2012 Fiscal Year Research-status Report
SSRIの抗不安作用における扁桃体5-HT神経系の役割
Project/Area Number |
24591674
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉 剛 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60312360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 隆行 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60374229)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 精神薬理学 / 不安 |
Research Abstract |
(1) ラットの文脈的恐怖条件付けの発現に対して、SSRIであるシタロプラムを両側扁桃体基底核に局所投与し、不安行動であるfreezingが抑制されるかどうかを検討した。シタロプラムの投与量は、0.03、0.3および3μg/siteを用いた。その結果、シタロプラムの局所投与はfreezingを用量依存的に抑制し、0.3および3μg/siteの用量で有意な差となった。これにより、SSRIは「記憶に依存する不安を抑制する」という、先行研究において全身投与で得られていた所見を確認する結果が得られた。さらにこの結果は、SSRIの抗不安作用の作用部位が扁桃体基底核であることを強く示唆する所見であると考えられた。 (2) ラット扁桃体基底核のスライスで、パッチ・クランプ法によるwhole cell記録を行い、current clampモードで各種の電気生理学的指標の記録を行った。記録終了後に細胞質を吸引し、単一細胞PCRによって、グルタミン酸ニューロンのmarkerであるVGLUT1、GABAニューロンのmarkerであるGAD67、および5-HT1A受容体のmRNAを測定した。その結果、記録されたニューロンの約8割がグルタミン酸ニューロンであり、約2割がGABAニューロンであった。また、5-HT1A受容体mRNA を有するニューロンは、記録された細胞全体の約1割であった。細胞の分布構成および5-HT1A受容体を有する細胞の割合は、解剖学的な検討を行った先行研究の結果とほぼ一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動実験においては、「扁桃体基底核へのSSRIへの投与が抗不安作用をもたらす」という先行研究の結果と一致する結果が得られ、さらに反応の用量依存性も確認され、SSRIの薬理作用である可能性が高いと考えられた。 パッチクランプ法による単一細胞PCR法は、実験技術を確立し、また記録された細胞の構成、および5-HT1A受容体mRNAを有する細胞の割合も、解剖学的手法で得られた先行研究の結果と一致した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、記憶に依存しない内因性の不安のモデルである高架式十字迷路試験に対する、SSRIの扁桃体基底核局所投与の効果を検討する。また、SSRI扁桃体基底核局所投与の効果が、5-HT1A受容体阻害薬の同時投与によってキャンセルされるかどうかを検討する。 扁桃体基底核の単一細胞PCR法については、細胞の記録数を増やし、5-HT1A受容体mRNAの存在の有無と、細胞の電気生理学的特性の間に関係があるかどうかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節減により生じた未使用額につき、デ-タを記録するための消耗品に使用する。
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