2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病モデル動物における脳機能および循環器機能のイメージング
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24591759
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細井 理恵 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30291446)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 脳循環代謝 / イメージング / グリア細胞 |
Research Abstract |
ストレプトゾシン(STZ)誘発1型糖尿病モデルマウスを用いて、脳循環代謝についての検討を行った。 14C-酢酸、14C-デオキシグルコース(以下、DG)、14C-乳酸、99mTc-HMPAOを用いて、グリア代謝、ブドウ糖代謝、脳血流の検討を行った。14C-酢酸の取込みはモデルの進行に伴う血糖値の増加と並行して増加し、早期に代謝異常が生じていることが明らかになった。14C-DGの取込みは1分値、30分値共に低下し、14C-乳酸の取込みは逆に増加することを明らかにした。一方で、99mTc-HMPAOの取込みに変化は認められず、脳血流の異常はこの時点では生じないことが判明した。 さらに、2型糖尿病モデルマウスであるBKS.Cg-+Leprdb/+Leprdbマウス(以下、dbdbマウス)についての検討を行った。14C-DGの取込み1分値では有意な変化を認めなかったが30分値では約50%の取込み低下を認めた。これはグルコースの取込み過程よりもヘキソキナーゼによるリン酸化の過程がより影響を受けていることを示している。db/dbマウスは糖尿病症状を自然発症するが、より症状の進んだ状態では脳における14C-DGの取込み1分値も有意に低下しており、リン酸化の過程は取込み過程よりも早期に影響を受けることが明らかとなった。14C-酢酸の取込みは約80%の増加を認め、 2型糖尿病モデルマウスにおいても1型糖尿病モデルマウスと同様の反応を示すことが明らかとなった。14C-乳酸の取込みは約60%取込み増加を認めた。さらに血中乳酸濃度もdb/dbマウスでは顕著に高値を示した。 さらにグルタミン酸神経系の関連を検討する目的で、正常動物を用いてグルタミン合成酵素阻害剤がマウス脳循環代謝に及ぼす影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1型および2型糖尿病モデルマウス脳における脳循環代謝の変化の概要を明らかにした。グリア細胞に選択的に取り込まれる標識酢酸の取込みのみではなく、標識デオキシグルコース、標識乳酸の取込みを比較することで、神経・グリアの弁別測定が可能となっている。糖尿病モデル動物の脳においては神経細胞の活性の低下、グルコースから他の物質へとエネルギー基質が変換していることを明らかにした。 一方で、当初予定していたBMS747158-02を用いた実験は実施できなかった。 また治療薬による治療効果とエネルギー代謝への影響に関する予備実験も進んでおり、平成25年度以降はこれら治療薬の効果と標識化合物の取込みとの関連が明らかになることが予想される。 さらに、脳における循環代謝以外にも、心筋における標識デオキシグルコースの代謝異常を明らかにし、その過程のうちトランスポートのプロセスよりもグルコースのリン酸化のプロセスがより影響を受けやすいことが明らかとなった。今後、糖尿病原性の各種疾患の解明につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は糖尿病の治療薬の効果と脳のエネルギー代謝の関連についての研究を主に進める。これまではSTZ投与10日後で標識化合物の取込みを中心に検討してきたが、さらにモデルがより進行した時の神経受容体の変化を検討するために、STZ投与後の日数を変化させたものについて3H-QNBなどムスカリン性アセチルコリン受容体結合の検討を行う予定である。 またグリア細胞の代謝自体もまだ不明な点が多いため、グルタミン酸-グルタミンサイクルとグリア細胞の代謝について、さらにグリアのTCAサイクルと酢酸取込みの関連についての研究についても実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物、標識化合物、研究用試薬に研究費の大半を用いる予定である。実験動物は正常動物を購入し、試薬により糖尿病を誘発させる場合と、糖尿病モデル動物としてブリーダーが作成したものを購入する場合がある。 また研究の成果については学術集会、学術雑誌での発表を通じて広く社会に発信する予定である。そのために旅費の使用を予定している。
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Research Products
(4 results)