2012 Fiscal Year Research-status Report
HDAC・PARP制御を介した合成致死誘導の分子基盤と乳癌治療へのアプローチ
Project/Area Number |
24591923
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 範久 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30368211)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | HDAC inhibitor / ニコチンアミド / 合成致死 / DNA損傷 / breast cancer |
Research Abstract |
DNA二本鎖切断修復(相同組換え修復)機構が破綻している癌細胞への一本鎖切断修復(塩基除去修復)阻害は、重度のゲノム不安定性を惹起し、細胞は死に至る(合成致死)。我々は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤vorinostatの乳癌細胞死誘導におけるDNA二本鎖損傷蓄積の発見に加え、新たにニコチンアミド(NAM)の有する塩基除去修復酵素poly (ADP-ribose) polymerase (PARP)阻害作用に着目し、HDAC・PARP制御を介した合成致死誘導による乳癌の抑制を目的とし本研究を行った。各サブタイプに属する乳癌細胞(luminal type: MCF-7, T47D, KPL-1, basal type: MDA-MB-231, BT549, HCC38)へのvorinostat、NAM、vorinostat+NAM処理後の細胞生存率をMTT法により検討した。その結果、basal typeに属する乳癌細胞(MDA-MB-231、BT549)へのvorinostat・NAM併用により、vorinostat単剤と比較して顕著に細胞死が誘導された。また、vorinostat+NAM処理後の細胞生存率は、正常乳腺上皮細胞と比較し、いずれの乳癌細胞においても顕著に低下した。次に、MDA-MB-231細胞へのvorinostat+NAM処理によるDNA損傷蓄積への影響を、ウェスタンブロットおよび蛍光免疫染色法によるDNA二本鎖切断マーカーγH2AXの発現解析により検討した。その結果、vorinostat単剤処理と比較しvorinostat・NAM併用による顕著なγH2AXの蓄積が検出された。以上より、vorinostat・NAM併用の乳癌細胞死誘導における有効性が確認され、その機序としてDNA損傷の高度の蓄積を起点とすることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度研究計画における「各サブタイプに属する乳癌細胞株のvorinostat・NAMに対する感受性評価とDNA損傷応答の分子メカニズムの検討」に関してほぼ達成しているが、一部(DNA損傷の定量的解析とvorinostat・NAM併用によるのDNA損傷応答シグナル経路の詳細)にやや遅れが生じた。これは、関西医科大学移転に伴う準備および当該研究者の九州大学歯学研究院への異動の影響によるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度研究計画遂行にあたり、まず平成24年度研究計画における一部未実施実験(vorinostat・NAM併用によるDNA損傷の定量的解析及びDNA損傷応答シグナル経路の詳細)につき引き続き検討を行う。vorinostat・NAM併用によるDNA損傷の定量的解析は九州大学農学部細胞制御工学講座(連携研究者:片倉)との協力のもと行う。またDNA損傷応答シグナル経路の詳細な解析に関して、現所属である九州大学大学院歯学研究院分子口腔解剖学分野研究室及び培養室において研究遂行可能である。平成25年度研究計画における、vorinostat・NAM併用による乳癌抑制のin vivo評価系の構築に関する実験は、九州大学大学院歯学研究院動物飼育施設を使用する。いずれも本年度研究計画の遂行に支障はないと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度研究費(1,500千円)使用にあたり、平成24年度研究計画における一部未実施実験ならびに平成25度計画(vorinostat・NAM併用による抗腫瘍効果のin vivo評価系の構築)にかかる研究経費はすべて消耗品費とし,必要とする物品を試薬、ガラス・細胞培養用器具とし、各々1,100千円、50千円の使用を予定している。また、動物実験に使用するヌードマウスを実験動物費とし、予備実験に使用するヌードマウスを含めた20匹分の100千円を使用予定である。国内旅費および外国旅費にかかる経費は学会発表とし、250千円を使用予定とする。 以上、平成25年度研究費(1,500千円)におけるいずれの経費も、分子生物学的解析に用いる試薬類と細胞培養の維持・管理、また動物実験にかかる試薬、動物の維持・管理において必要であり、研究規模および研究体制と鑑みて、本研究計画遂行にあたり必要且つ妥当と考える。
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Research Products
(4 results)