2013 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の認知機能障害に対するrTMSの治療機作のGABA機能評価による検討
Project/Area Number |
24591727
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984)
辻 富基美 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10347586)
小瀬 朝海 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10405425)
奥村 匡敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00464678)
山本 眞弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80423937)
上山 栄子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40405444)
高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10508021)
橋本 忠浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00438277)
大沢 恭子 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (50612107)
坂本 友香 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90423938)
|
Keywords | 統合失調症 / GABA / 磁気刺激 / NIRS / 認知機能 |
Research Abstract |
本研究の主目的は、統合失調症の認知機能障害に対するrTMS治療の作用機作、治療条件のエビデンスについて、GABA機能障害と認知機能障害との関連に着目しながら、脳波のガンマ帯域活動(GBA)と2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)の神経生理学的手法を用いたGABA機能評価、rTMS刺激中にNIRSで測定される皮質の血流反応(TMS/NIRS)などの変化を検討することである。主な英文論文の要旨は、 1)ppTMSを用いてGABA性皮質抑制を評価することにより発症早期の本疾患における認知機能障害とGABA機能障害の関連を検討し、皮質抑制の減弱と作動記憶課題の低成績が有意に相関することを報告した。2)rTMS治療の作用機作や治療効果の予測指標を検討する一環として、大うつ病性障害に対するrTMS治療前後での脳血流の変化を検討し、rTMSによって情動に関連する脳内の神経回路網の機能が変化し治療効果と関連する可能性があること、膝下部帯状回の血流が治療反応性の予測指標となりえることを報告した。3)rTMS治療の作用機作の検討の一環として、耳鳴りの神経基盤の解明とrTMS治療の新たな刺激条件の探索を目標に、耳鳴りの患者においてfMRIを用いて脳内各部位の長周期の活動の変化から脳部位間の機能的連関を検討し、rTMS治療の刺激部位の候補となりえる脳部位を同定した。4)GABA神経伝達はアセチルコリン神経伝達系によっても調整され、本神経伝達系の異常も統合失調症の認知機能障害との関連が指摘されていることから、TMSを応用したSAI を用いてアセチルコリン機能を評価し、統合失調症におけるSAI の障害を報告した。5)rTMS治療の作用機作の検討の一環として、耳鳴りに対するrTMS治療を施行した患者において、ppTMSを用いて治療後の皮質興奮性の低下を、SPECTを用いて視床の血流上昇を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、統合失調症の認知機能障害に対するrTMS治療の作用機作、治療条件のエビデンスについて検討するための神経生理学的手法としてGAB、ppTMS、TMS/NIRSを用いることを計画した。「研究実績」の項で述べたように、ppTMSについては、本手法を用いて統合失調症の認知機能とGABAの関連を検討し、さらに耳鳴りのrTMS治療の作用機作の検討を行い、それぞれ英文論文で報告を行った。TMS/NIRSについては、本手法を用いて測定されるrTMS中の皮質の血流反応による前頭葉-側頭葉の結合性の評価法を確立し、健常人を用いた結果を国際学会で発表し、現在、英文論文を投稿準備中であるが、患者群による検討に至っていない。一方、GBAについては、ppTMSと同様にGABA機能を評価する指標であり、測定手法を確立・評価してもppTMSを上回る知見が得られにくいと判断して測定準備を一時中止している。代替の評価法として、脳の各部位間の機能連関を評価できる安静時fc-MRIの解析法を平成24年度に開発するとともに、平成25年度は同手法を用いて耳鳴りを呈する患者での病態生理の検討を行い、ともに英文論文にて報告した。現在、本解析法を用いて統合失調症患者のデータ解析をおこなっている。さらに、平成25年度は、各脳部位間の機能連関を評価する方法として、MRIのDTI解析の手法を導入し、統合失調症患者での検討結果を国際学会で発表し、現在英文論文を投稿準備中である。以上のように、研究に用いる神経生理学的手法の選択は終了し、解析法はほぼ確立され、統合失調症患者を用いた解析が現在進行しているが、これらの解析方法の確立が予定よりも遅れたために、統合失調症に対するrTMS治療が予定通りに進んでおらず、rTMS治療前後でのデータの解析に至っていないため、研究の進捗はやや遅れていると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項で述べたように、研究当初には神経生理学的手法の一つとしてGBAの導入を予定していたが、本手法の導入を一時中止としたために、平成25年度に購入を予定していたGBAの刺激提示・解析装置一式の購入を見送り、代替の評価法として導入した安静時fc-MRIおよびMRIのDTI解析の予備的研究・解析に用いる目的で画像解析装置一式を平成25年度に購入し、導入した。今後の症例数・解析数の増加に対応するために、平成26年度の早い時期に新たに高性能の画像解析装置一式を購入し、解析に要する時間を短縮して研究の進捗の遅れに対応していく予定である。 さらに、進捗は遅れているが、予定していたrTMS治療の前後での認知機能を含む臨床症状の評価、神経生理学的指標(ppTMS、TMS/NIRS、fc-MRI、DTI)の測定を進めていく。具体的には、統合失調症の患者及び神経生理学的指標の測定者に対してブラインドとして、実刺激とシャム刺激のrTMS治療をクロスオーバーでそれぞれ2週間ずつ施行し、各rTMS治療前後での各神経生理学的指標の測定、変化の検討を行う。神経生理学的測定とともに、認知機能(BACS)、精神症状の評価等も行う。 これらの測定結果を基に、統合失調症の認知機能障害に対するrTMS治療の作用機作、治療条件のエビデンスについて、GABA機能障害、認知機能障害、さらに脳部位間の機能連関との関連に着目しながら検討し、結果を国際学会で発表するとともに英文論文を投稿し、受理を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項で述べたように、研究当初には神経生理学的手法の一つとしてGBAの導入を予定していたが、本手法の導入を一時中止としたために、平成25年度に購入を予定していたGBAの刺激提示・解析装置一式の購入を見送り、代替の評価法として導入した安静時fc-MRIおよびMRIのDTI解析の確立に向けた予備的研究・解析に用いる目的で画像解析装置一式を平成25年度に購入し使用した。予備的研究・解析にてこれらの解析方法が確立できた場合には、平成26年度に今後の症例数・解析数の増加に対応するために新たに高性能の画像解析装置一式を購入する必要が生じると予測し、平成26年度に支出を繰り越し、同年度の早い時期にその装置一式の選定、購入をおこなうこととした。 安静時fc-MRIおよびMRIのDTI解析に用いる高性能の画像解析装置一式を平成26年度の早い時期に新たに購入・導入して稼働させ、多くの症例の解析を効率よく行って解析に要する時間を短縮することで、全般にやや遅れている研究計画の進捗状況を改善していく。 その他、ppTMSの測定・記録に、使い捨て筋電図用電極、脳波電極等の消耗品を必要とするので年度毎に約10万円を必要とすると考えている。また、認知機能検査を施行する臨床心理士への謝金として20万円を予定している。さらに、日本臨床神経生理学会、日本精神神経学会などの国内学会や国際学会に参加し、関連分野における最新の研究成果を知り、また本研究の成果を発表する目的で旅費を計上している。
|
Research Products
(21 results)