2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡部 伸幸 岡山大学, 大学病院, 助教 (70379767)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 嚥下障害 |
Research Abstract |
ほぼ、順調に研究を開始しているが、当初の計画と比較すると幾らか遅れている面もある。 初年度は、まず今までの研究概要を把握するために文献調査を行った。慢性期の統合失調症でみられる嚥下障害について、抗精神病薬投与によるサブスタンスPの低下と嚥下障害との関連を指摘した研究がみられた。ただ、抗精神病薬を中止しても続く慢性的な嚥下障害が、サブスタンスPの低下のみによって引き起こされているとは考えにくかった。症例報告としては、遅発性ジスキネジアやラビット症候群による嚥下障害例が報告されていた。ただ、それらの例では抗精神病薬の変更や抗コリン薬の追加により嚥下障害は軽快しており、嚥下障害は一時的な症候に過ぎなかった。一方、胃瘻を造設したり、長期に経鼻栄養を続けなければならない病態については、今までの文献では殆ど言及されていなかった。また、統合失調症という疾患自体が嚥下障害を引き起こしている可能性も指摘されており、病態の機序については現時点では不明と言わざるを得ないことが判明した。 さらに、平成25年度以降に実施する調査の準備として、まず、岡山大学病院の倫理委員会に研究申請を行う準備を行っている。同時に、岡山県および近県の精神科病院を対象として、本研究について、その概要を説明し、各病院の倫理委員会に、研究内容の詳細を記載した研究計画書を提出し、研究実施の申請を行う準備を進めている。また、非経口的な栄養摂取を行っている患者を持つ家族の思いを明らかにすることを目的として、家族の意向調査も実施する予定であり、その準備を進めている。家族調査は、世界的に見ても殆ど行われておらず、臨床的な意義は大きいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね順調に進展しているが、当初の計画と比較すると幾らか遅れている面もある。 高齢の統合失調症患者では、脳梗塞などの器質性病変を有していないにも関わらず、嚥下障害が増悪し肺炎など呼吸器疾患を繰り返す人は非常に多い。その結果、経鼻栄養チューブの留置や胃瘻造設による栄養管理が行われている場合も決して稀ではない。しかし、統合失調症患者における慢性的な嚥下障害の原因や病態について検討した報告は殆ど無いことを文献的な検討から明らかにした。海外の文献を渉猟しても、抗精神病薬による急性の副作用として僅かな症例報告があるのみであり、高齢者における慢性的な病態には全く注目されていない。本年度は,上記のような文献的検討を主に行った。 また、慢性の統合失調症患者における胃瘻や経鼻栄養について、その頻度や危険因子を明らかにする実態調査を行うべく(平成25年度以降)、体勢を整えている。具体的には、岡山大学病院および調査を実施する各施設において、倫理委員会への申請準備を進めている処である。さらに、非経口的な栄養摂取を行っている患者を抱えた家族の意向調査についても、実施の準備を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
岡山県の精神科病院に入院中で、非経口的な栄養摂取が行われている統合失調症患者を対象として、実態調査を行う予定である。具体的な内容としては、精神科病院に入院している、老年期の統合失調症患者を調査の対象とする。調査項目としては、その性別・年齢・発症年齢・罹病期間・診断名(ICD-10)・入院期間をまず調べる。さらに、現在の栄養摂取状況・嚥下障害の有無および程度・経鼻胃管や胃瘻の有無および使用期間、についても調査する。さらに、現在の運動機能・日常生活動作レベル・認知機能などを評価する。1例1例のカルテをすべて調査することから、かなりの時間が掛かるものと予測している。あくまでも横断的な検討によるものであり、その点では因果関係を説明できるものではないが、多数例を対象とした検討は、世界的にも殆ど行われておらず、重要な研究と考えている。 また可能であれば、非経口的な栄養摂取が行われている家族の意向調査にも取り掛かる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、現場(精神科病院や介護施設)でのカルテ調査が未実施のため、繰り越し金が生じたものである。平成25年度以降に順次、現場での調査を実施していく予定である。具体的に述べると、調査は、大学病院より調査担当者を派遣するか、或いは調査する病院や施設における医師または看護師または作業療法士などに調査を依頼する形で行う。調査担当者に対する謝礼が必要と考えており、その為の費用を予算に計上している。また、データの入力・管理を行う人を雇用するための費用も必要となる。 さらに、情報収集のための学会出張,および引き続き行われる文献調査のための文献入手費などの費用も、昨年度に引き続き使用する予定である。
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Research Products
(14 results)