2013 Fiscal Year Research-status Report
再発乳癌治療における免疫ネガティブシグナル抑制に着目した新世代免疫療法の開発
Project/Area Number |
24591907
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山本 滋 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30289178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 清 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (30346564)
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Keywords | 乳癌 / 免疫療法 |
Research Abstract |
乳癌領域での免疫療法は、再発後も数年間におよぶ乳癌治療において、患者のQOL維持に最適であるが今だ十分な研究がなされていない。癌の微小環境において、活性化T細胞が無力化や寛容化により抑制されることが近年判明してきた。我々は、この免疫Negative signalに着目し、未開発の乳癌領域の免疫療法を開発すべく、以下の研究を開始している。 1.免疫のNegative signalの強力な制御因子であるPD-L1(B7-H1)の乳癌での発現と臨床病理学的因子との関連を検討する。 2.様々な免疫担当細胞間のPD-L1(B7-H1),PD-1の相互作用を抗PD-1抗体を用いた抗体療法により阻害(blocking)することで、Negative signalから解き放たれたT細胞が本来の抗腫瘍免疫を復活させることをin vitro(細胞株)および動物実験で確認する。平成25年度は、平成24年度にひきつづいて、1.に対して、 (1)免疫のNegative signalの強力な制御因子であるPD-L1(B7-H1)の乳癌での発現を、原発性乳癌の切除標本を用い、乳癌サブタイプ別に腫瘍細胞におけるPD-L1(B7-H1)発現を抗PD-L1(B7-H1)抗体を用いて免疫染色を行い、予後との関連を検討した。 (2)腫瘍周囲のTリンパ球におけるPD-1発現を抗PD-1抗体を用いて免疫染色を行った。 関連した研究として、平成25年度は、Negative signalの一つとして腫瘍上に発現し、免疫制御リガンドとして適応免疫反応において抑制系の重要な役割を担うことが報告されているB7-H3に着目し、乳癌細胞におけるB7-H3の発現とその周囲の制御性T細胞の有無に対する乳癌患者の予後を免疫組織学的染色を用いて検討した。B7-H3は、どの程度、直接に腫瘍免疫逃避に関与しているかは不明であり、また制御性T細胞は、Nagative signalとは独立あるいは相乗的に働く強力な抑制系のT細胞である。結果として、B7-H3の高発現および制御性T細胞陽性の高比率の乳癌患者では無再発生存率が不良であることが判明した(P=0.014およびP=0.039))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.原発性乳癌の切除標本を用い、腫瘍細胞におけるPD-L1(B7-H1)発現を抗PD-L1(B7-H1)抗体を用いて免疫染色を行っているが、polyclonal抗体で染色手技、染色性も安定化した。腫瘍周囲のTリンパ球におけるPD-1発現を抗PD-11抗体を用いて免疫染色を行ったが、染色手技および染色性も安定化した。少数例の検討であるが、乳癌サブタイプ別に腫瘍細胞におけるPD-L1(B7-H1)発現を抗PD-L1(B7-H1)抗体を用いて免疫染色を行い、予後との関連を検討した。 2.乳癌細胞におけるB7-H3と制御性T細胞それぞれの予後に対する影響を免疫染色を用いて検討した。B7-H3の高発現および制御性T細胞陽性の高比率の乳癌患者では無再発生存率が不良であった(P=0.014およびP=0.039))。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、臨床検体数を増やし、 1)腫瘍におけるPD-L1(B7-H1)発現およびTリンパ球におけるPD-1発現と、予後および臨床病理学的因子(ER,PgR,HER-2,EGFR,p53,ki-67,核異型度、サブタイプ分類)との関連を調べる。 2)乳癌細胞株を用いた検討(in vitro)として、flow cytometryを用いてPD-L1(B7-H1)の発現を検討し、PD-L1(B7-H1)の発現が認められる細胞株を活性化したT細胞を含むPBMCと共培養し、抗PD-1抗体添加によるT細胞の分裂・増殖能を検討する。 3)動物実験 (in vivo)としてHer-2/neuマウス乳癌発生モデルに対し、抗マウスPD-1抗体および抗マウスPD-L1(B7-H1)抗体を投与した場合の抗腫瘍効果およびT細胞の活性化レベル、殺細胞効果を調べる。
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