う。この処理により、C末端側に必ず13C615N2標識Lys残基もしくは13C615N4標識Arg残基を含むペプチド断片のみが質量分析時に検出される。回収したトリプシン消化物を対象にして、PMF解析を行い、各消化ペプチド断片のイオン化効率を測定し、各タンパク質に固有のPTP配列を決定する。さらに消化ペプチド試料を用いて、タンデム質量分析(MS/MS)によるフラグメントイオン情報の収集を行う。以上の解析により得られた各種質量分析情報(PMF解析から決定したPTP配列情報や、MS/MSによるフラグメントプロファイルなど)に基づいてPTPデータベースの構築を行う。 相対的定量プロテオミクスによる疾患特異的タンパク質の同定:同位体標識タンパク質ライブラリー(炎症SIRPL、代謝SIRPL)を用いてまずはICAT(Isotope coded affinity tag)法を用いて疾患特異的タンパクを網羅的に解析する。尋常性乾癬患者、アトピー性皮膚炎患者において検索し、疾患群で増加しているタンパクについて検索する。 研究が順調にすすめば、ICAT法を用いて候補となった疾患特異的タンパクをさらに正確に解析するために、そのタンパクについてAbsolute SILAC法にて絶対タンパク量を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
タンパク質解析用試薬として約40万円、プラスチック器具として約30万円、成果発表並びに資料収集旅費として60万円程度を計画している。
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Research Products
(3 results)