2013 Fiscal Year Research-status Report
沖縄に多発する頭部血管肉腫の発症に関与する病因ウイルス・外来遺伝子断片の探索
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24591631
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高橋 健造 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291425)
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Keywords | 血管肉腫 / ウイルス発癌 / トランスクリプトーム解析 / サブトラクション |
Research Abstract |
沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。この腫瘍は高齢者の額部・頭部に小さな紫斑・出血斑として発症し、急速に結節化・潰瘍化し顔貌を破壊し、肺出血による死に至る悪性度が極めて高い原因不明の腫瘍である。 真皮の微小血管を発生母地とする腫瘍にはカポシ肉腫とこの血管肉腫が挙げられるが、両腫瘍とも沖縄・宮古島地方には非常に高率に発症する。近年のHIV依存性のカポシ肉腫にせよ、沖縄県に多い高齢者の古典型のカポシ肉腫にせよ、カポシ肉腫各型の発症にはヒトヘルペス8型(HHV8)ウイルスの関与が知られている。 この偏った地域発症性と、高齢者に多中心的に急速に発症する経過より、今回の研究対象である血管肉腫の発症にも、HHV8以外の直接寄与する発癌ウイルスの存在を強く考える。本課題では、琉球大学に数多い血管肉腫患者や疾患コントロールとしてのカポシ肉腫の組織を用い、ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法、サブトラクションライブラリーのランダムcDNAスクリーニング、クロスPCRハイブリ法などの手法を駆使して、血管肉腫患者の組織に共通して存在する、既知あるいは未知のウイルス遺伝子や外来遺伝子断片の存在を明らかにするのが一義的な目標である。 また診断的な面からも、このような血管肉腫に共通した遺伝子断片、さらには発現蛋白・特異蛋白の存在を見いだすことで、初期においてはしばしば病理診断に苦慮する血管肉腫の診断が、より迅速に確実に断定的に可能になるかと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、8種のヒトヘルペスウイルス遺伝子や、数十種類以上の動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、イノシン残基を組み込み、アニール温度を数段階に調節することで、既知のヘルペスウイルスファミリーは全て増幅しえる遺伝子プラ-マーの組み合わせを数カ所に設定し、血管肉腫患者組織のDNAをテンプレートとして、PCR増幅を多様なアニール温度で試みた。しかし、ヘルペス群、あるいは新規のウイルスと思われる遺伝子配列の増幅は全く生じなかった。増幅される遺伝子群は全てヒトゲノムの遺伝子配列が僅かな相動性の元に増幅された結果であった。この解析より血管肉腫の原因ウイルスとして既知のヘルペス群に近い外来病原体の可能性は低いと考えた。 次に、改良したゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法などの手法による病原ウイルスの探索を開始した。 熱処理後にアニールしストレプトアビジンで沈降、上清のビオチンラベルされないDNA分画を回収するという手法を数回繰り返す。最終的に残存するDNA分画は非常に微量となり、そのままでのライブラリー化は困難であると考えられる。サブトラクトされたDNA断片に均一性の高いPCR増幅をかけ、通常のプラスミドベクターにサブクローンしランダムで配列を決定する。現在、直示、サブトラクションライブラリーで選択された遺伝子断片について、その遺伝子配列を決定し、ヒトのゲノムに含まれない遺伝子断片を探索している。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムとcDNAでのサブトラクションにより得られた遺伝子断片の性質を、逐次Sanger法による遺伝子シークエンスの決定によりヒトゲノム以外の遺伝子断片の探索を続ける。 さらにサブトラクションスクリーニングでも遺伝子断片が得られなかった場合は、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を数症例に対して行い、得られたデータをヒトゲノムの遺伝子情報により引き算し、ヒトゲノム以外に患者血管肉腫組織において、発現する遺伝子断片を網羅的に探索する。 またこのトランスクリプトーム解析を、血管肉腫、カポシ肉腫、正常ヒト培養血管内皮細胞(HUVEC)の組織、細胞より抽出したRNAに対して行うことで、血管肉腫・カポシ肉腫さらに正常ヒト培養血管内皮細胞の高度悪性、中等度悪性、正常の3種の血管内皮細胞に関して、遺伝子発現の変化を追跡する。真皮の微小血管が悪性化していく過程で、活性化されていく遺伝子群の単離・グループ化を行い、その腫瘍化ステップに必須の遺伝子発現のプロファイルを決定する副次的な目標があり、さらに、将来的に血管肉腫への免疫療法などへの治療手段の波及として、血管肉腫の腫瘍抗原の探索にも応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。対象となる稀な血管肉腫の手術時の余剰組織よりRNAやDNAを抽出し、ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法により、血管肉腫患者の組織に共通して存在する、既知あるいは未知のウイルス遺伝子や外来遺伝子断片の存在をスクリーニングする。 平成25年度は、このスクリーニングライブライリーを作製し、最終的な大規模シークエンスを始める前のライブラリーの検定を行った。またサブトラクションが機能しないときのための、次世代シークエンサーによる解析のための標本の集積を行っている。これら集積した標本を平成26年度に一括して解析進める予定であった。 ゲノムとcDNAでのサブトラクションにより得られた遺伝子断片の性質を、逐次Sanger法による遺伝子シークエンスの決定によりヒトゲノム以外の遺伝子断片の探索を続ける。さらにサブトラクションスクリーニングでも遺伝子断片が得られなかった場合は、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を数症例に対して行い、得られたデータをヒトゲノムの遺伝子情報により引き算し、ヒトゲノム以外に患者血管肉腫組織において、発現する遺伝子断片を網羅的に探索する。またこのトランスクリプトーム解析を、血管肉腫、カポシ肉腫、正常ヒト培養血管内皮細胞の組織、細胞より抽出したRNAに対して行うことで、血管肉腫・カポシ肉腫さらに正常ヒト培養血管内皮細胞の高度悪性、中等度悪性、正常の3種の血管内皮細胞に関して、遺伝子発現の変化を追跡する。真皮の微小血管が悪性化していく過程で、活性化されていく遺伝子群の単離・グループ化を行う。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] CD8+ tumor-infiltrating lymphocytes at primary sites as a possible prognostic factor of cutaneous angiosarcoma2014
Author(s)
Fujii H, Arakawa A, Utsumi D, Sumiyoshi S, Yamamoto Y, Kitoh A, Ono M, Matsumura Y, Kato M, Konishi K, Shiga T, Sano S, Sakaguchi S, Miyagawa-Hayashino A, Takahashi K, Uezato H, Miyachi Y, Tanioka M.
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Journal Title
Int J Cancer
Volume: 134
Pages: 2393-2402
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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