2014 Fiscal Year Research-status Report
伸展刺激によるがん転移ー浸潤制御機構の解明:TRPV2のストレッチシグナル伝達
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24591865
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
長澤 雅裕 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (50343083)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | TRPV2チャネル / カルシウム / 機械刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜直下の細胞内カルシウム動態を測定する高感度Ca2+センサー・プローブとしてYC-nano-pmプローブを作製した。このプローブをヒトがん肉腫細胞に発現させて、ガラス管で局所に物理的な刺激すると、刺激部位を起点とする細胞内Ca2+の増加を認めることがわかった。さらに、この物理的刺激により、細胞伸展・細胞接着変化が生じるかを可視化するために、アクチン、ザイキシンに蛍光標識したプローブを作製して検討を行い、がん細胞伸展による接着構造の形態変化と細胞内Ca2+変動との相関を時間・空間的に関連性が明らかになりつつある。この局所的な物理刺激によるCa2+の増加は、アクチンの重合阻害剤、PI3-キナーゼ阻害剤で抑制されること。TRPV2のノック・ダウンにより抑制することが判明した。そこで、さらに、アクチンと相互して接着斑を構成する分子、インテグリン、ビンキュリン、パキシリン、FAK、ザイキシン等の分子群に蛍光たんぱくを付加し可視化して接着構造の変化を追加検討している。特にビンキュリンは細胞接着の主要分子であり、アクチン、テイリン、カテニン、PIP2などの分子と相互作用して、細胞運動・接着変化に伴い立体変化を起こす。そこで、ビンキュリン分子に蛍光ラベルして細胞運動・接着に生じるビンキュリン立体構造変化を可視化する伸展センサーのプローブを作製して検討すると、細胞伸展部位で活性化されるのを見いだしている。これらのセンサーを併用して、細胞のどこにどの程度の伸展刺激が加わると、どこでどのようなカルシウムシグナルが産生されるかとくにTRPV2の動態と関連させて伸展刺激によるTRPV2チャネルの制御機構、それらとカルシウムシグナル産生の動態を総合的に解析し、TRPV2によるストレッチシグナルを解析している。TRPV2ノックアウト・マウスを作製して、動物モデルでもTRPV2の機能を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高感度に細胞内Ca2+をモニターするプローブを作製し、さらに物理的刺激・伸展刺激を可視化するプローブを作製して、機械刺激にともなう機械刺激部を起点とするカルシウムウェーブと特徴あるカルシウムシグナル、それに伴うシグナル伝達機構、さらにTRPV2トランスロケーション、細胞接着構造のダイナミックな変化をモニターできている。またTPV2のノックアウトマウスの作製も経過の遅延はあるが順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)TRPV2の全身のノックアウト・マウスとコンディショナル・ノックアウトマウスを作製して生体内におけるTRPV2の生理的意義を明らかにする。さらに、TRPV2ノックアウト・マウスから単離したプライマリーカルチャー細胞を用いて細胞伸展に伴う細胞Ca2+変化、そのストレッチシグナルを解析する。平成24・25・26年でがん細胞における伸展刺激によるカルシウムシグナル産生機構とストレッチシグナルの機能相関で明らかになったことをノックアウト・マウスの細胞をも用いて検討する。2) 低分子量G蛋白 質との関連:細胞運先端の葉状仮足、糸状仮足の制御には低分子量G蛋白が重要である。低分子G蛋白(Rho、Rac、Cdc42、Rap1)活性促進変異体・抑制変異体を利用して細胞運動に伴うがん細胞の特殊な接着斑であるインベドポディアの形態変化と伸展、カルシウム動態、TRPV2チャネルの局在、接着斑構造の変化における低分子G蛋白の関与を定量的かつ時間空間的に検討する。3) 細胞骨格による制御:アクチン重合阻害剤以外のチュブリン重合阻害剤、非筋肉型ミオシンII阻害剤を利用して細胞伸展における細胞骨格による制御を検討する。4)動物実験での検討:TRPV2チャネル分子を高発現させたがん細胞株とTRPV2の発現を抑制したがん細胞株を皮下移植、尾静脈からの注入、腹腔内投与等してin vivo におけるがん細胞の腫瘍形性、浸潤、転移、新生血管形性の相違を組織学的に評価する。
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Causes of Carryover |
TRPV2ノックアウト・マウス作成中であるが、動物実験施設改修工事に伴う、動物飼育スペースの縮小により、実験に必要な個体数を繁殖・維持するのが難しく、十分な動物実験の研究解析が進行できなかった。さらに、TRPV2ノックアウトマウスは、致死でなく生まれ、生育するが、雄・雌の性差があり、雌マウスが非常に生まれにくい状況である。詳細の原因は不明であるが、繁殖個体を増やすことによりリカバーしたいと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験施設の改修が終了して、平成26年9月から動物実験を行うためのスペースが確保できるようになった。それにより、当初の予定から遅れていた動物実験を再開している。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] TRPV22014
Author(s)
長澤 雅裕、小島 至
Organizer
第10回TRP研究会
Place of Presentation
岡崎カンファレンスセンター
Year and Date
2014-06-05 – 2014-06-06