2014 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞ー正常細胞相互作用を介した放射線応答機構の解析
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24591857
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
下川 卓志 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, チームリーダー (20608137)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は前年度から進めた解析の蛍光利用をさらにすすめたInCell2000 (GE Healthcare)を用いたマルチパラメータによる共培養効果の解析などと平行して、マウスモデルでの解析も行った。マウス癌細胞株を用いた解析では、癌細胞単独ならびに周囲に正常細胞がある状態での放射線の生物影響を比較し、放射線に対する感受性など獲得形質に差があることを示した。さらに本課題で標的としたHedgehogとWntシグナル伝達系に関する遺伝子発現解析において、がん細胞単独状態と周囲に正常細胞がある状態での照射による活性化において異なる傾向(がん細胞単独ではWntシグナルの抑制、共在条件でHedgehogシグナルの活性化)が認められ、放射線応答において周囲正常細胞の影響が大きいことが示された。加えて、照射する線質(光子線と粒子線)の比較では、炭素線でのがん細胞単独照射において、両シグナルの顕著な抑制が、共存条件下での変化の抑制が認められ、上記反応における線質効果が示唆された。先に報告した放射線感受性への影響と合わせ、本課題によって、がん細胞の放射線応答における正常細胞が周囲に存在する効果、ならびにその過程におけるHedgehogシグナルとWntシグナル系の関与の一部が明らかに出来た。 以上の成果の一部は、英文国際誌に原著論文として受理されすでに公開済みである。さらに国内外の関連学会で発表し公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において、in vitroならびに動物モデルを用いた解析により、癌細胞単独状態とは異なる、共培養条件下での放射線に対する生物応答を明らかに、それが治療後の獲得形質に影響することを示せた。本成果は放射線治療の併用療法における非がん細胞を治療とした新たな治療戦略開発のための重要な基礎生物学的知見となった。
本課題での成果の一部は、論文として国際専門誌に受理され、残りの成果についても論文での投稿準備を進めている。さらに国際学会ならびに国内学会での発表を行い、成果の公表に務めた。 以上の理由により、概ね順調に進展したと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度をもって本課題は終了であるが、今後は本課題で確立した3次元培養ならびにマルチパラメータでの解析法を利用し、放射線治療における併用療法標的としての間質とがん細胞の細胞間応答についてより詳細な研究を進め、最終的に新規治療法の確立を目指す。その推進にあたり新規技術であるゲノム編集を積極的に用いて、遺伝子改変したがん細胞、間質細胞を作成し、効果的に解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本課題の成果を含む国際学会を含む学会発表、論文投稿を2015年度に予定しており、その関係諸経費支払いのため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会参加費 80,000円 その他(交通費、英文校正費、論文投稿費用など) 117,965円
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