2013 Fiscal Year Research-status Report
HER受容体と下流シグナル伝達系異常に基づく胃癌の治療効果予測マーカー探索
Project/Area Number |
24591940
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡部 寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10335250)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小濱 和貴 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (50322649)
|
Keywords | HER2 / 胃癌 / 分子標的治療 / EGFR / PI3K |
Research Abstract |
I.胃癌臨床検体でのタンパク発現の免疫組織学的検討 平成25年度までに約200例に対するHER2受容体およびEGFR受容体の発現をの免疫組織化学染色の手法、およびFISHもしくはDISHを用いて評価し、HER2、およびEGFR強発現例の同定に成功した。 II.胃癌細胞株でのHER2/EGFR標的治療薬の感受性研究 胃癌細胞株8種類、食道腺癌細胞株2種類について、各細胞株の基礎データとして、EGFR発現およびHER2発現の検討、更にPTEN欠失の検討、下流シグナルの遺伝子変異の検討を行った。4つの細胞株でHER2高発現を確認した。EGFRについては、いずれの細胞株でも中等度以上の発現を認めた。いずれの細胞株でもPTEN欠失は見られなかったが、KRAS 変異株を2種類、PI3K変異株を1種類同定した。抗HER2抗体薬(Trastuzumab)に対する感受性試験を行い、HER2高発現の2株で感受性が確認されたが、同じくHER2高発現の他の2株3では感受性がなかった。同様に抗EGFR抗体薬(Cetuximab)に対する感受性試験も行ったが、下流シグナルの変異の有無に関わらず感受性株を認めなかった。 III.胃癌臨床検体でのHER2/EGFR下流シグナル経路の遺伝子変異解析 パラフィン包埋組織切片からDNAを抽出し、PCRで遺伝子変異部位を増幅するための最適な条件を確立した。増幅部位のシークエンス解析により遺伝子変異の検出を行った。約180例の臨床検体で変異解析を行い、約8%に遺伝子変異が見られることを確認した。PTEN欠失の診断は免疫組織化学染色によるタンパク発現の消失の有無で評価し、約180例中約20%でPTEN欠失が見られることを確認した。免疫組織化学染色によるHER受容体発現評価では、約260例中約10%にHER2の高発現を認め、EGFR発現は75例中約30%に発現を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定したI.の計画は平成24年度に予定通り終了し、研究成果を医学専門誌に発表した。平成25年度はII.、III.についての研究に着手した。 II.については、平成25年度に新たに細胞株を購入・入手し、HER2陽性株、EGFR陽性株を確保した。各細胞株の基礎的なデータの解析と薬剤感受性試験による評価は終了し、抗HER2抗体薬に対する感受性および抵抗性株の同にも成功した。抗EGFR抗体薬に対する感受性が明らかな細胞株がなかったが、その耐性機序について現在検討を進めている。今後は、遺伝子変異導入の実験を行い、感受性に対する影響を評価していく予定である。変異導入の技術は同研究室内で確立されており、円滑に実験を進めることができると考えられる。 III.については、平成24年度から条件設定を行い、平成25年度から本解析に着手した。変異解析の最適な条件も確立し、十分な症例数で変異解析をすでに終了している。EGFR発現の評価は症例数が十分でないものの、HER2発現、PTEN欠失の評価も十分な症例数で評価をほぼ終了している。平成26年度は適宜追加でデータ収集を行い、得られたデータを臨床データと照らし合わせて解析を行うことを予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
I. ほぼ予定通り終了した。 II. HER2高発現でも細胞株によって抗HER2抗体薬に対する感受性が違うこと、また抗EGFR抗体薬にはどの細胞株でも感受性が見られないことから、各薬剤の作用機序を更に詳細に検討することで、効果予測のbiomarker検索につながる可能性があると考えられる。また、それと並行して、当初予定していた細胞株への遺伝子導入や遺伝子ノックダウンの実験を進めていく予定としている。実験を担当する大学院生に、同研究室内で確立された手技を早急に獲得してもらい、本実験に入る予定である。 III. 症例を適宜追加してEGFR発現の評価を行い、更にHER2発現の評価に関しては、免疫組織化学染色のみで評価が不十分な検体に対してFISH法を用いた遺伝子増幅の解析を行う予定である。その上で、得られたデータを臨床データと照らし合わせて解析を行うことを予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
若干の端数が生じた為。 次年度予算と合わせて使用の予定である。
|
Research Products
(1 results)