2013 Fiscal Year Research-status Report
国内全域のPET施設に配達可能な新しいがん診断薬剤の開発
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24591824
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
飯田 靖彦 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60252425)
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Keywords | PET診断 / がん診断 / ヘマトポルフィリン / 放射性薬剤 |
Research Abstract |
従来のポジトロン核種より長い半減期を有するPET診断薬の開発は、核種の製造から撮像までの時間的制約の緩和やサイクロトロン未設置施設におけるPET診断の利用拡大に貢献できる。本研究では、半減期12.8時間の64Cuを利用したがん診断薬開発のため、光線力学的治療に用いられるHematoporphyrin (HP)およびその誘導体を64Cuで標識した64CuHP誘導体を合成し、その基礎的性質を調べ、臨床的有用性を明らかにすることを計画した。 まず精製したHPを用いて64CuHPの合成を行った。HP 5~10mgに64Cu約250MBqを加え、40℃で1.5時間反応し、64CuHPを得た。標識率は90~95%であった。MDA-MB-231ヒト乳腺がん細胞、LS180ヒト結腸腺がん細胞、SCC-7マウス扁平上皮がん細胞をヌードマウスの腹側部に移植し、64CuHPの腫瘍集積性について予備的な検討を行った結果、いずれのがん細胞においても64CuHPの集積が認められ、64CuHPを用いたがん診断の可能性が示された。しかしながらHPは溶解度が低く、注射剤として投与が困難であること、また肝臓への高い集積を認めたことから、物理化学的性質の改善を目的として種々の誘導体を合成し、64Cu標識の検討とインビボでの腫瘍集積性、腫瘍選択性を評価した。 水溶性の修飾基を導入した3種類の誘導体(HP-diAsp、HP-diTRIS amide、HP-diTRIS ester)は血液中でのタンパク結合の低下など有望な性質を示し、腫瘍/血液比、腫瘍/筋肉比が改善されたが腫瘍集積量には変化がなく、新たな腫瘍集積の性質を付加することで腫瘍への集積性を高める必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23、24年度に64CuHP誘導体を設計、合成し、脂溶性、安定性などの基本的性質を確認するとともに、担がんヌードマウスを用いてインビボでのタンパク結合性、安定性および腫瘍集積性の検討を行った。25年度はさらに、水溶性の向上による肝臓などへの集積軽減、投与法の改善を目的として種々の修飾基を導入し、また他の腫瘍集積機序に基づく機能を付加することで集積性、選択性の向上を図った。 これまではほぼ予定通り研究が進んでいる。引き続き腫瘍集積量の改善を目指して新規誘導体を合成するとともに、64Cu標識薬剤を臨床で使用する際の投与量、撮像時間、評価方法および被ばく線量の評価を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞接着分子であるインテグリンへの親和性を有するRGDペプチドの導入、EPR効果による腫瘍集積を期待した多量体の利用などにより、腫瘍集積量の向上を図る。またHPの誘導体化はHPと64Cuの錯形成を妨げる因子となっているため、標識方法を改善し、標識率の向上を目指す。 本研究を通し、64Cu標識薬剤を用いたPETによるインビボイメージングの有効性を示すとともに、64Cu標識薬剤を臨床で使用する際の投与量、撮像時間、評価方法および被ばく線量の評価を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額約14万円は、旅費約8万円、謝金等約2万円、その他約4万円が未使用となったために生じた。旅費の未使用は、予定していた実験が放射性核種の製造のキャンセルにより実施できなかったために生じたものであり、同様の理由で謝金等およびその他の費用が各々未使用となった。これらは26年度に実施する予定である。 キャンセルされた実験は26年度に実施予定である。26年度の交付予定額は研究計画通りに使用するため、両者を併せて当該年度中に全額を使用する計画である。
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