2013 Fiscal Year Research-status Report
乳がんの診断・治療開発のための次世代標的「ホスファトーム」
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24591928
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Research Institution | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
Principal Investigator |
角川 陽一郎 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (60221173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深町 佳世子 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (00626137)
島 礼 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 部長 (10196462)
西野 善一 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん疫学・予防研究部, 部長 (70302099)
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Keywords | 乳がん / HER2 / ホスファターゼ / PP6 / ノックアウトマウス / BRCA1 / SNPs |
Research Abstract |
(1)PTPN18と癌化との関係 我々は、乳がんの発症の原因に、タンパク脱リン酸化酵素の異常とそれによるHER2リン酸化の制御の破綻の可能性を考えた。チロシンホスファターゼの一つPTPN18が、HER2を脱リン酸化する活性を持つことから、PTPN18遺伝子の異常の有無を解析した。その結果、PTPN18の活性ドメイン内のWPD-loopモチーフに隣接してアミノ酸の変異を伴うSNP、PTPN18 (A604G)があることを見いだした。我々の仮説は、「PTPN18(A604G)によるアミノ酸変異 → WPD-loopモチーフを含むタンパクの構造変化 → 脱リン酸化酵素の失活 → HER2異常活性化 → 乳がん発生」である。現在、仮説の検証を行っている。 (2)PP6 の機能解明 乳がんの発生に、BRCA1の変異がその原因となることが知られている。一方でBRCA1のリン酸化制御がその機能に重要であることが知られている。しかし、BRCA1の脱リン酸かによる制御は殆ど解析されていない。我々は、複合体を形成している分子種を探索し、脱リン酸化酵素のPP6(protein phosphatase 6)がBRCA1と共沈することを明らかにした。ヒトの腫瘍化においてもPP6が重要な意義をもつことが示唆され、PP6の機能解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)PTPN18と癌化との関係 昨年に引き続き、PTPN18(A604G)と乳がん罹患率との関係の検討:一般日本人女性および乳がん患者のゲノムDNAに関して、さらに数を増やして解析した。当センター乳がん患者においては、本SNPの頻度が明らかに高いことが示された(P=0.0027)。したがって、PTPN18 (A604G)、が乳がん体質のリスクの1つである可能性があると考える。 (2)PP6 の機能解明 PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)遺伝子のexon4を囲むようにloxp配列を挿入したアレルをヘテロにもつマウスを作製し、さらに、それを掛け合わせてPpp6flox/floxマウスを作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 PTPN18 (A604G)のシグナルへの影響の解明:PTPN18 (A604G)の酵素活性、HERのシグナルへの影響をin vitroと、細胞レベルで解析する。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 Ppp6cflox/floxマウスとCAG-CREマウスを掛け合わせて、Ppp6+/-マウスを作製し、さらにそれを掛け合わせてPpp6欠損マウスを作製し、そのフェノタイプを解析する。 患者の癌組織におけるPpp6c遺伝子、ならびにそれに結合する制御サブユニットの遺伝子の異常の有無を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の動物実験がまだ掛け合わせの段階であるので、当初想定していたより動物のケージ数が少なくてすんだ。 主にヒトゲノムの解析、シグナル伝達の解析のための消耗費、マウスの飼育代に用いる。
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