2013 Fiscal Year Research-status Report
臓器提供に関する本人、家族意思を反映し得る脳死判定補助検査に関する研究
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24591890
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
横田 裕行 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60182698)
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Keywords | 脳死判定 / 臓器提供 / 電気生理学的検査 / 脳血流検査 / 補助検査 |
Research Abstract |
平成22年7月に施行された、いわゆる改正臓器移植法ではいわゆる竹内基準で脳死を判定することになっている。しかしながら、実際は同基準では判定不可能な症例が多く存在するといわれている。例えば、重症頭部外傷で眼球損傷を有する症例や頸椎・頚髄損傷例、あるいは視覚障害患者では脳死判定の必須項目である脳幹反射を施行するこができない。したがって、このような症例が脳死状態に至った際には脳死下臓器提供への生前意思が明らかで、家族が臓器提供を承諾している場合でも上記の理由で脳死判定が出来ず、善意の意思が反映されない現状である。そもそも、これらの患者や家族の意思を脳死下臓器提供に反映できないことは「臓器の移植にかかわる法律」第二条にも反することである。ちなみに、平成11年厚生省厚生科学研究特別事業「脳死判定上の疑義解釈に関する研究」(竹内一夫班長)では、「現在定められている法的脳死判定の判定項目の一部について、患者の条件により検査することが困難な場合、補助検査によって法的脳死判定の一部を代替する可能性があり、脳死判定の項目として検討に値する検査であることとの結論に達した」としているが、実際は脳死判定における電気生理学的な補助検査は、本邦においてevidenceに基づく報告がないために現在の脳死判定基準を補完することになっていない。 脳死判定に補助検査を有効に利用することで脳死判定が可能となれば脳死下臓器提供数は約3割の増加が見込めるという(平成14年度ヒトゲノム・再生医療等研究事業研究班報告書)。このような中で我々は脳死判定における電気生理学的な手法の有用性を症例の蓄積と過去の文献によるevidenceに基づいて明らかにし、報告した。本研究では電気生理学的手法と脳代謝等の手法から、脳死判定のgold standardといわれる脳代謝の不可逆的停止を確認することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は重症頭蓋内疾患、主として重症頭部外傷を対象にマイクロダイアリーシス法(ブドウ糖、乳酸、ピルビン酸、グルタミン酸、グリセオールなどを測定)35例、3470サンプルを解析し、予後良好群、不良群(遷延性意識障害、脳死を含む死亡群)の結果を解析した。その結果、脳還流を示すグルコースは脳灌流圧(CPP)70mmHg台で有意に高値で、それと反対にlactate値は低下することが明らかとなった。脳虚血の良い指標とされる/LP比はCCPが70mmHg台以下で有意に上昇することが明らかとなった。一方、細胞障害を示すグリセオールは70mmHg台以上で有意に低下した。これらより70mmHg台のCPPが脳損傷を回避する閾値である可能性が考えわれた。 しかし、個々のケースにおいて、脳細胞死滅の虚血閾値とされるL/P 25の回帰直線から、至適CPPを検討すると70~1627mmHgと症例毎に大きく相違していた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年以降は上記の研究結果を、すなわちマイクロダイアリーシスで評価した脳代謝の蘇生限界閾値と電気生理学的所見、さらには脳死判定への応用を検討する。マイクロダイアリーシス法(ブドウ糖、乳酸、ピルビン酸、グルタミン酸、グリセオールなどを測定)で検討した脳代謝の蘇生限界閾値決定すべくデータ蓄積を推進する。 ちなみに我々が過去、および今回の研究で重症頭部外傷を中心とした測定結果では、予後良好群と、脳死で死亡した症例を含む予後不良群が示されており、これらを臨床所見、電気生理学的所見を突合する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況に従い、次年度で使用を考えている機器、装置ならびに付属品の購入経費にあてるため、一部経費を次年度に繰り越すこととした。 救急・集中治療室という極めて電気的なノイズが多い環境で行う脳波、ARB, SSEP測定は高度の技術と高性能の刺激装置、およびその結果を解析するデータ解析装置、ソフトウエアが必要である。また、マイクロダイアリーシスのプローブ、カテーテルはsingle useであり、再生使用が不可能であるために患者1名に対して1本のプローブ、カテーテルが必要となる。また、測定のための抽出液分析装置は近年、迅速でより正確なものが開発され、研究の円滑化のために可能であればそれらを使用したいと考えている。
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