2015 Fiscal Year Annual Research Report
臓器提供に関する本人、家族意思を反映し得る脳死判定補助検査に関する研究
Project/Area Number |
24591890
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
横田 裕行 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60182698)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳死判定 / 聴性脳幹反応 / 短潜時体性感覚誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳死状態にもかかわらず眼球や鼓膜損傷のために脳死判定基準を満たさず、脳死判定ができずに臓器提供ができなかった例が少なからず存在する。このような場合も脳死判定が可能となれば、脳死下臓器提供の増加に寄与すると考えられる。海外においてはそのような場合、脳死判定基準を補完する意味で脳血流や誘発電位検査などの補助検査が施行されている。また、本邦においても平成11年に厚生省(当時)は「脳死判定上の疑義解釈に関する研究班」の報告書にはABRや短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)に対して、脳死判定の際に重要な補助検査としての位置づけが可能と結論し、脳幹反射が評価できない場合に、それらを補完する検査と位置付けている。 今回の我々の研究は現在の診断基準で脳死判定ができない症例であっても、誘発電位、特に聴性脳幹反応(ABR)、短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)を用いることで脳死判定が可能を検討することを目的とした。ABRは内耳の外傷や、虚血によりⅠ波、Ⅱ波も消失することも多く、脳死患者におけるABRの評価を難しくしている。脳死が臨床所見から疑われた症例に対し、脳死と診断するABRの感度は25.2%、特異度は85.7%と評価であり、脳幹反射をすべて補完すると判断することには慎重でなければならない。 一方、 SSEPでは脳死であっても脊髄の血流は保たれ、P9は描出されるので正中神経に有効な刺激がなされ、その刺激が少なくとも腕神経叢から頚髄に達していることが確認される。すなわち、それ以降の波形が消失している場合は、消失した波形の部分、あるいはそれより上位の神経路である脳幹で高度な機能障害が存在することを示唆している。以上から、ABRやSSEPを用いることで脳死判定の補完が可能であるが、特にABRでは単独で全ての脳幹反射を補完するとは言えず、更なる検討が必要と結論された。
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