2012 Fiscal Year Research-status Report
短鎖RNAによるホルモン治療抵抗性乳癌の新たな治療法の開発
Project/Area Number |
24591920
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大江 賢治 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定講師 (30419527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 俊明 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (10176711)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | RNAスプライシング / 乳癌 |
Research Abstract |
本研究は、癌遺伝子産物HMGA1aの配列特異的RNA結合によるエストロゲン受容体(ERα)の選択的スプライシングを利用した、ホルモン抵抗性乳癌の発症機序の解明、治療の開発を目標としている。一昨年まで、培養細胞、in vitro実験より、HMGA1aは、ERα46というERαアイソフォームの選択的スプライシングに関与していることがわかり、スプライシングに必須なU1snRNPが関与している詳細な機序を解明した。また、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の安定発現MCF-7乳癌細胞株をヌードマウスに移植したところ、移植細胞の増殖を促進する結果を得た。 当該年度は、ERα46蛋白を過剰発現させ、ヌードマウスでの乳癌増殖や、ERα陰性化に関与するmiR-18a, miR-22, miR-122/222のシード配列に共通する5'-AGCUPuC-3'というに対するアンチセンスRNAによりERαの陽性化を検討する予定であった。しかし、一昨年の、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植組織を調べたところ、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の発現によりHMGA1aの発現が増加し、それとともに選択的スプライシングによりERα全長mRNAが減少、ERα46 mRNAが増加していた。ERα46蛋白の増加は見られず、むしろ、ERα全長mRNAの減少によるERα全長蛋白の減少を認めた。何らかのフィードバック機構により、ERα陰性化に向かっていると思われるが、miR-22の発現を検証した上で、ERα陰性化を解析するモデルとして提唱したいと考え、論文投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年の、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植組織を調べたところ、予想に反して、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の発現によりHMGA1aの発現が増加し、それとともに選択的スプライシングによりERα46 mRNAが増加していた。ところが、ERα46蛋白の増加は見られず、むしろ、ERα全長mRNAの減少によるERα全長蛋白の減少を認めた。 MCF-7乳癌細胞に発現させた「おとり」RNAの配列 5’-UACCGCUGCUACAAG-3’は、ERα陰性化に関与するmiR-18a, miR-22, miR-122/222のシード配列に共通する 5’-AGCUPuC-3’ の一部 5’-GCUGC-3’と共通配列した配列が存在し、この配列がERα陰性化に向かわせていると考えている。この仮説を追究していくことが、当初の計画より重要と考え、優先順位が変更となった。
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Strategy for Future Research Activity |
HMGA1aの「おとり核移行RNA」の安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植腫瘍は、コントロールに比べ、増大傾向を示したが、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の効果によるERα46 mRNAの減少による効果ではなかった。すなわち、何らかのフィードバック機構により、HMGA1aの発現が増加し、ERα46 mRNAが増加していた。ERα46蛋白の増加は見られず、選択的スプライシングにより、むしろ、ERα全長mRNAの減少によるERα全長蛋白の減少を認めた。この機構を解明することにより、ERα陰性化の原因を特定し、端鎖RNAによる治療を的確なものにできると信じている。 今後の研究の推進方策として、 1. 安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植腫瘍におけるmiR-22の発現を調べる。miR-22は、ERα陰性化に関わるマイクロRNAであり、HMGA1aの発現がmiR-22により制御されているのか、miR-22の発現がHMGA1aにより制御されているのか、解明する。 2. miR-22が、HMGA1aのスプライシング機能を制御するためには、細胞核にも存在することが必要であり、マイクロRNA の核における前駆体であるpri-miRNAなどの二重鎖RNAにHMGA1a結合能があるかどうか、in vitro スプライシングにおいて「おとり」として機能するかどうか、解明したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は、実験用動物を使用予定であったが、次年度は、HMGA1aとmiR-22の関連を研究したいので、消耗品費は実験用動物を除く、薬品類、酵素・キット類、ラジオアイソトープ類、プラスチック用品、ガラス器具に当てたい。また、生化学的実験に必要な機器(電気泳動槽、パワーサプライ等)の購入も考えている。 旅費・印刷費に関しては、生化学的実験に専念するため、研究費すべて消耗品費に当てたい。
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Research Products
(5 results)