2014 Fiscal Year Annual Research Report
MFG-E8をターゲットとした手術侵襲後炎症性生体反応の制御
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24591891
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
松田 明久 日本医科大学, 医学部, 助教 (00366741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松谷 毅 日本医科大学, 医学部, 講師 (50366712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 手術侵襲 / 術後合併症 / MFG-E8 / 炎症性生体反応 / アポトーシス / リゾフォスファチジルコリン |
Outline of Annual Research Achievements |
外科侵襲後の炎症性生体反応は,一定の範囲内であれば生体防御機構としてホメオスターシスの維持に貢献するが,その範囲を超えた過剰な反応は血管内皮障害,易感染性から術後合併症を併発させ,時に致死的となる。我々は,手術侵襲後の過剰な炎症性生体反応にMFG-E8の産生低下によるアポトーシス細胞の貪食低下から蓄積したアポトーシス細胞から産生される炎症性メディエーターがその一因となっているという仮説の元に検討を行っている。 平成26年度は,消化器外科手術患者(大腸癌手術)の臨床血液検体を用い,MFG-E8およびIL-6などの炎症性サイトカインをELISA法にて測定し,MFG-E8と侵襲後炎症性生体反応および感染性合併症発症との関連を検討した。しかし,術後,血中MFG-E8値は,手術侵襲により有意な変動を示さなかった。この要因として,ほとんどの症例で施行された腹腔鏡下大腸切除は,比較的侵襲度が低く,MFG-E8産生に影響を及ぼさない可能性が示唆された。そこで,検討対象を集中治療が必要な敗血症および外傷患者とし,ICU入室時のMFG-E8を健常人と比較したところ,有意に重症患者で低値を示していた。そこで,現在症例を蓄積し炎症性サイトカイン,重症度スコア,転帰などとの関連をするか検討を行う予定である。 また,アポートシス細胞から遊離され,MFG-E8と同様にアポトーシス細胞の適切な貪食に関与するるリゾフォスファチジルコリン(LPC)にも着目し,前述の消化器外科手術患者で検討したころ,術直後の血中LPC値は術前に比べ有意に低下し,その値が術後IL-6値と逆相関し術後合併症の予測因子となること見出した。 上記の結果から,侵襲後の生体ではアポトーシス細胞の貪食調節因子の不均衡が生じていること,これが術後の過剰な炎症性生体反応の要因となっている可能性が示唆された。
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