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2012 Fiscal Year Research-status Report

トラスツズマブ耐性に関わる分子機構の解析と新規治療法開発のための基礎的研究

Research Project

Project/Area Number 24591901
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

杉江 知治  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335264)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 鈴木 栄治  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00612897)
佐藤 史顕  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20467426)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywordsトラスツズマブ耐性
Research Abstract

抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)はトラスツズマブの重要な抗腫瘍効果発現メカニズムと考えられており、本研究ではトラスツズマブ耐性(ADCC耐性)乳癌細胞株を樹立することによってその耐性獲得のメカニズムを解明し、耐性関わる新規診断法の開発を目指している。本年度では、トラスツズマブ耐性株の樹立を目的に、健常者の末梢血単核球をトラスツズマブで反応させた後、HER2陽性ヒト乳癌細胞株SKBR3と共培養を行った。生存SKBR3を再度トラスツズマブで反応させた末梢血単核球と共培養する作業を繰り返すことによって最終的にトラスツズマブ耐性SKBR3を樹立した。細胞傷害アッセイ(LDH assay)では、いずれの濃度のトラスツズマブを用いても耐性株はSKBR3親株と比較して有意に低いADCC活性を示していた。また耐性株の表現形質の検討では、HER2やMHC class I/IIなどの発現は親株と同等であった。さらにエフェクターであるCD56陽性細胞との共培養系においてCD107a陽性細胞率は耐性株とSKBR3親株との間で同等であった。以上から、本モデルにおける耐性獲得メカニズムはエフェクターにはなく、パーフォリン/グランザイム経路で惹起される標的細胞のアポトーシス経路に存在する可能性が示唆された。パーフォリン/グランザイムは細胞内に取り込まれるとミトコンドリアに作用しsuperoxideが放出される。これまでの解析では、トラスツズマブ耐性株はsuperoxideの誘導が親株に比較して阻害されていたが、耐性株にpyocyaninやvalinomycinによってsuperoxideを薬剤で誘導してもADCCに対する感受性に変化を示さなかった。このことは耐性能獲得メカニズムはsuperoxideの量に依存するのではなく、アポトーシス経路の下流に存在する可能性を示唆している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

臨床で経験するトラスツズマブ抵抗性乳癌の多くがHER2分子を発現していることから、われわれは、HER2分子からの細胞内シグナル伝達系の変化だけでなく、もうひとつの重要なトラスツズマブ作用である抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の誘導に着目し、耐性獲得のメカニズムを解析している。
初年度のもっとも重要な課題は、トラスツズマブ耐性(ADCC耐性)ヒト乳癌細胞株を樹立することであった。われわれは、HER2陽性ヒト乳癌細胞株SKBR3と健常者末梢血単核球との共培養系において、トラスツズマブ耐性SKBR3を樹立することができた。この耐性株はHER2やMHC class I/IIなどの表現形質、細胞増殖能、トラスツズマブ単体への感受性については親株と同等であったが、ADCC活性に関しては親株に比して耐性をしめしていた。さらに、耐性株の細胞培養上清にはエフェクター細胞の細胞傷害活性化を低下させる作用はなく、エフェクターのCD107a陽性細胞率は共培養した耐性株とSKBR3親株との間で同等であった。これらの結果は、本モデルにおける耐性獲得メカニズムが、エフェクターにはなく、標的細胞内においてパーフォリン/グランザイム経路で惹起されるアポトーシス経路に存在する可能性を示唆しており、耐性獲得に関与する標的分子の領域を絞りこむことができた意味でも重要な成果といえる。
現在、superoxideに関わる分子の解析を進めており、本研究における初年度の目標であるトラスツズマブ耐性(ADCC耐性)乳癌細胞株の樹立および耐性細胞の生物学的特性の解析についてはほぼ達成したといえる。トラスツズマブ耐性に関わる免疫学的分子機構の検討については、耐性株を樹立したことから、次年度以降、耐性株特異的抗体の樹立を目指してゆく。

Strategy for Future Research Activity

パーフォリン/グランザイムが細胞内に取り込まれるとミトコンドリアに作用しsuperoxideが放出される。superoxideは小胞体に付随するSET complexの核内移行を促進し、核内に移行したSET complexはDNA break repair systemの阻害などを介して細胞死を引き起こすことが知られている。今後の研究の推進方策として最初に耐性株と親株のSET complexの蛍光免疫染色を行いその核内移行における差異について解析を行なう。また、耐性獲得のメカニズムとしてパーフォリン/グランザイム経路の分子が関与している可能性が明らかとなったことから親株、耐性株のmRNAの発現プロファイルをマイクロアレイを用いて解析し、耐性獲得に関与する可能性の高い分子を同定し、これらの分子について強制発現やノックダウン操作を施しトラスツズマブ耐性に関わる分子機構の解明を行う。
さらに今回の解析では、トラスツズマブ耐性獲得にはエフェクターの脱顆粒に差を認めなかった。しかしエフェクターと耐性株の相互作用のなかで、エフェクターから放出される顆粒量が同等でも標的細胞への顆粒の流入が耐性株では低下している可能性があることから、今後、インテグリンをはじめとする細胞接着分子にも着目し、耐性株の表現形質の詳細な検討ならびに耐性株特異的抗体の作成等の免疫細胞生物学的解析をすすめてゆく予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

該当なし

  • Research Products

    (2 results)

All 2013 2012

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] ヒト乳癌細胞がトラスツズマブを介した抗体依存性細胞傷害活性に対する耐性能を獲得するメカニズムの解明2013

    • Author(s)
      鈴木栄治、佐藤史顕、河口浩介、杉江知治、戸井雅和
    • Organizer
      日本乳癌学会
    • Place of Presentation
      浜松
    • Year and Date
      20130627-20130629
  • [Presentation] Trastuzumabを介した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)耐性乳癌細胞株の樹立2012

    • Author(s)
      鈴木栄治、佐藤史顕、竹内恵、上野貴之、杉江知治、戸井雅和
    • Organizer
      日本乳癌学会
    • Place of Presentation
      熊本
    • Year and Date
      20120628-20120630

URL: 

Published: 2014-07-24  

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