2013 Fiscal Year Research-status Report
認知矯正療法の効果に関する神経機能画像を用いた研究
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24591712
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
兼子 幸一 鳥取大学, 医学部, 教授 (50194907)
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Keywords | 統合失調症 / 認知機能障害 / 認知リハビリテーション / 神経可塑性 / 光トポグラフィー検査 |
Research Abstract |
平成25年度も引き続き統合失調症圏の患者群に対する認知矯正療法NEARの効果を検討した。主要アウトカムは、6ヵ月間の認知矯正療法(NEAR)による介入前後の認知課題実施時の脳血液量変化である。認知課題としては、作業記憶課題である文字版 2-back課題を用い、脳機能測定には光トポグラフィー検査(Near-infrared spectroscopy, NIRS)を実施した。 ・対象:NEARの介入を受けた統合失調症圏の患者 19名(統合失調症16名、統合失調感情障害3名)、NEAR非介入群の統合失調症圏患者12名(統合失調症12名) ・結果 1)認知機能:BACS-Jで評価した。反復測定2元分散分析で、治療介入*時間、の効果を解析し、言語記憶、運動速度、注意、遂行機能、総合スコアで有意な相互作用(p:0.005~0.05)を認め、NEAR介入群で改善程度が大であった。2)脳血液量変化:2-back課題施行中の脳血液量変化においても、前頭‐側頭部の12チャネルで、治療介入*時間の有意な相互作用(p:0.02~0.05)が認められ、NEAR介入群で血液量変化の程度が大であった。これらの領域はNEAR介入後に脳血液量変化の程度が有意に増加した部位に相当した。3)認知機能の改善程度と脳血液量変化の程度の相関解析(Spearman順位相関):右上及び中側頭領域、側頭極領域で言語記憶と、右背外側前頭前野、右前頭極で語流暢機能との有意な相関をそれぞれ認めた。 ・考察 統合失調症圏にみられる認知機能障害に対するNEARは有効であり、脳血液量変化の増大という神経可塑的変化が認知機能改善の基盤に存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経認知課題の一種である作業記憶課題(2-back課題)を実施した際に光トポグラフィー検査を用いて脳血液量変化の程度を認知リハビリテーションの効果指標とする研究は「研究実績の概要」の項で述べた結果が得られた。認知矯正療法NEARが統合失調症圏の患者のに神経認知機能の改善に有効であること、かつ、その有効性の基盤として、認知機能課題施行時の脳血液量変化の増大という神経可塑生が推定される生物学的変化が存在する可能性が示唆されたことは、研究開始時点での予想と合致しており、研究の仮設を変更する必要は認めない。前述の成果をSchizophrenia Research誌に投稿し、受理された(Schizophr Res, 153:87-95, 2014)。したがって、2年間の本研究の進捗状況としては概ね順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
光トポグラフィー検査(NIRS)による脳血液量変化の測定には、1)解像度が低い、2)大脳皮質以外の皮質下領域の測定が不能である、という2つの欠陥が存在する。NIRSの欠点を補い、統合失調症圏に対するNEARの介入効果をさらに精細に検討するためには、機能的磁気共鳴画像(functional magnetic resonance imaging, fMRI)を用いた研究が必須であり、平成26年度に、統合失調症圏患者を対象に、NEAR介入群と非介入疾患対照群の2群で下記の課題に対する比較を行う予定にしている。 1)大脳皮質領域の検討: NIRSを用いた研究と同様に作業記憶課題を用いた研究で再現性を検討する。 2)内側前頭前皮質、腹側線条体、扁桃体という、動機付けに関係した神経回路の機能を習得目標(自分の成績を超える目標)、遂行目標(他者の成績を超える目標)に分けて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の被験者の数が、当初の目標よりも少なくなったため、謝金の額が100,000円程度予想を下回ることになったため。 次年度使用額は、機能的磁気共鳴画像を用いた研究の被験者に対する謝金として利用する予定にしている。
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Research Products
(2 results)