2012 Fiscal Year Research-status Report
自閉症におけるデフォルトモードネットワークの破綻とその物質的背景
Project/Area Number |
24591701
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
小俣 圭 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20508783)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 雄二郎 浜松医科大学, 医学部, 研究員 (00529464)
松本 かおり 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20447808)
尾内 康臣 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40436978)
中村 和彦 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80263911)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究内容は自閉症における安静状態の脳活動における機能的ネットワークについて検討したものである。自閉症は一般に社会的相互作用の困難、他者とのコミュニケーション能力の欠如、一つの物事への反復という特徴を持つ。症例としては、一般に身体的な不備は特になく、主に脳機能の障害であると考えられている。現段階にて自閉症が引き起こされるメカニズムは未だに不明である。そして人口の約1%が自閉症スペクトラムとして診断されている。少なくない人々がこの症例に関わっており、この症例の原因を検討することは医学的にも社会的にも意義深いものであり、その原因解明は急務であると言える。 近年では、脳内のネットワーク構造の異常ではないかと考えられてきており、本研究でもその事に注目して脳内の機能的ネットワークであるデフォルトモードネットワークについて検討している。デフォルトモードネットワークとは安静状態において働くと考えられている脳内ネットワークの事であり、自閉症者はこの領域の発達不全が疑われる。社会的な不適合はこの基礎的な脳領域の機能不全であると仮定し研究を行っており、これが明らかになることは自閉症に対して重要な知見をもたらすものである。 本年度では、健常者と自閉症者のリクルートし実験を行った。自閉症者のリクルートでは研究協力者である辻井教授の元、アスぺの会の方々に協力して頂いた。実験は機能的MRIにおける顔認知課題、MSIT課題および安静状態の実験を行い、スペクトロスコピー法では内側前頭前野、楔前部、紡錘状回における神経化学組成の計測を行った。来年度は、引き続き実験を行いデータ取得を続けながら、これらのデータ解析を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画では、今年度は被験者の選定、パイロット実験および実際のデータ取得に到達するまでが目標であった。MRI装置準備としてデータ取得における実験パラダイムの作成、実験装置のパラメータの選定、いくつかのパイロット実験を行った。実験にはいくつかの課題(顔認知課題、MSIT課題および安静状態の実験)を設定し、化学組成の計測部位(内側前頭前野、楔前部、紡錘状回)を選定した。テストを重ねた結果、パラメータ調整によりデータの質の向上を図ることが出来た。それから、基準(過剰な投薬を行っていない・煙草を吸わない等)を満たす被験者のリクルートを行い、適応する被験者の選定を行った。自閉症者には、感覚過敏や多動傾向を示す者がおり、そのためまずMRI装置における実験が可能かどうかが問題である。現在までにおいて、自閉症者のうち数人が実験への不適合にて実験参加を見合わせているが、実験は順当に進んでいると考えている。また健常者に対しても同様の基準にて選考を行い実験を進めており、データの取得は順調である。 一方で計画段階にあったPETの撮像に関しては、現在調整中にある。PETはラジオアイソトープを用いるためサイクロトロン設備を必要とする。現在、研究協力先である浜松ホトニクスの設備の貸与の調整下にあり、PETの撮像は保留となっている。これに関しては来年度以降の検討事項とする。
|
Strategy for Future Research Activity |
現段階までにおいて実験計画はPETの計画を除き、おおむね順調である。来年度の研究方針は計画書にあるようにデータの取得と解析である。よって随時、現在の実験を継続して行いデータの更なる取得を行う予定である。一方で、現在までに取得したデータを解析し、仮説検証を進めて行く。結果次第では再実験を検討してゆく。結果がまとまり次第学会等にて発表を行い、論文をまとめる予定である。また安静状態に関わる脳内ネットワークにおける解析は現在も解析手法が新規に開発されている分野である。既存の解析手法だけではなく、近年開発されている手法にも着手し、データを新しい側面より検討することも視野に入れる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、実験データの取得および学会での発表にかかる費用の使用を計画している。繰り越された残額は、健常ボランティアを用いたパイロット実験の謝金として使用の予定である。
|