2014 Fiscal Year Research-status Report
2回収束型スピンエコー法による拡散強調画像を利用した脳循環代謝評価法の開発
Project/Area Number |
24591801
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Research Institution | 秋田県立脳血管研究センター(研究部門) |
Principal Investigator |
中村 和浩 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 放射線医学研究部, 主任研究員 (10312638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊嶋 英仁 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 放射線医学研究部, 特任研究員 (00595077)
木下 俊文 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 放射線医学研究部, 放射線医学研究部長 (70314599)
近藤 靖 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 神経内科学研究部, 特任研究員 (70360360)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 放射線 / 核磁気共鳴画像(MRI) / 拡散強調画像 / 脳卒中 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、脳血管障害における新しいMRI画像診断法を提案するものである。昨年度の研究では中大脳動脈閉そくモデルラットを用いた検証実験をおこない、測定した画像は信号雑音比が悪く、計算画像を評価できなかった。このため、本年度は、シーケンスプログラムを工夫し、より信号雑音比の高い画像の取得を目指した。現在までに、2回収束型スピンエコー法と1回収束型スピンエコー法で得られた2つの画像から雑音レベルを超える有意な変化をモデル動物の虚血領域では見いだせていないものの、今後、より詳細な検討を進めることで脳血管障害において有用な画像が得られるものと考えている。 また、ヒトへの適用を考え、臨床用MRI装置のシーケンスプログラムの検討を始め、動物実験の結果に基づき最適なパラメータをシミュレーションプログラムにより算出した。先行しておこなっている脳機能画像の研究では安静時fMRIの解析手法を検討し、運動機能の習得効果を定性的に評価した。さらに、独立成分分析の解析をおこなうことで、運動機能の特徴量が出現している頻度から経時的な変化を定量的にとらえる手法を開発した。また、短い繰り返し時間で構成されていたため、従来の解析方法では賦活領域を見いだせなかった研究課題について、独立成分分析の手法により、賦活領域を抽出できることを見出した。こうした安静時fMRIで得られた実験結果に基づき、今回研究課題としている新しい画像診断法の詳細な検討をおこなっていきたい。 目標とする画像診断法では、血管径の変化をとらえることを目標としており、脳血管障害における血管径の変化について、シミュレーションモデルにより検討した。その結果、脳血管障害部位における血管径を模擬することができた。今後このシミュレーション結果に基づき、拡散強調画像においてどのような変化が生じるかを検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物モデルラットを用いた測定において信号雑音比が悪いという問題が改善しておらず、次年度からヒト臨床画像の検討をおこなう予定としていた点について、その段階にいたっていない。このことから、計画はやや遅れていると考えている。とはいえ、これまでの研究により、数値シミュレーションにおいては有用性を確認しており、信号雑音比が高い画像が得られさえすれば、当初の研究目標は達成されると考えている。また、ヒトに対する測定において、脳機能画像の解析方法を工夫し、基礎的な検討をおこなっており、安静時fMRIで得られた賦活領域と拡散強調画像から得られる新しい計算画像との比較をおこなうことで、当初の研究目標にはない新しい成果が得られる可能性がある。シミュレーションモデルについても、拡散強調画像の信号強度を模擬するだけではなく、脳自動調節能を模擬したモデル解析方法により、血管径の動態を推定する方法を検証した。実際の測定データとの整合性も良好であり、直接測定ができない脳組織内の血管径を推測する方法として有用な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的どおり、通常の拡散強調画像(DWI)撮像法における見かけ上の拡散定数(ADC)の計算値が脳血液量(CBV)といった磁化率効果の影響をうけて大きく変化することに着目し、異なる2つのDWI撮像法を利用した計算画像を求めることで、脳梗塞といった脳血管障害における画期的MRI画像診断法を提案していく。通常のDWI撮像法である単一収束型スピンエコー法のDWI(SRSE-DWI)に加え、磁化率効果の影響が少ない2回の180度パルスを加える2回収束型スピンエコー法のDWI(TRSE-DWI)を合わせて取得することで、2つの画像からの計算画像の取得が有用であることは、シミュレーション結果から示されているが、動物実験による実証はまだできていない。中大脳動脈閉そくモデルラットによりその有用性を示し、ヒトボランティア測定をおこなっていく。また、安静時fMRIの解析や脳血管自動調節能を模擬したシミュレーションも臨床例に合わせて検証をすすめ、得られたデータの解釈をおこなっていくこととする。
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Causes of Carryover |
シミュレーションプログラムによる動作検証が中心となり、動物実験による実証実験の回数が予定より減少したほか、ヒトのボランティア計測に進めなかったことから、謝金の支出がなく、消耗品の購入も予定に満たなかったため次年度使用額が生じた。この費用は平成27年度において、動物実験による実証実験を行うため、予定より動物を用いた実験が増えることが予想され、この実験の費用に用いるほか、信号雑音比の低下の原因をさぐるため、コンピュータシミュレーションを重視しその検証実験の費用にあてる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は平成26年度に引き続き、動物実験による実証実験を進める。また、臨床研究に向け、豊嶋らと協力して、Siemens社製MRI装置におけるシーケンスプログラムを作成する。まず中村は動物用MRI装置において信号雑音比が改善しない理由をつきとめると共に、シミュレーションプログラムにより、パラメータを精査し、臨床的に意味のある計算画像が得られることを確認する。臨床的な知見にもとづく助言は平成26年度に引き続き、放射線科診断医である木下が行う。 近藤は動物用MRIを用いた研究において、測定後病理標本を作製することにより、その血管径の分布や密集度との関係を解剖学的に確認する利点を生かして実験を進める。また、中村と連携してシミュレーションプログラムによる結果と比較する動物実験をおこない、20匹程度の脳梗塞モデルラットを用いて検証する。
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Research Products
(7 results)