2012 Fiscal Year Research-status Report
HER受容体と下流シグナル伝達系異常に基づく胃癌の治療効果予測マーカー探索
Project/Area Number |
24591940
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡部 寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10335250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小濱 和貴 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50322649)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | HER2 / 胃癌 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
I.胃癌臨床検体でのタンパク発現の免疫組織学的検討 初年度は胃癌のデータベースの整理とともに、おもにパラフィン埋没の臨床検体を対象に、免疫組織化学染色およびIn situ hybridizationでのHER2発現の解析を進め、約200例を超える省令においてデータ固定を行った。さらに、組織型ムチン発現分類の検討を同じ対象群について進めた。これまでの検討により、HER2発現とムチン発現による形質分類との間には期待した有意な相関はないことが判明した。しかし、その一方で腸型ムチンの1種であるCD10の発現がHER2陽性胃癌に高率にみられることが判明した。このことは、WHO分類でのDifferenciated carcinomaにHER2陽性例が多いという臨床的知見と一致する結果であり、興味深い。さらにp53変異との相関も確認され、HER2陽性胃癌は遺伝子変異やタンパク発現からもほかの群とは異なった独立したサブグループであることが示唆された。 II.胃癌細胞株におけるEGFR, HER2発現の検討 N87, MKN1,MKN45, KATOIII, SNU1の5つの細胞株について、EGFR発現およびHER2発現の検討を行い、N87細胞のHER2高発現、SNU1, MKN1でのEGFR高発現を確認した。 III.胃癌臨床検体でのHER2下流シグナルの検討 パラフィン埋蔵組織を用いたHERファミリー下流の遺伝子変異の同定を目的として予備実験を行った。市販のパラフィンサンプル用のDNA抽出キットではDNAは抽出できるものの夾雑物が多く、シークエンス解析は不能であった。DNA抽出後の処理法とPCR条件の検討を繰り返すことにより、現在は一定量のサンプルがあれば変異解析が行える条件が確定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定したIの計画は予定通りほぼ終了し、確実な臨床データが得られている。ムチン形質分類とHER2発現との間に有意な相関があれば、その分子生物学的機序についてさらに突き詰めた研究を行う予定もあったが、結果は陰性であったため研究計画通りHER2陽性胃癌の下流シグナルの解明を進めていく予定とした。 II., III.については平成25年以降に研究を進める計画であるが、III.については実際の変異解析への条件設定に時間を要することを見越して、すでに1年目から研究の準備に着手しており、ほぼ条件設定を完了することができた。平成25年度は予定通り本解析にとりかかることができると考えている。 II.については予想よりもHER2陽性株、EGFR陽性株が少ないため、まず陽性株をもう少し増やすため、病態の似た食道腺癌株にも対象を広げることとした。細胞株の基礎的なデータは平成25年前半には解析が終了すると見込まれるため、予定通り平成25年後半には実際の変異導入実験へと進むことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
I.ほぼ予定通り終了した。 II.細胞株実験を担当する大学院生に対して、細胞培養の初歩的な指導は終了しているが、今後変異発現ベクターの作成、その細胞導入の手技を獲得後本実験に入る予定である。短期間のあいだ本プロジェクトの進行速度を落とすことにはなるが、同研究室内で現在進行している細胞株を用いた研究に一時的に加わってもらい、効率よく短期に手技を獲得してもらう予定としている。 III.パラフィンサンプルを用いた遺伝子変異解析は、臨床データのそろった多くのサンプルを対象とできる利点があるものの、手技的に安定しにくいため、常に精度のチェックが必要である。同大学内に同様のプロジェクトを行っている研究室が複数あり、必要に応じてコンタクトを取りながら、進めていく予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に、免疫組織化学によるタンパク発現分析、遺伝子変異解析の条件設定のための消耗品費用が予定より少なく済んだが、本年度より変異解析の本分析(約200サンプルを予定)に入るため、次年度は主に研究III.に用いる消耗品費用として、DNA抽出キット、PCR試薬、シークエンス解析費用が大幅に増えるため、昨年度の繰り越し分も使用して可能な限り多数検体の解析を進める予定としている。また、パラフィンサンプルで癌の部分が少ない低分化癌に対してはレーザーマイクロダイセクションを使用する予定である。本設備は学内にあるが、一定の使用料がかかる。また、研究II.を円滑に進めるため追加で5~7種類の細胞株を入手する予定である。また、PTEN遺伝子の欠損の解析方法として、FISH法を採用する予定であり、Hybridization用の試薬の購入費も必要となる。 一定の成果が出つつある場合は、中間報告として学会報告も予定している。
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