2012 Fiscal Year Research-status Report
アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病画像統計解析法の確立
Project/Area Number |
24591745
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金田 朋洋 東北大学, 大学病院, 講師 (50323019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 信行 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40361076)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 認知症 / 統計画像解析 / PET / アミロイド / BF-227 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症の画像診断においては、症例の画像を正常データベースとvoxel単位で比較する画像統計解析が広く用いられている。これまでは脳血流SPECTや、FDG PETによる糖代謝画像が主として解析されてきた。近年、PETを用いたアミロイドイメージングが目覚ましい発展と普及を見せているが、この画像統計解析は今後の課題である。統計解析手法としてはこれまでワシントン大学MinoshimaらのNeurostat(3D-SSP)およびWellcome Trust CentreのFrisonらによるSPMが広く用いられてきた。これらの基本的な概念は共通しているが、細部では異なる点が多く、それぞれ優れた特長を有する。本研究ではこれら2つの解析手法を比較しつつ、適宜、プログラムやパラメーターの変更や追加を加えることで、アミロイドPETイメージングにおける最適な画像統計解析手法の確立を目指す。 本研究ではまず東北大学で施行したBF-227 PETによるアミロイドイメージング画像の画像統計解析を、SPMとNeurostatを用いて試みた。最初に個々の脳画像を標準脳に合わせ込む解剖学的標準化を行うわけであるが、ここでSPMが正常者の平均画像から作られるテンプレートを使用するのに対し、Neurostatは数百のランドマークを用いる違いがある。全症例の解剖学的標準化を行った後に、健常例からノーマルデータベースを作成した。これをもとに、個々の症例とvoxel単位のt検定(SPM)あるいはZ検定(3D-SSP)を行い、結果を脳表抽出し、比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者21例、軽度認知障害(mild cognitive impairment; MCI)患者20例、Alzheimer病(Alzheimer’s disease; AD)患者19例の画像を解析した。具体的にはBF-227を用いた PET画像を、3D-SSPに基づいた方法と、SPMを利用したソフトウェアであるeasy z-score imaging system(eZIS)とでそれぞれ統計画像解析した。小脳でnormalizeした脳表z-scoreマップを視覚的に評価した。両解析法による結果を、マップ上の異常の程度や範囲の違いについて、被験者ごとに比較した。 その結果、健常者の24%(21例中5例)、MCI患者の45%(20例中9例)、AD患者の68%(19例中13例)で両解析結果に乖離が見られた。そのような乖離を示した例のうち、eZISよりも3D-SSPでより強い異常を示した例が6例あり、うち4例で白質集積が相対的に高かった。一方、12例では3D-SSPに比べてeZISでより強い異常を示し、9例では脳表の限られた領域において3D-SSPよりもeZISでより強い異常を示した。これら21例のうち13例ではSPM2による解剖学的標準化のエラーを生じており、その全ての例で頭蓋骨集積が高かった。これらの 例では解析前に頭蓋骨集積を除去しておくこと(”scalping”)によって、eZISの解析結果への頭蓋骨集積の影響を回避できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で、3D-SSPとSPMに基づいた方法とでBF-227 PETの解析結果に乖離が生じることを明らかにした。さらに、白質や頭蓋骨骨髄への非特異的集積がそのような乖離を生じる要因である可能性が考えられた。3D-SSPの解析結果を解釈する際には、白質集積の影響について確認する必要がある。一方、eZIS解析を行う際には解析前に”scalping”を行うことでより正確な評価が可能になるかもしれない。我々の知る限りでは、このようにアミロイドPETにおいて異なる解析法間での解析結果の違いを検討した報告は過去になく、大きな成果と思われる。臨床現場でこれらの手法をアミロイドPETの解析に用いる際には解析法による特徴の違いに配慮しなければならないことを初めて明らかにした。また、今回の研究結果は3D-SSPやeZISで検出される異常が必ずしも高い皮質集積を反映するとは限らず、白質や頭蓋骨への集積の影響を受けている場合があることを示しており、臨床で利用する上では注意する必要がある。こうした各解析法の特徴を明らかにすることは、統計画像解析法のアミロイドPET画像における臨床応用や、今後の解析ソフトウェアの改良に寄与するものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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