2013 Fiscal Year Research-status Report
BRCA1/BRCA2変異保因者に対する乳がん早期発見・発症予防に関する研究
Project/Area Number |
24591903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下村 淳 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10625841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 昇晋 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90346213)
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Keywords | 乳癌 / 家族性乳癌 / BRCA1 / BRCA2 / 変異保因者 |
Research Abstract |
1.遺伝子検査を伴う研究のため当施設での倫理委員会の承認を受け、当院の遺伝子診療部、産婦人科の協力を得て症例登録の準備を整えた。過去3年間の当院乳癌術後症例で、家系内に複数の乳癌患者、または卵巣癌の患者が存在する者に主治医を通して連絡し本研究の意義等を説明し、登録希望の有無を確認しつつある。現在まで3症例がBRCA1/2の遺伝子検査を希望し、遺伝子カウンセリングの上、両遺伝子のフルシーケンスの検査を行った。この結果1名がBRCA1に変異陽性、1名がBRCA2に変異陽性で、残り1名はBRCA1/2のいずれにも変異なしの結果を得た。BRCA1変異陽性症例は乳癌の綿密な検診プログラムに参加の上、当院産婦人科主導の卵巣癌のリスク軽減プログラムに登録し、予防的卵巣摘除を現在検討中である。また、家系構成員への啓蒙をすすめ家系内の遺伝子変異の検索を進める予定である。BRCA2変異陽性症例は両側乳房切除術を既に受けており、卵巣癌発症のリスク軽減プログラムにのみ登録された。 2.遺伝子変異を認めた症例2例のデータを、厳重なセキュリティーをかけたデータベースファイルに登録した。 3.散発性乳癌には乳癌組織でBRCA1遺伝子がメチル化されその発現が抑制されているものがあり、BRCA1遺伝子変異を持つBRCA1乳癌とは生物学的にも臨床病理学上も類似性があると考えられている。BRCA1乳癌の臨床病理学的因子解析の一助として、過去に手術で摘出した乳癌標本においてMSP(methylation specific PCR)法でBRCA1遺伝子のメチル化の有無を腫瘍部と周囲正常部において検索した。腫瘍部でのメチル化と周囲の正常組織におけるメチル化とに有意な相関が見られ、乳腺組織のメチル化が乳癌の発生に関わっているものと考えられた。この結果については論文雑誌への投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
症例の登録体制が整い、登録候補者に連絡をとりつつ順次症例を登録しているところで、現在まで3例に対し遺伝子検査を行い、2例に遺伝子変異を認めた。今後も引き続き候補症例に対する遺伝子検査を進めデータを蓄積していく予定である。 候補症例への連絡から遺伝子カウンセリングを経て、検査に至るまではある程度の時間がかかるためやや遅れ気味といえるが、症例を重ねていけば期間内に目標症例数である10症例の発端者を登録できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き大阪大学医学部付属病院で過去3年間に乳癌の手術を受けた通院中の患者の中で、家族歴と既往歴からBRCA1/BRCA2遺伝子の変異の可能性が高いと考えられる候補症例をピックアップし本研究への登録をすすめる。遺伝子変異陽性の発端者を今後8例(合計10例)検索することを目標とする。 遺伝子変異が判明した症例(発端者)の家系構成員にも啓蒙をすすめ遺伝子変異の検索をすすめる。遺伝子変異症例は、データベースに登録し臨床病理学的因子を検討するとともに、乳癌の検診プログラム、および卵巣癌の検診プログラムまたは予防的卵巣摘除のプログラムを進めて、BRCA1/BRCA2変異のパターン、浸透率、乳癌発症率、対側乳癌発症率、検診プログラムの有用性、発見率を検討する。BRCA1遺伝子保因者については、BRCA1メチル化陽性の散発性乳癌との間で臨床病理学的因子の相関を調べる。
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