2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591879
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉澤 淳 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60457984)
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Keywords | 移植免疫 / 肝移植 / 抗体関連型拒絶 / ABO血液型 |
Research Abstract |
血液型不適合肝移植において、周術期に抗血液型抗体が産生され、抗体関連型拒絶反応の原因となる。周術期の抗体関連型拒絶反応は、致死的な移植肝障害をもたらし、これまで、さまざまな脱感作療法が試みられ、血液型不適合肝移植の成績向上が図られてきた。血液型不適合肝移植が開始された当時、成人症例に対する肝移植の1年生存率は35%であったにもかかわらず、周術期の免疫抑制療法の改善により、現在は1年生存率が75%に改善した。一方で、我々のこれまでの検討で、手術後、長期間経過した症例においては、血液型抗体価の上昇は認めず、抗体関連型拒絶反応も認めないことが判明した。また、今回の研究において、1歳以下の血液型不適合肝移植においては、血液型抗体価の上昇はなく、抗体関連型拒絶反応が起こっていないことが確認された。 さらに、臨床成績の疫学的研究においてABO不適合移植肝移植後長期経過症例において、さまざまな理由で移植肝機能不全による再移植を余儀なくされた症例で、再度血液型不適合肝移植を行った症例について検討を行った。 血液型不適合再移植症例について、初回移植、その後の経過、更に、再移植時の血液型抗体価の推移について検討を行った。その結果、再移植時に血液型不適合移植を行った症例のうち、初回移植が血液型一致/適合ドナーからの肝臓提供を受けた症例については、再移植時に抗血液型抗体の上昇を認め、抗体関連型拒絶反応を認めた症例もあった。この経過は初回に血液型不適合を受けた症例と同様であった。一方、初回移植が血液型不適合ドナーからの肝臓提供を受けた症例については、再移植時の抗血液型抗体の上昇は明らかに抑制され、抗体関連型拒絶反応も認めなかったことが明らかになった。このことから、血液型不適合肝移植後、長期経過症例において血液型抗原に対する液性免疫応答が低下していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今までの当科における血液型不適合肝移植の検討によって、乳児における血液型抗原に対する免疫応答が確立していないこと、また、血液型不適合肝移植後、長期経過における血液型抗原に対する免疫応答の不応性について推察された。今回、疫学的な検討に加え、in vitroで患者抹消血中の血液型抗原に対する応答性の研究を行った。In vitroにおけるB細胞の増殖および血液型抗原に対する応答については、抹消血中に存在する血液型抗原に対応するクローンの存在が少ないために非特異的反応の影響を除去することができなかった。現在は、効率よく血液型抗原に対するクローンの増殖をはかるために、免疫不全マウスを用いてin vivoで刺激を加えて増殖する実験を行っている。産生された抗体の測定する系はフローサイトメトリーを用いて測定する方法は確立している。 また、移植後の血液型抗原の発現についてゼロバイオプシーおよび経過における肝生検そしきについて免疫染色で発現を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、健常人の予備実験において、血液型抗原に応答するB細胞クローンの増殖および、その証明の実験を進めているところである。この実験系が確立されれば、実際に患者血液によってその、B細胞のクローンの存在および、クローンが不応になっているかを調べることにより、肝移植後の血液型抗原に対して免疫寛容が確立しているか、免疫順応が成立しているかを調べることができると考えられる。 今後、血液型不適合肝移植患者長期経過患者における血液型抗原に対する免疫応答の低下のメカニズムの解析を行い、血液型不適合移植に対する適切な免疫抑制療法の確立と抗体関連型拒絶反応の制御の基礎研究とする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたin vitroにおけるB細胞の血液型抗原に対する不応性の実験が予定外に不可能であることが判明した。本来、本年は患者検体による本実験を行う予定であったため、研究費が必要である予定だったが、新たな実験系による同等の実験の準備を進めた。本年中には予備実験から、本実験に移行することができなかった。予備実験を進める傍ら、移植症例の疫学的研究を主体に進めていたため、本年使用予定の研究費の一部が、次年度の患者血液の本研究のために使用をするために、次年度使用額が生じる結果となった。 昨年度までの予備実験の確実性を検証し、更に、患者血液を対象に本実験を行い、本研究改題である血液型不適合肝移植術後の液性免疫の免疫寛容成立のメカニズムの解析を行う予定である。
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Research Products
(3 results)