2012 Fiscal Year Research-status Report
皮膚バリア関連200遺伝子の網羅的解読による新規アトピー性皮膚炎原因遺伝子の同定
Project/Area Number |
24591665
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 貴史 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (70306843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (70335256)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / エキソーム / ターゲットリシーケンシング |
Research Abstract |
本研究課題は、①これまでに皮膚形成に関与していると報告されている遺伝子②上皮顆粒層に高発現遺伝子の中から200遺伝子を対象とした次世代DNAシーケンサーを用いて安価・迅速に解読する方法を開発し、慶應義塾大学医学部皮膚科学教室で収集した日本人AD患者のDNA解析により、新規AD原因遺伝子の同定を目指している。 初年度である平成24年度では、Haloplexターゲットエンリッチシステムを用いて345遺伝子を次世代DNAシーケンサーで解読した。結果が早く得られた事から、平成25年度に予定していた解読結果のコンピューター解析法の確立を行った。その結果、5種のプログラムを用いて変異同定を行う方法を確立した。この方法を用いてAD患者6人の解析を行い、20カ所のミスセンス変異を同定した。平成25年度は、次世代DNAシーケンサーの1Runあたりの解読容量が増加した事から約600遺伝子を解読する方法を確立し20~30人を対象として解析を行う予定である。 同定された遺伝子変異は、これまでに報告されているかどうか1000人ゲノム計画データなどと照らし合わせ、また、これまでのゲノムワイド関連解析によって関連が報告されていないかなど解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度の検討項目のうち、1.皮膚バリア関連200遺伝子の抽出とPCR primer作成、2.Exon PCR-multiplex sequencing法の開発200遺伝子のDNAシーケンシング解析方法の確立は、平成24年5月にAgilent株式会社から発売されたHaloplexターゲットエンリッチメントシステムを使う事で皮膚バリア関連345遺伝子の解読が可能となった。この方法を用いてアトピー性皮膚炎患者6人から、345遺伝子のコーディング領域のエンリッチメントを行いmiSeq DNAシーケンサーを用いて解読した。解読結果解析は、①cutadaptプログラムによる末端アダプター除去、②Bowtie2プログラムによるヒトゲノム参照配列(hg19)へのマッピング、③samtoolsプログラムによるbamファイルの作成、④GATKプログラムによる多型抽出と既知多型のアノテーション、⑤snpEFFプログラムによる多型のアミノ酸配列への変換、⑥SIFTプログラムによる置換影響度の推定、を行う解析系を構築した。その結果、6人から20ヶ所の未知アミノ酸ミスセンス変異を同定し、ナンセンス変異、フレームシフト変異、エキソンーイントロン境界変異は同定されなかった。この変異数は一人当たり平均3.3変異であり、全遺伝子数を23000として外挿すると222変異に相当する。現在の全エキソーム解析から200~300変異がえられる事から、妥当な数字だと考えられる。ミスセンス変異が同定された遺伝子のうち、IL10RA及びLORは二人以上で同一遺伝子内に異なる遺伝子変異を同定した。 これらのことから、初年度に予定した①皮膚バリア関連遺伝子の抽出(200から345遺伝子へ変更)②ライブラリー作成及び解析方法の検討③10でのトライアルの目標をほぼ達成し、平成25年度に予定していた解析方法の確立も終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代DNAシーケンサー解読容量の増加により、適度なコストで一人当たり約600遺伝子の解読が可能となると予想される事から、皮膚バリア関連遺伝子数を600に増やし解析系を確立する。今回の345遺伝子解析では、約200遺伝子の皮膚バリア関連遺伝子に加え、約100遺伝子の免疫関連の遺伝子の解析を行った。得られたミスセンス変異のうち、約半分が免疫に関与していたから、今回行った範囲では、バリア関連遺伝子より免疫関連遺伝子に多くのミスセンス変異が同定された。そこで、新たに解析対象遺伝子数に加える遺伝子は、皮膚バリア関連遺伝子だけでなく免疫関連遺伝子も加え、これらの関連遺伝子を同時に解析する予定である。 同定された遺伝子変異は、1000人ゲノム計画データと照らし合わせ、これまでに報告されているかどうか、また、これまでのゲノムワイド関連解析によって関連が報告されていないかなど評価をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究結果により約600遺伝子の解析法にめどのついた事から、平成25年度は次世代DNAシーケンサー消耗品を中心に研究費を使用する予定である。また、遺伝子変異解析にあたっては、これまでの遺伝子変異情報や最新の情報が重要な事から、今年度は学会などでの情報収集を行い、その結果を解析に反映させる。現在使用しているコンピューターでは、解析に1人当たり1日必要である。対象遺伝子が増える事から、演算時間がさらに増える事が予想される。更なる解析を行うためにはスペックの高いコンピューターが必要となるが、要求するスペックを満たすコンピューターは非常に高価なため、大学内外で高度な演算能力を有するコンピューターを使う事が可能か、支出と見合う結果が得られるかどうか検討を行う。
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