2012 Fiscal Year Research-status Report
地域高齢住民におけるうつ病の実態とその危険因子の解明に関する横断・縦断研究
Project/Area Number |
24591720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小原 知之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20623630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 大悟 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (10596828)
二宮 利治 九州大学, 大学病院, 助教 (30571765)
神庭 重信 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50195187)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | うつ病 / 地域一般高齢者 / 認知症 / 時代的変化 / 危険因子 / ADL障害 |
Research Abstract |
平成24年度は、平成24年4月1日時点で福岡県久山町に在住する65歳以上の全住民2,083名を対象にうつ症状、うつ病、認知症、およびADL障害の包括的な横断調査を実施した。うつ病と認知症の調査では、2段階方式の調査法を用いた。第1段階のスクリーニング調査では、原則的に医師が各対象者を直接面接し、うつ症状の評価にはThe Geriatric Depression Scale -Short Form-Japanese (GDS-S-J)を、認知機能の評価にはMini-Mental State Examination (MMSE)、長谷川式簡易知能評価スケール改訂版 (HDS-R)、およびClinical Dementia Rating (CDR)を用いた。うつ症状や認知機能低下が疑われる者に対して2次調査を行い、Structured Clinical Interview for DSM-IV: SCIDに準じた構造化面接に加えて、家族あるいは主治医からの病歴聴取、神経・理学的所見により、臨床的なうつ症状、うつ病、および認知症の有無とその重症度を判定した。ADL障害はmodified Rankin scale、Barthel index、介護保険主治医意見書における障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)を用いて評価した。平成24年3月31日までに1,619名(男性669名、女性950名)の調査が完了した。調査期間中の転出者や死亡者を除くと、本調査の受診率は79%だった。本調査の受診率が90%を超えることを目標に、現在も調査は継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、平成24年4月1日時点で福岡県久山町に在住する65歳以上の全住民2,083名を対象に、地域一般高齢者におけるうつ症状、うつ病、認知症、およびADL障害を含む包括的な調査を実施した。地域住民における疾病の有病率を正確に把握するには、偏りの少ない集団を対象とした調査を行うことが求められる。疫学調査に参加する対象者は健康意識が高い傾向があり、受診率が低いとそのデータは母集団の実態から見かけ上健康側に傾いてしまい、疾病頻度を低く見積もる可能性がある。つまり、受診率が高くなるとこの偏りは小さくなるのだが、疫学の分野では、この偏りを無視できる受診率は70%以上とされている。本研究の受診率は既に70%を超えており、当初の計画とおり順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)平成25年度は、受診率が90%を超えることを目標に65歳以上の久山町高齢住民を対象としたうつ症状、うつ病、認知症、およびADL障害に関する横断調査を継続する。そして今回施行した横断調査のデータ整備を行い、老年期におけるうつ症状、うつ病、および認知症の有病率とADL障害の頻度について検討する。 2)平成26年度には、平成17年と平成24年に行った横断調査の結果をもとに、老年期うつ症状およびうつ病の時代的推移について検討する。また、久山町における横断調査および追跡調査の成績をもとに、老年期うつ病と認知症との関係について、これらの疾患に影響を及ぼすとされる年齢や性別などの因子を考慮した解析を行う。さらに、老年期うつ病に影響を及ぼす危険因子の探索を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)平成25年度も65歳以上の久山町高齢住民を対象としたうつ症状、うつ病、認知症、およびADL障害に関する横断調査を継続する。調査期間は4ヶ月を想定しており、調査場所は自宅、久山町のCheck & Careセンター、病院、および施設である。調査実施者は医師、保健師、および心理士であり、この調査に必要な人件費や物品費として研究費を使用する。 2)得られたデータを整理してデータセットを作成し、そのデータセットは統計解析ソフトのSASを用いて統計学的に解析する。得られた研究成果は国内学会、国際学会で発表し、英文誌に投稿する予定である。また、久山町住民のみならず、わが国の国民に対してマスメディアや公開講座を通じて情報発信することも予定している。研究費は統計解析を行うためのデータセット作成に必要な備品や入力作業にかかる費用、および研究成果発表に伴う学会費・広報費として使用する。
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