2013 Fiscal Year Research-status Report
トラスツズマブ耐性に関わる分子機構の解析と新規治療法開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
24591901
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
杉江 知治 関西医科大学, 医学部, 教授 (70335264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00612897)
佐藤 史顕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20467426)
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Keywords | トラスツズマブ耐性 |
Research Abstract |
本研究ではトラスツズマブ耐性(ADCC耐性)乳癌細胞株を樹立することによってその耐性獲得のメカニズムを解明し、耐性に関わる新規診断法の開発を目指している。本年度は、初年度に樹立したトラスツズマブADCC耐性株を用い、耐性株のmRNAの発現プロファイルをマイクロアレイを用いて解析した。その結果、耐性株ではvATPase(vacuolar type ATPase)の構成分子の一つである、ATP6V1B1の有意な減弱がみられ、ADCC耐性株獲得には、パーフォリン/グランザイム経路で惹起される標的細胞のアポトーシス経路の膜輸送の過程において、vATPaseが関与している可能性が示唆された。そこで、まずマイクロアレイの結果を検証するため、親株と耐性株の遺伝子発現を、リアルタイムPCR法を用い定量的に解析し、マイクロアレイの結果と同様、耐性株においてATP6V1B1遺伝子は有意に低下していることを確認した。次に、親株のATP6V1B1遺伝子をノックダウンすることによって、親株と比べ有意に低いADCC活性を示した。以上より、ATP6V1B1遺伝子がADCC耐性に関わる分子の一つである可能性が示唆された。次に、パーフォリン/グランザイム経路~アポトーシスまでの膜輸送過程でvATPaseが耐性に関わるとすれば、抗体非依存性細胞傷害活性(AICC)においてもADCCと同様の結果が得られると考え親株と耐性株でのAICCを比較した。その結果、ADCCと同様にAICCにおいても耐性株で有意に低い細胞傷害活性を示した。以上から、ADCC/AICCを担う、NK細胞やmonocyteなどの自然免疫細胞の細胞傷害活性は標的細胞のvATPaseの機能低下により抑制され、標的細胞のアポトーシス回避と耐性能獲得に関与する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題として、初年度に樹立したトラスツズマブ耐性ヒト乳癌細胞株を用い、耐性獲得メカニズムに関わる分子を探索し、vitroにおいてその分子の機能解析を行なった。我々はマイクロアレイによる遺伝子解析によって、耐性獲得のメカニズムとしてvATPaseの構成遺伝子の一つである、ATP6V1B1遺伝子の関与を見出した。事実、親株のATP6V1B1をノックダウンし、ADCC活性を評価したところ、耐性株と同様にADCC活性の低下がみられた。このことは、ATP6V1B1はADCC耐性獲得に関わる因子の一つであることを示す重要な知見である。 また、我々は、vATPaseが細胞膜輸送の重要な因子であることから、ADCCだけでなく、AICC(抗体非依存性細胞傷害)においても、耐性株で細胞傷害活性の低下がみられると予測した。事実、親株と耐性株のAICC活性比較した結果、ADCCと同様にAICCにおいても耐性株で有意に低かった。このことは、ADCC/AICCを担うNK細胞やmonocyteなどの自然免疫細胞の細胞傷害活性の低下と、ATP6V1B1の発現低下との関係を示唆する重要な結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験結果より、ATP6V1B1を阻害することによりvATPaseの機能を低下させることは、ADCC、AICCに関わらず、NK細胞やマクロファージの細胞傷害活性の低下に関与することが示唆された。このことは、本課題の目的である、トラスツズマブのADCC耐性獲得メカニズムを解明する重要な手がかりとなった。 次年度は、引き続きヒト乳癌細胞株のATP6V1B1ノックダウンにより、ADCC/AICCの低下がみられるか検証すると同時に、強制発現することによりADCC/AICC活性が回復するか解析を行う。また、ATP6V1B1をマウス細胞株でノックダウンし、ノックダウン細胞株のNK細胞傷害活性を解析する。さらにマウス細胞株で仮説が証明されれば、親株とノックダウン細胞株をマウスに移植しvivoの実験へとすすめていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担者が平成25年度に購入することを予定していた物品が必要なくなったため。 研究推進のため、物品費として使用する
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Research Products
(2 results)